「地方公務員の退職金はいくらくらいになるのか」「早見表で目安を確認したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
地方公務員の退職金は、正式には退職手当と呼ばれることが多く、各地方公共団体の条例や退職手当制度に基づいて支給されます。
民間企業の退職金は、制度の有無が会社によって異なります。一方、地方公務員の退職手当は自治体ごとの条例で定められており、給料月額、勤続年数、退職理由、調整額などをもとに計算されるのが基本です。
ただし、地方公務員といっても、都道府県職員、市町村職員、教職員、警察官、消防職員、病院職員など職種はさまざまです。勤務する自治体や給与表、退職理由によって実際の退職金額は変わります。
この記事では、地方公務員の退職金の基本情報、早見表を使った計算方法、退職前後に確認したい税金・年金・運用のポイントを整理して解説します。
地方公務員退職金の基本情報|支給額は自治体の条例で決まる
地方公務員の退職金を考えるときは、まず「自分の勤務先の条例・退職手当規程を確認する」ことが重要です。
退職金の金額は、全国一律の固定額ではありません。都道府県、市区町村、一部事務組合、教育委員会、警察、消防など、所属先や職員区分によって計算方法や調整額が異なる場合があります。
そのため、平均額や早見表はあくまで目安として使い、最終的には自分が所属する自治体の退職手当条例や人事・総務担当の試算で確認しましょう。
地方公務員の退職金の仕組み
地方公務員の退職金は、一般に退職手当として地方公共団体の予算から支給されます。
例えば、東京都の「職員の退職手当に関する条例」では、職員の退職手当について必要な事項を定めることを目的とし、支給対象や退職手当の額、調整額などが規定されています。
退職手当は「毎年の人件費予算が増えたから、個人の退職金もそのまま増える」というものではありません。個人の支給額は、原則として条例や規程に定められた計算方法で決まります。
なお、財務省の令和8年度予算政府案資料では、地方公務員の人件費は234.0万人・24.0兆円とされています。令和7年度予算政府案では232.7万人・21.0兆円だったため増加していますが、令和8年度は会計年度任用職員の経費移替えによる影響額も含まれています。
このような人件費全体の動きは地方財政を見るうえでは重要ですが、個人の退職金額を確認するときは、自治体の条例・給与表・退職理由・勤続年数を見ることが最優先です。
地方公務員の退職金に影響する主な要素
地方公務員の退職金額に影響する主な要素は、次の通りです。
- 退職時の給料月額
- 勤続年数
- 退職理由
- 職員区分・給与表・職務の級
- 退職手当の調整額
- 定年前早期退職や定年引上げに関する特例
特に大きいのは、勤続年数と退職理由です。勤続年数が長いほど支給率が高くなりやすく、自己都合退職よりも定年退職・勧奨退職・整理退職などの方が支給率が高くなる場合があります。
また、職種そのものよりも、実際には「どの給与表が適用されているか」「どの職務の級にいるか」「調整額の区分がどうなっているか」が重要です。教職員、警察官、一般行政職などで平均額に差が出るのは、給与体系や職員構成が異なるためです。
退職金の目安を知りたい場合は、まず所属自治体の退職手当条例、給与・定員管理等の公表資料、退職手当の試算書を確認しましょう。
地方公務員の退職金は「退職手当」と「年金払い退職給付」を分けて考える
地方公務員の退職時に関係するお金には、退職手当のほかに、地方公務員共済の「年金払い退職給付」があります。
年金払い退職給付は、共済年金の職域部分廃止後に創設された制度で、退職年金・公務障害年金・公務遺族年金の3種類があります。退職時まで積み立てた給付算定基礎額をもとに、有期年金と終身年金として支給される仕組みです。
一方、この記事で主に扱う「退職金」は、自治体の退職手当条例に基づいて支給される一時金としての退職手当です。年金払い退職給付とは別制度のため、混同しないようにしましょう。
地方公務員退職金の計算方法|早見表は支給率の確認に使う
地方公務員の退職金は、単に年齢だけで決まるものではありません。基本的には、退職時の給料月額に、勤続年数・退職理由に応じた支給率を掛け、さらに調整額を加えて計算します。
自治体によって細かい規定は異なりますが、退職手当の考え方は次のように整理できます。
退職手当額 = 基本額 + 退職手当の調整額
基本額 = 退職時の給料月額 × 退職理由別・勤続年数別の支給率
