この記事を読んでいる方は、地方公務員の課長職として退職した場合、退職金がどれくらいになるのか知りたいのではないだろうか。
結論からいうと、地方公務員の課長職だけに限定した全国平均の退職金データは、公的統計では確認しにくい。
地方公務員の退職手当は、所属する自治体の条例や退職手当組合の規定によって決まる。課長職であっても、自治体、給料表、級号給、勤続年数、退職理由、調整額区分によって金額が変わるためだ。
本記事では、地方公務員の退職手当の基本、課長職の退職金を試算する方法、退職手当調整額、適正な退職金か確認する手順、退職後の資産運用の相談先を解説する。
自分の退職金を把握するには、平均額を見るだけでなく、所属自治体の条例や人事課の試算を確認することが大切だ。
地方公務員の退職金の基本|自治体の条例で決まる

地方公務員の退職金は、一般に「退職手当」と呼ばれる。
地方自治法では、普通地方公共団体が職員に支給できる手当の一つとして退職手当が位置づけられている。また、退職手当の額や支給方法は、条例で定める必要がある。
そのため、地方公務員の退職金を正確に知るには、国の制度や平均額だけでなく、所属する自治体の「職員の退職手当に関する条例」や退職手当組合の規程を確認する必要がある。
退職手当の計算方法
地方公務員の退職手当は、国家公務員の退職手当制度に準じた考え方で設計されている自治体が多い。ただし、最終的な計算方法は各自治体の条例で確認する必要がある。
基本的な構造は、以下のように整理できる。
退職手当額=基本額+調整額
基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続期間別の支給割合
調整額=在職中の職責・級などに応じた調整月額のうち、高いものから原則60月分を合計した額
ここでいう給料月額は、給与明細に記載される総支給額とは異なる場合がある。国家公務員制度では、俸給月額に地域手当、扶養手当、管理職手当などの諸手当は含まれない。
地方公務員の場合も、退職手当の算定基礎にどの金額を使うかは自治体の条例で確認しよう。
退職金にかかる税金
地方公務員の退職手当を一時金で受け取る場合、原則として「退職所得」として所得税・住民税の対象になる。
ただし、退職所得には勤続年数に応じた退職所得控除があり、給与所得とは異なる計算方法が用意されている。
退職所得の金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続35年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×15年=1,850万円」となる。
ただし、役員等としての勤続年数が5年以下の場合や、短期退職手当等に該当する場合は、2分の1課税の扱いが異なる場合がある。退職金額が大きい場合や複数の退職金を受け取る場合は、税務署や税理士に確認しよう。
支払い時期は自治体の条例・退職手続きで確認する
地方公務員の退職手当の支払い時期は、自治体の条例や退職手当組合の手続きによって異なる。
退職後すぐに支払われるとは限らず、退職手当の計算、税務書類の確認、支給決定、振込手続きなどに時間がかかる場合がある。
退職前に確認すべき項目は以下のとおりだ。
- 退職手当の支給予定日
- 振込先口座の登録方法
- 退職所得の受給に関する申告書の提出期限
- 退職手当の試算書を受け取れるか
- 退職手当組合に加入している場合の手続き
支払い時期を確実に知りたい場合は、所属自治体の人事課、給与担当、退職手当組合に確認しよう。
地方公務員の課長職の退職金はいくら?平均データと試算方法

地方公務員の課長職に限定した平均退職手当額は、公的統計では確認しにくい。
一方で、総務省の地方公務員給与実態調査では、地方公務員全体の退職手当額を団体区分別・職員区分別に確認できる。
令和6年地方公務員給与実態調査では、令和5年度中に退職手当を支給された者の1人当たり平均支給額は、全地方公共団体平均で837万円とされている。
