地方公務員の退職金は、長く勤めて定年退職する場合、2,000万円台がひとつの目安になります。
総務省の「令和6年地方公務員給与実態調査」では、25年以上勤続後の定年退職等における退職手当の平均額は、全職員で約2,263万円、一般職員で約2,227万円、教育公務員で約2,274万円です。
ただし、実際の退職金は自治体・職種・勤続年数・退職理由・退職時の給料月額によって変わります。平均額だけで判断すると、想定より多い・少ないと感じることがあるため注意が必要です。
この記事では、地方公務員の退職金制度、計算方法、支給時期、税金、退職金の活用方法をまとめて解説します。退職前後に確認すべきポイントを整理したい方は、ぜひ参考にしてください。
地方公務員の退職金制度|定年退職は2,000万円台が目安
地方公務員の退職金は、一般的に「退職手当」と呼ばれます。
退職手当は、地方自治法や地方公務員法の考え方を踏まえ、各自治体の条例・規則に基づいて支給されます。国の退職手当制度を参考にしている自治体もありますが、支給率や調整額、細かな条件は自治体ごとに異なる点に注意しましょう。
そのため、自分の退職金を正確に知りたい場合は、勤務先の自治体が公表している退職手当条例や、職員向けの退職手当試算資料を確認することが重要です。
退職金の計算方法|基本額+調整額で決まる
地方公務員の退職金は、主に以下の計算式で考えます。
退職手当額 = 基本額 + 調整額
基本額 = 退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率
調整額 = 職責や在職期間などに応じて加算される額
退職金に大きく影響するのは、退職時の給料月額、勤続年数、退職理由です。定年退職・応募認定退職・自己都合退職など、退職理由によって支給率が変わります。
平均額の目安は以下の通りです。あくまで公的調査に基づく平均であり、個別の支給額を保証するものではありません。
| 区分 | 退職手当の目安 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 25年以上勤続後の定年退職等 全職員 | 約2,263万円 | 職種全体の平均 |
| 25年以上勤続後の定年退職等 一般職員 | 約2,227万円 | 一般行政職などを含む平均 |
| 25年以上勤続後の定年退職等 教育公務員 | 約2,274万円 | 教員などを含む平均 |
自己都合退職の場合は、定年退職より支給率が低くなるのが一般的です。特に勤続年数が短い場合は、平均額との差が大きくなりやすいため、退職前に自治体の試算制度や人事担当窓口で確認しておきましょう。
退職金支給のタイミング|退職日から1か月以内が目安
公務員の退職金は、退職後すぐに受け取れるとは限りません。多くの場合、退職日から1か月以内を目安に支給されます。
たとえば3月31日に退職した場合、4月中に支給されるケースが多いでしょう。ただし、条例や事務処理、退職理由の確認状況によって支給時期が変わることがあります。
退職直後に住宅ローン返済や引っ越し、医療費、生活費などの大きな支出を予定している方は、支給予定日を事前に確認しておくと安心です。
退職金が増減する主な要因
地方公務員の退職金は、次のような要因で増減します。
- 勤続年数が長い
- 退職時の給料月額が高い
- 職責や在職期間に応じた調整額が加算される
- 自己都合退職などで支給率が低くなる
- 退職時の給料月額が下がる
- 懲戒処分などにより退職手当が制限される
具体的な増減幅は自治体の条例や個別事情によって異なります。退職時期を迷っている場合は、退職予定日ごとの試算額を確認してから判断しましょう。
地方公務員の退職金にかかる所得税・住民税と控除
地方公務員の退職金には税金がかかります。ただし、退職金は長年の勤務に対する一時金という性質があるため、退職所得控除や2分の1課税など、給与所得とは異なる税制上の配慮があります。
そのため、退職金の全額にそのまま所得税がかかるわけではありません。手取り額を把握するには、退職所得控除を差し引いた後の課税退職所得金額を確認する必要があります。
退職所得の税率|課税退職所得金額で判定
退職金にかかる所得税は、退職金そのものの金額ではなく、退職所得控除を差し引いた後の「課税退職所得金額」によって決まります。
所得税の速算表は以下の通りです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
このほか、復興特別所得税や住民税も考慮する必要があります。住民税は、退職所得に対して市町村民税6%・道府県民税4%の合計10%がかかるのが一般的です。
退職所得控除の計算方法
退職所得控除は、勤続年数によって計算方法が変わります。
課税退職所得金額 =(退職手当額 − 退職所得控除額)× 1/2
※1,000円未満は切り捨て
勤続年数が20年以下の場合:
40万円 × 勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