調整額は、職務の級や在職期間などに応じて加算される部分です。自治体ごとに規定があるため、早見表だけでは正確な退職金額を出せません。
退職金支給率の早見表|勤続年数と退職理由で変わる
退職金の早見表を見るときは、「勤続年数」と「退職理由」の組み合わせを確認します。
下記は、国の退職手当支給率早見表をもとにした代表的な支給率の目安です。多くの自治体でも国に準じた支給率が使われることがありますが、実際の支給率は必ず自分の自治体の条例で確認してください。
| 勤続年数 | 自己都合の支給率 | 定年・応募認定・整理退職等の支給率 |
|---|---|---|
| 20年 | 19.6695 | 24.586875 |
| 25年 | 28.0395 | 33.27075 |
| 30年 | 34.7355 | 40.80375 |
| 35年 | 39.7575 | 47.709 |
| 最高限度 | 47.709 | 47.709 |
同じ勤続年数でも、自己都合退職と定年退職では支給率が異なる場合があります。転職や早期退職を検討している人は、「自己都合退職になるとどのくらい下がるか」を確認しておくことが大切です。
また、定年前早期退職制度を利用する場合は、年齢や勤続年数に応じた加算がある自治体もあります。退職時期を決める前に、人事・総務担当へ試算を依頼できるか確認しましょう。
早見表を使った退職金の計算例
ここでは、計算の流れを理解するために、単純化した例で確認します。
退職時の給料月額が40万円、勤続35年、定年退職、支給率47.709、調整額100万円と仮定すると、退職手当の目安は次のようになります。
基本額:40万円 × 47.709 = 1,908万3,600円
調整額:100万円
退職手当の目安:2,008万3,600円
同じ給料月額・勤続年数でも、自己都合退職で支給率39.7575と仮定すると、基本額は次のようになります。
基本額:40万円 × 39.7575 = 1,590万3,000円
この例からも分かるように、退職理由によって退職金額は大きく変わる可能性があります。
ただし、これは計算の仕組みを理解するための例です。実際には、給料月額、職務の級、調整額、定年引上げに伴う特例、退職手当条例の内容によって金額が変わります。
定年引上げ後は「ピーク時特例」も確認する
公務員は定年年齢の段階的な引上げが進んでおり、60歳以降の給料月額が7割水準になるケースがあります。
この場合、「60歳以降の低くなった給料月額だけで退職金が計算されるのではないか」と不安に感じる人もいるでしょう。
しかし、自治体の退職手当制度では、60歳到達後の給料月額が下がる場合に、給料月額のピーク時を考慮して退職手当を計算する特例が設けられている場合があります。福島県の教職員向け資料でも、満61歳で退職する例として、60歳到達前の給料月額と退職日の給料月額を分けて計算する例が示されています。
定年引上げ後に退職する人は、単に退職時の給料月額だけを見るのではなく、自分にピーク時特例が適用されるかを確認しましょう。
平均額を見るときは「退職理由」と「職員区分」に注意する
地方公務員の退職金平均額を調べるときは、平均の出し方に注意が必要です。
総務省の地方公務員給与実態調査では、団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別の退職者数や退職手当額が公表されています。
しかし、「全退職者の平均」には若年層の自己都合退職や短期勤続者も含まれます。そのため、定年退職を想定している人が見るべきなのは、単純な全体平均ではなく、定年退職や勤続25年以上など、自分の状況に近い区分です。
退職金の目安を確認するときは、次の順番で見ると分かりやすいでしょう。
- 自分の自治体の退職手当条例を確認する
- 自分の職員区分・給与表・職務の級を確認する
- 勤続年数と退職理由に応じた支給率を確認する
- 調整額や定年引上げに伴う特例を確認する
- 必要に応じて人事・総務担当に試算を依頼する
地方公務員の退職金を受け取る前に確認したい税金・年金・運用のポイント
退職金は、金額を把握するだけでなく、受け取った後にどう使うかを考えることも重要です。
退職金を受け取った直後はまとまったお金が入るため、住宅ローン返済、生活費、資産運用、医療・介護費への備えなど、さまざまな使い道を検討することになります。
ここでは、地方公務員が退職金を受け取る前後に確認したいポイントを整理します。