ただし、この837万円は、定年退職者や課長職だけの平均ではない。全職種・全退職事由を含む平均であるため、課長職として定年退職する場合の金額とは大きく異なる可能性がある。
地方公務員全体の退職手当平均額
令和6年地方公務員給与実態調査における、団体区分別の1人当たり平均支給額は以下のとおりだ。
| 団体区分 | 1人当たり平均支給額 |
|---|---|
| 全地方公共団体平均 | 837万円 |
| 都道府県 | 852万7,000円 |
| 指定都市 | 804万2,000円 |
| 市 | 815万5,000円 |
| 町村 | 811万6,000円 |
| 特別区 | 898万8,000円 |
また、職員区分別では、全地方公共団体平均で一般職員817万円、教育公務員783万円、警察官1,388万6,000円とされている。
課長職の退職手当を考える場合は、この平均額をそのまま当てはめるのではなく、所属自治体の給料月額、勤続年数、退職理由、調整額区分をもとに試算する必要がある。
課長職の退職金は「給料月額・支給割合・調整額」で試算する
課長職の退職手当を概算するには、以下の3つを確認する。
- 退職日時点の給料月額
- 勤続期間と退職理由に応じた支給割合
- 課長職としての在職期間に対応する退職手当調整額
国家公務員退職手当支給率早見表では、平成30年1月1日以降の退職について、勤続30年の自己都合退職は34.7355、勤続35年以上の定年退職等は47.709などの支給割合が示されている。
地方公務員の支給割合も国に準じている自治体が多いが、実際の数値は自治体の条例で確認する必要がある。
| 条件例 | 支給割合の例 |
|---|---|
| 勤続30年・自己都合退職 | 34.7355 |
| 勤続35年以上・定年退職等 | 47.709 |
課長職の場合、退職日時点の給料月額が高くなりやすく、退職手当調整額も反映されるため、全地方公共団体平均より高くなるケースもある。
ただし、役職定年、60歳以降の給与水準、早期退職制度、自己都合退職、休職期間などによって金額は変わる。平均額だけで判断せず、必ず所属自治体に試算を依頼しよう。
公務員の退職手当調整額とは

退職手当調整額とは、在職期間中の職責や貢献度を反映するために、基本額に加算される金額だ。
課長職の退職金を考えるうえでは、この調整額が重要になる。課長職として一定期間在職していた場合、一般職員より高い調整月額が適用される可能性があるためだ。
給与調整額と退職手当調整額は別のもの
本文で注意したいのは、「給与調整額」と「退職手当調整額」を混同しないことだ。
給与調整額は、勤務条件や職務の特殊性などに応じて給与に加算されるものを指す。一方、退職手当調整額は、退職手当の計算で在職中の職責を反映するための加算額である。
退職金を試算するときは、自治体の退職手当条例に定められた調整額区分を確認しよう。
退職手当調整額の区分例
国家公務員制度における給与法適用職員の例では、調整月額は以下のように定められている。
| 区分 | 対応する職員の例 | 調整月額 |
|---|---|---|
| 区分5 | 行政職(一)8級相当 | 59,550円 |
| 区分6 | 行政職(一)7級相当 | 54,150円 |
| 区分7 | 行政職(一)6級相当 | 43,350円 |
| 区分8 | 行政職(一)5級相当 | 32,500円 |
| 区分9 | 行政職(一)4級相当 | 27,100円 |
調整額は、基礎在職期間中の各月ごとの調整月額のうち、高いものから60月分を合計する仕組みだ。
ただし、地方公務員の課長職がどの区分に当たるかは自治体によって異なる。課長級が行政職(一)6級相当なのか、7級相当なのか、また別の独自区分なのかを所属自治体の条例で確認しよう。
計算方法と除算期間
退職手当の勤続期間は、単に採用日から退職日までの期間だけで決まるとは限らない。
休職、停職、育児休業、自己啓発等休業、配偶者同行休業などがある場合、その期間の全部または一部が勤続期間から除算されることがある。
国家公務員制度の例では、以下のような期間が除算対象になる場合がある。