勤続年数が20年超の場合:
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて計算します。また、障害者となったことに直接基因して退職した場合など、控除額が加算されるケースもあります。
退職金の手取り額をシミュレーション
退職金の手取り額を考えるときは、まず退職所得控除を計算し、その後に課税退職所得金額を求めます。
ここでは、退職金2,300万円・勤続35年のケースで概算してみます。
1.退職金の額を確認する
例:退職金 2,300万円
2.退職所得控除を計算する
800万円 + 70万円 ×(35年 − 20年)= 1,850万円
3.課税退職所得金額を求める
(2,300万円 − 1,850万円)× 1/2 = 225万円
4.所得税・復興特別所得税を概算する
225万円 × 10% − 97,500円 = 127,500円
復興特別所得税を含めると 約13万円
5.住民税を概算する
225万円 × 10% = 22万5,000円
✅ 概算の手取り額
2,300万円 − 約35万5,000円 = 約2,264万円
実際の税額は、退職所得の受給に関する申告書の提出状況、過去に受け取った退職手当、iDeCo一時金との関係などによって変わる場合があります。正確な手取り額は、勤務先や税理士に確認しましょう。
退職金の税負担を抑えるために確認したい制度
退職金の税金対策では、「何に投資するか」よりも、まず制度を正しく理解することが大切です。
- 退職所得の受給に関する申告書を提出する
勤務先に提出しておくと、退職所得控除を反映した税額で源泉徴収されます。提出していない場合、税額が多く差し引かれる可能性があります。 - iDeCoの受け取り時期を確認する
iDeCoは掛金が全額所得控除となる制度ですが、一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象になります。退職金と受け取り時期が近い場合は、控除の扱いを確認しておきましょう。 - NISAは「運用益非課税」の制度として活用する
NISAは掛金が所得控除になる制度ではありません。一方で、投資で得た利益が非課税になるため、退職金の一部を長期運用する場合の選択肢になります。
退職金を活用する賢い方法
退職金は、退職後の生活を支える大切な資金です。まとまった金額を受け取ると、投資・住宅ローン返済・旅行・リフォームなど、さまざまな使い道を考えたくなるかもしれません。
しかし、退職金を一度に使いすぎると、医療費や介護費、住宅修繕費など将来の支出に対応しにくくなります。まずは「使うお金」「守るお金」「運用するお金」に分けて考えましょう。
まずは使うお金・守るお金・運用するお金に分ける
退職金を受け取ったら、すぐに投資や繰上返済を決めるのではなく、次の3つに分けると判断しやすくなります。
- 使うお金
退職直後の生活費、引っ越し、旅行、リフォーム、車の買い替えなど、数年以内に使う予定のある資金 - 守るお金
病気、介護、家族の支援、住宅修繕など、急な支出に備える資金 - 運用するお金
当面使う予定がなく、長期で資産寿命を延ばすために活用できる資金
特に退職直後は、年金の受給開始時期や再雇用収入が安定するまでの資金繰りを確認することが大切です。
退職金を使った投資戦略|一括投資より分散を意識
退職金の一部を運用する場合は、長期・分散を意識しましょう。株式や投資信託などは預貯金より高いリターンを期待できる一方、元本割れのリスクもあります。
退職金を一括で投資すると、投資直後の相場下落によって大きな不安を感じる可能性があります。投資経験が少ない方は、NISAのつみたて投資枠などを使い、時間を分けて少額ずつ投資する方法も検討しやすいでしょう。
大切なのは、「増やしたい」という気持ちだけで金融商品を選ばないことです。生活費や医療・介護費に使う予定の資金までリスク資産に回さないようにしましょう。
退職金を使った住宅ローン返済|利息軽減と手元資金を比較
退職金で住宅ローンを繰上返済するのも選択肢のひとつです。繰上返済を行うと、総返済額を減らしたり、完済時期を早めたりできます。
- 毎月の返済負担を軽くできる
- 支払利息を減らせる可能性がある
- 完済により心理的な安心感を得やすい
- 手元の老後資金が大きく減る
- 完済すると団体信用生命保険の保障も終了する
- 住宅ローン控除を利用中の場合、控除額に影響することがある
低金利の住宅ローンを利用している場合、無理に全額返済するよりも、手元資金を残した方が安心なケースもあります。繰上返済を検討する際は、ローン残高、金利、団信、住宅ローン控除、今後の生活費をまとめて比較しましょう。
退職金を使ったライフプランニング|一律の老後資金額で判断しない
「老後2,000万円問題」という言葉を目にすることがありますが、すべての人に一律で2,000万円が必要という意味ではありません。