退職金の税金|退職所得控除で税負担が軽くなる場合がある
退職金は、原則として退職所得として所得税・復興特別所得税・住民税の対象になります。
ただし、退職所得には退職所得控除があり、長く勤めた人ほど控除額が大きくなります。退職所得の金額は、原則として次のように計算します。
退職所得の金額 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
例えば、勤続35年の場合、退職所得控除額は次の通りです。
800万円 + 70万円 ×(35年 − 20年)= 1,850万円
仮に退職金が2,000万円であれば、課税対象となる退職所得は次のように計算できます。
(2,000万円 − 1,850万円)× 1/2 = 75万円
一方、勤続年数が短い場合や、地方公務員としての勤続年数が5年以下の退職手当などでは、2分の1課税の扱いが変わることがあります。税額が不安な場合は、退職前に税務署や税理士へ確認しましょう。
退職金と年金の関係|退職手当と年金払い退職給付は別制度
地方公務員の退職後のお金を考えるときは、退職手当と年金を分けて整理することが大切です。
退職手当は、退職時に自治体の条例に基づいて支給される一時金です。一方、公的年金や地方公務員共済の年金払い退職給付は、退職後の年金収入として別に考えます。
年金払い退職給付では、退職時まで積み立てた給付算定基礎額の半分を有期年金、半分を終身年金として支給する仕組みがあります。有期年金は原則20年ですが、10年を選択できる場合や一時金を選べる場合もあります。
つまり、「退職金を一括で受け取るか、年金で受け取るか」という民間企業の企業年金のような単純な比較ではなく、退職手当・公的年金・年金払い退職給付を別々に確認する必要があります。
物価上昇に備えて、退職金を目的別に分ける
退職金を受け取った後は、物価上昇への備えも考えておきたいところです。
総務省統計局の消費者物価指数では、2025年度平均の総合指数は2020年を100として112.3、前年度比2.6%の上昇でした。生鮮食品を除く総合指数も111.7となり、前年度比2.7%上昇しています。
物価が上がると、同じ金額の現金で買えるものが少なくなります。そのため、退職金をすべて普通預金に置くのではなく、使う時期や目的に応じて分けて管理することが大切です。
- すぐ使うお金:退職後1〜2年の生活費、税金、保険料、住宅ローン返済など
- 守るお金:医療費、介護費、住宅修繕費、家族への支援など
- 運用するお金:当面使う予定がなく、値動きのリスクを取れる資金
退職金は老後資金の土台になるため、増やすことだけを優先するのは危険です。生活費として必要な現金を確保したうえで、余裕資金の範囲で運用を検討しましょう。
退職金運用ではリスクと手数料を確認する
退職金を運用する場合、定期預金、個人向け国債、投資信託、NISA、iDeCo、保険商品など、さまざまな選択肢があります。
ただし、どの商品にもメリットと注意点があります。例えば、預貯金は元本が守られやすい一方で、物価上昇に負ける可能性があります。投資信託や株式は長期的な成長を期待できる一方で、元本割れのリスクがあります。
退職金運用で確認したいポイントは次の通りです。
- 元本割れのリスクがあるか
- いつでも換金できるか
- 購入時・保有中・解約時の手数料はいくらか
- 税制優遇制度を使えるか
- 自分の年齢・家計・公的年金見込みに合っているか
「退職金を一気に増やしたい」と考えて高リスク商品に集中投資すると、老後資金を大きく減らす可能性があります。退職金は一度に大きく運用するのではなく、生活費とのバランスを取りながら慎重に判断しましょう。
地方公務員の退職金に関する悩みはどこに相談するべきか
地方公務員の退職金は、制度確認、税金、年金、資産運用など、相談内容によって適切な相談先が異なります。
まずは、勤務先の人事・総務担当に退職手当の制度や試算を確認しましょう。そのうえで、税金や運用など専門的な論点がある場合は、相談先を使い分けることが大切です。
| 相談したい内容 | 主な相談先 | 確認できること |
|---|---|---|
| 退職金の見込み額 | 勤務先の人事・総務担当 | 退職手当条例 支給率 調整額 退職時期ごとの試算 |
| 退職所得の税金 | 税務署、税理士 | 退職所得控除 確定申告 住民税 複数の退職金がある場合の計算 |
| 年金払い退職給付 | 地方公務員共済組合 | 退職年金有 期年金 終身年金 一時金選択の可否 |