- 私傷病による休職期間の2分の1
- 懲戒処分としての停職期間の2分の1
- 育児休業期間の一部
- 職員団体専従休職の期間
- 自己啓発等休業の期間
- 配偶者同行休業の期間
地方公務員の場合も、自治体ごとの条例で除算期間の扱いが定められている。休職や育児休業の期間がある人は、勤続期間の計算にどう反映されるか確認しておこう。
課長職の退職金を試算する例
ここでは、地方公務員の課長職を想定し、退職手当の概算を試算する。
以下は、国家公務員制度に準じた考え方を用いた仮の例であり、実際の地方公務員の退職手当は所属自治体の条例によって異なる。
条件
退職日給料月額:40万円
勤続年数:35年以上
退職理由:定年退職等
支給割合:47.709
調整月額:43,350円
調整額対象月数:60月
基本額
40万円×47.709=1,908万3,600円
調整額
43,350円×60月=260万1,000円
退職手当の概算
1,908万3,600円+260万1,000円=2,168万4,600円
同じ条件で退職日給料月額を45万円と仮定すると、基本額は2,146万9,050円、調整額は260万1,000円となり、退職手当の概算は約2,407万円になる。
ただし、これはあくまで計算の流れを理解するための例だ。課長職でも、自治体、給料表、級号給、退職理由、調整額区分、60歳以降の給与水準、役職定年、早期退職制度の有無によって金額は変わる。
地方公務員の課長職の退職金が適正か確認する方法

退職金が適正かどうかは、2つの視点で確認する必要がある。
1つ目は、所属自治体の条例や規程どおりに計算されているか。2つ目は、退職後の生活設計に対して十分な金額かどうかだ。
所属自治体の退職手当条例を確認する
まず確認すべきなのは、所属自治体の退職手当条例だ。
条例や規程では、以下のような項目を確認する。
- 退職手当の支給対象者
- 退職日給料月額の定義
- 退職理由別・勤続期間別の支給割合
- 調整額区分と調整月額
- 休職・停職・育児休業などの除算期間
- 懲戒免職等による不支給・返納規定
- 支払時期と手続き
条例どおりに計算されているか確認するには、退職手当の試算書や計算根拠を人事課に確認するとよい。
課長職としての在職期間と調整額区分を確認する
課長職の退職金では、課長級としてどの区分に何か月在職していたかが重要になる。
退職手当調整額は、調整月額の高いものから60月分を合計するため、直近5年間にどの職責にあったかが金額に影響しやすい。
たとえば、課長級として5年以上在職していた場合と、退職直前に課長職へ昇進した場合では、調整額に差が出る可能性がある。
自分の退職手当が適正か確認する際は、次の資料を確認しよう。
- 職員の退職手当に関する条例
- 退職手当調整額に関する規則
- 職務の級と標準職務表
- 自分の級・号給が分かる給与明細や人事通知
- 人事課が作成した退職手当試算書
退職後の生活設計に対して十分か確認する
退職手当が条例どおりに支給されていても、老後資金として十分とは限らない。
退職後の生活費、年金収入、住宅ローン、医療費、介護費、配偶者の収入、相続予定などを踏まえて、退職金をどのように使うか考える必要がある。
退職前に、以下のように資金を分けて考えると整理しやすい。
- 退職後1〜2年分の生活費
- 税金・社会保険料・住宅ローン返済などの支払い
- 医療費・介護費・住宅修繕費などの予備資金
- 子どもや家族への支援資金
- 長期運用に回せる余裕資金
退職金は、支給額だけでなく、税引後の手取り額と使い道まで確認しておくことが重要だ。
地方公務員の退職金相談はどこにするべきか

地方公務員の退職金について相談したい場合は、悩みの内容によって相談先を分けることが大切だ。
退職手当の計算や支給時期は自治体の担当部署、税金は税務署や税理士、退職後の資産運用はFPやIFAなど、相談先が異なる。
| 相談したい内容 | 主な相談先 | 確認できること |
|---|---|---|
| 退職手当の金額・計算方法 | 所属自治体の人事課・給与担当・退職手当組合 | 給料月額、支給割合、調整額、試算額 |