必要な老後資金は、年金額、退職後の収入、住居費、医療費、介護費、家族構成、生活水準によって変わります。持ち家か賃貸か、配偶者の年金があるか、子どもへの支援が必要かによっても必要額は大きく異なります。
退職金をどう使うか迷ったときは、まず退職後10年分の収支をざっくり書き出してみましょう。年金が始まるまでの期間、毎月の不足額、大きな支出予定を見える化すると、投資や繰上返済に回せる金額が判断しやすくなります。
IFAと一緒に地方公務員の退職金を有効活用
IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、日本語では独立系ファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれます。
IFAは、金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやリスク許容度に応じた金融商品の提案や売買取引の支援を行います。退職金の運用に不安がある方にとって、相談先のひとつになります。
ただし、IFAに相談すれば必ず最適な運用ができるわけではありません。相談先によって提携金融機関、取扱商品、手数料、提案方針が異なるため、事前の確認が大切です。
IFAが提供する専門的なアドバイス
IFAに相談できる内容は、相談先によって異なります。一般的には、以下のようなテーマについてアドバイスを受けられます。
- 退職後の資金計画
年金開始までの資金繰り、生活費、医療・介護費、取り崩し計画 - NISA・iDeCoの活用
非課税制度や年金制度を踏まえた運用方針の整理 - 投資信託・ETF
分散投資を前提にした商品選びや資産配分の見直し - 株式・債券・REIT
リスク許容度に応じた組み合わせの検討 - ポートフォリオ管理
運用後のリバランス、資産配分の定期的な確認 - 保険・相続の確認
必要に応じて保険や相続対策の専門家と連携
退職金は一度に大きな金額を受け取るため、金融商品を選ぶ前に、生活資金として残す金額を決めることが重要です。IFAに相談する場合も、まずは家計やライフプランの整理から始めるとよいでしょう。
IFAに相談する前に確認したいこと
IFAを利用する際は、以下の点を確認しておくと、相談後のミスマッチを防ぎやすくなります。
- 金融商品仲介業者として登録されているか
相談先の登録状況や所属する金融商品仲介業者を確認しましょう。 - どの金融機関と提携しているか
提携先によって、提案できる商品や手数料体系が変わります。 - 手数料や報酬の仕組み
相談料、販売手数料、信託報酬、継続的な管理費用などを事前に確認しましょう。 - リスク説明が十分か
メリットだけでなく、元本割れや価格変動リスクについて丁寧に説明してくれるかを見極めましょう。
IFAを利用するメリット
IFAを利用するメリットは、退職金の使い道を運用商品だけで考えるのではなく、ライフプラン全体から整理しやすい点です。
退職後の収入、年金、住宅ローン、医療・介護費、相続などを踏まえると、退職金の最適な使い方は人によって異なります。自分だけで判断が難しい場合は、第三者に相談することで選択肢を整理しやすくなります。
一方で、提案内容をそのまま受け入れるのではなく、手数料やリスクを理解したうえで判断することが大切です。退職金は老後生活の土台となる資金だからこそ、焦らず比較検討しましょう。
まとめ
地方公務員の退職金は、25年以上勤続後の定年退職等であれば2,000万円台が目安になります。ただし、実際の支給額は自治体、職種、勤続年数、退職理由、退職時の給料月額によって異なります。
また、退職金には所得税・復興特別所得税・住民税がかかりますが、退職所得控除や2分の1課税により、給与所得より税負担が抑えられる仕組みになっています。
退職金を受け取った後は、すぐに投資や住宅ローン返済を決めるのではなく、生活費、緊急資金、運用資金に分けて考えることが大切です。
自分に合った退職金の使い方がわからない場合は、IFAなどの専門家に相談するのも選択肢のひとつです。ただし、相談先の登録状況、手数料、提携金融機関、リスク説明を確認したうえで判断しましょう。
必要に応じて、以下ボタンから相談先を確認してみましょう。
出典
政府統計の総合窓口 e-Stat「地方公務員給与実態調査(補充調査) 令和6年地方公務員給与実態調査結果」(公開日:2025年9月18日)
e-Gov法令検索「地方自治法」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
国税庁「No.2260 所得税の税率」
横浜市「退職所得の課税の特例」(公開日:2026年5月1日)
金融庁「NISAを知る」
厚生労働省「iDeCoの概要」
金融庁「資産形成の基本」
住宅金融支援機構「繰上返済(個人住宅融資の場合)」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書の公表について」(公開日:2019年6月3日)