| 退職後の家計 | FP、J-FLEC認定アドバイザーなど | 生活費保 険公 的年金老 後資金計画 |
| 退職金の運用 | IFA、金融機関、FPなど | 資産配分 金融商品の選択肢 リスクと手数料 |
退職金の金額そのものは、まず勤務先で確認するのが基本です。外部の専門家は、退職金を受け取った後の使い方、税金、家計、運用方針を考えるときに活用するとよいでしょう。
IFAに相談できること
退職金の運用について相談したい場合、IFAに相談する選択肢があります。
IFAは、一般に独立系ファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれる資産運用の専門家です。金融商品仲介業者として活動するIFAは、証券会社や登録金融機関から委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行います。
退職金のようにまとまった資金を受け取る場面では、次のような内容を相談できます。
- 退職金を生活費・緊急資金・運用資金に分ける方法
- NISAや投資信託などを使った長期運用の考え方
- リスク許容度に合う資産配分
- 退職後の取り崩しペース
- 公的年金や年金払い退職給付を踏まえた資金計画
ただし、IFAに相談すれば必ず中立的な提案が受けられるとは限りません。提携している証券会社、取り扱える商品、手数料体系、相談料の有無は事業者によって異なります。
相談前には、金融商品仲介業者として登録されているか、どの金融機関と提携しているか、販売手数料や信託報酬などのコストがどう発生するかを確認しましょう。
退職金相談で確認したいポイント
退職金に関する相談では、「いくら増やせるか」だけでなく、「老後生活に必要なお金を守れるか」を重視しましょう。
相談前に次の情報を整理しておくと、より具体的なアドバイスを受けやすくなります。
- 退職金の見込み額
- 退職予定時期
- 公的年金・年金払い退職給付の見込み額
- 住宅ローンや借入金の残高
- 退職後の毎月の生活費
- 預貯金・保険・投資商品の状況
- 医療費・介護費・家族支援など将来の支出予定
退職金は人生で何度も受け取るものではありません。納得できないまま商品を選ぶのではなく、制度・税金・家計・運用の全体像を確認したうえで判断しましょう。
地方公務員の退職金は条例・支給率・税金を確認してから活用する
地方公務員の退職金は、各自治体の条例や退職手当規程に基づいて支給されます。
金額は、退職時の給料月額、勤続年数、退職理由、職員区分、調整額などによって変わります。平均額や早見表は便利ですが、最終的には自分が所属する自治体の制度で確認する必要があります。
計算の基本は「退職時の給料月額×支給率+調整額」です。ただし、定年引上げに伴う給料月額の変化やピーク時特例、定年前早期退職の加算などが関係する場合があります。
また、退職金は受け取って終わりではありません。退職所得控除による税金、年金払い退職給付、公的年金、退職後の生活費、物価上昇への備えまで含めて考えることが大切です。
退職金の見込み額は勤務先の人事・総務担当へ確認し、税金は税務署や税理士、年金は共済組合、運用はFPやIFAなど、相談内容に応じて専門家を使い分けましょう。
退職金の運用や相談先を比較したい場合は、以下のボタンから確認できます。
出典
東京都「職員の退職手当に関する条例」
厚生労働省「モデル就業規則」
財務省主計局「令和8年度 公務員人件費」
財務省主計局「令和8年度 人件費関係予算のポイント(概要)」
e-Stat「令和5年 地方公務員給与の実態 第15表 団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額」(公開日:2025年1月27日)
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表」
福島県「退職手当」
地方公務員共済組合連合会「年金払い退職給付」
地方公務員共済組合連合会「退職年金」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年3月分及び2025年度平均」(公開日:2026年4月24日)
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」
金融経済教育推進機構 J-FLEC「専門家に相談したい」