| 条例や規程との違い | 人事課、労働組合、弁護士 | 計算根拠、支給対象、不支給・減額理由 |
| 退職金にかかる税金 | 税務署、税理士 | 退職所得控除、源泉徴収、確定申告 |
| 退職後の生活設計 | FP、J-FLEC認定アドバイザーなど | 家計管理、年金、生活費、資金配分 |
| 退職金の運用 | IFA、金融機関、FP | 金融商品の選択肢、リスク、運用方針 |
退職手当の計算そのものは、まず所属自治体に確認するのが基本だ。自分で試算して差がある場合も、人事課や退職手当組合に計算根拠を確認しよう。
IFAが提供するサービス
IFAとは、独立系ファイナンシャル・アドバイザーのことだ。
日本では主に金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやニーズに合わせて、金融商品の選定・運用、各種制度の活用、売買取引の支援などを行う。
地方公務員が退職金の運用を考える場合、IFAに相談することで、退職金だけでなく、公的年金、預貯金、NISA、iDeCo、保険、住宅ローン、相続などを含めた資産全体の配分について相談できる場合がある。
ただし、IFAは税務申告や法律判断を行う専門家ではない。税金は税理士、法律問題は弁護士、社会保険は社会保険労務士など、必要に応じて専門家を使い分けよう。
IFAに相談するメリットと注意点
退職金の運用についてIFAに相談するメリットは、相談者のリスク許容度や退職後の生活設計に合わせて、資産配分や金融商品の選択肢を相談しやすい点だ。
退職後は給与収入が減り、資産を大きく減らさない運用が重要になる。退職金を一度に投資するのではなく、生活費として残す資金、短期で使う資金、長期運用に回す資金を分けて考えることが大切だ。
一方で、金融商品には元本割れのリスクがある。IFAに相談する場合も、提案された商品をその場で契約するのではなく、以下の点を確認しよう。
- 金融商品仲介業者として登録されているか
- 所属金融機関や提携金融機関はどこか
- 取り扱える金融商品の範囲はどこまでか
- 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用はいくらか
- 元本割れリスクや途中解約時の条件を説明してくれるか
- 運用開始後のフォロー体制があるか
退職金は老後生活を支える大切な資金である。複数の相談先を比較し、納得できる説明を受けたうえで判断しよう。
まとめ

本記事では、地方公務員の課長職の退職金について、制度の基本、平均額、試算方法、退職手当調整額、相談先を解説した。
地方公務員の課長職だけに限定した全国平均の退職金データは、公的統計では確認しにくい。総務省の地方公務員給与実態調査では、令和5年度中に退職手当を支給された者の全地方公共団体平均は837万円とされているが、これは課長職や定年退職者だけの平均ではない。
課長職の退職金を把握するには、退職日給料月額、勤続年数、退職理由別の支給割合、退職手当調整額を確認する必要がある。特に、課長級としての在職期間や調整額区分は、退職金額に影響しやすい。
自分の退職金が適正かどうかを確認するには、まず所属自治体の退職手当条例や試算書を確認しよう。税金は税務署や税理士、退職後の生活設計や運用はFPやIFAなど、相談内容に応じて専門家を選ぶことが大切だ。
退職金は老後資金の土台になる。平均額だけで判断せず、自分の自治体の制度、税引後の手取り額、退職後の使い道まで早めに整理しておこう。
出典
e-Gov法令検索「地方自治法」
e-Gov法令検索「地方公務員法」
政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年地方公務員給与実態調査 第9表 1 団体区分別,職員区分別,退職事由別,年齢別退職者数及び退職手当額」(公開日:2025年9月18日)
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

