教員退職金の手取り額はいくら?税金・計算方法・生活設計のポイントを解説

教員として働いている方のなかには、「退職金はいくらもらえるのか」「税金を差し引いた手取り額はどのくらいになるのか」と気になっている方もいるでしょう。

教員の退職金は、公立か私立か、勤続年数、退職理由、退職時の給料月額、管理職経験などによって変わります。

特に公立教員の場合、退職手当の額面は自治体の条例に基づいて計算されます。そこから所得税・復興特別所得税・住民税などを差し引いた金額が、実際に受け取る手取り額です。

本記事では、教員退職金の手取り額を考えるための計算方法、税金・社会保険料の扱い、退職後の生活設計、教員キャリアと退職金の関係、相談先の選び方を解説します。

退職後の生活を安心して迎えるために、退職金の額面だけでなく、手取り額と使い道まで確認しておきましょう。

目次

教員退職金の手取り額を正確に把握する

教員退職金の手取り額を知るには、まず退職手当の額面を確認し、その後に税金や控除される金額を差し引いて考える必要があります。

公立教員と私立教員では退職金の仕組みが異なります。公立教員は自治体の退職手当条例に基づいて計算され、私立教員は勤務先の学校法人の就業規則や退職金規程に基づいて計算されます。

公立教員の退職手当の計算方法

公立教員の退職手当は、多くの自治体で次の考え方に基づいて計算されます。

退職手当額=基本額+調整額

基本額は、退職日時点の給料月額に、退職理由別・勤続年数別の支給率を掛けて計算します。調整額は、職務の級や管理職経験などに応じて加算される部分です。

退職手当を計算するときに確認したい項目は、以下のとおりです。

退職手当計算で確認したい項目
  • 退職手当額:基本額+調整額
  • 基本額:退職日給料月額×支給率
  • 支給率:退職理由と勤続年数で変わる
  • 調整額:職務の級や管理職経験などで変わる

例えば、退職日給料月額50万円、支給率40.8、調整月額5万円、調整額の対象期間60か月と仮定すると、退職手当額は次のように試算できます。

基本額:50万円×40.8=2,040万円
調整額:5万円×60か月=300万円
退職手当額:2,040万円+300万円=2,340万円

ただし、これはあくまで計算例です。実際の退職日給料月額、支給率、調整額は自治体によって異なります。正確な見込額は、勤務先の教育委員会や人事担当部署に確認しましょう。

また、調整額は退職理由や勤続年数によって支給されない、または減額される場合があります。例えば、勤続9年以下の自己都合退職者には調整額が支給されないとする制度例があります。

休職期間や育児休業期間、再任用期間などの扱いも自治体によって異なります。退職を検討している場合は、退職時期を決める前に、退職手当の在職期間の計算方法を確認しておきましょう。

手取り額に影響する要素を把握する

退職手当の額面が分かっても、その全額が手元に入るわけではありません。

手取り額に影響する主な要素は、次のとおりです。

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項目手取り額への影響
所得税・復興特別所得税退職所得の金額に応じて源泉徴収される
住民税退職所得に対して原則10%で計算される
給与所得に係る未徴収住民税1月〜5月に退職する場合、残額が退職手当から一括徴収されることがある
共済組合・互助会の貸付金未償還金がある場合、退職手当から控除されることがある
退職所得の受給に関する申告書提出していない場合、20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算が必要になる

退職金の手取り額を知りたい場合は、退職手当の額面だけでなく、税金、住民税の残額、共済組合貸付金、互助会貸付金などの控除予定も確認しておくことが大切です。

税金を差し引いた手取り額の計算例

退職金を一時金で受け取る場合、原則として退職所得として税金が計算されます。

退職所得の金額は、原則として以下の式で計算します。

退職所得=(退職手当の収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算します。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続35年、退職手当2,295万円を一時金で受け取る場合を考えます。

退職所得控除額は、次のとおりです。

800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円

退職所得は、次のように計算します。

(2,295万円-1,850万円)×1/2=222.5万円

この場合、所得税および復興特別所得税は約12.8万円、住民税は約22.3万円となり、税額の合計は約35.0万円です。手取り額はおおよそ2,260万円となります。

ただし、これは一般的な退職手当として受け取る場合の概算です。退職時期、勤続年数の端数、過去に退職金を受け取ったことがある場合、同じ年に複数の退職金を受け取る場合などは、計算が変わることがあります。

正確な税額を知りたい場合は、勤務先から交付される試算や源泉徴収票を確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談しましょう。

社会保険料の影響を知る

退職時に支払われる通常の退職一時金は、原則として健康保険・厚生年金保険の報酬や賞与には該当しません。そのため、通常の退職手当から社会保険料が控除されるわけではありません。

一方、在職中に退職金相当額を給与や賞与に上乗せして前払いする制度では、報酬または賞与に該当する場合があります。

また、退職後は共済組合の任意継続、国民健康保険、家族の扶養など、健康保険の選択が必要になります。退職金そのものに社会保険料がかからなくても、退職後の保険料や住民税の支払い予定は別途確認しておきましょう。

退職後の生活設計を立てるために知っておくべきこと

退職金の手取り額を把握したら、次に考えるべきことは使い道です。

退職金はまとまった金額になる一方、一度大きく使ってしまうと取り戻すのが難しい資金です。退職後の生活費、医療費、住宅修繕、家族への支援、資産運用などを分けて考えましょう。

教員退職金の使い道を計画する

令和6年地方公務員給与実態調査では、教育公務員が25年以上勤続後に定年退職等をした場合の平均退職手当額は、全地方公共団体で約2,295万円です。

ただし、これはあくまで平均額であり、個人の受取額を示すものではありません。自治体、校種、職務の級、管理職経験、勤続年数、退職理由によって金額は変わります。

退職金の使い道は、次のように分けると整理しやすくなります。

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分類主な使い道考え方
生活資金退職後の生活費、税金、社会保険料すぐ使える預金で確保する
予備資金医療費、介護費、住宅修繕、家電買い替え急な支出に備え、投資に回しすぎない
目的資金住宅ローン返済、子ども・孫への支援、旅行使う時期が近いお金はリスクを抑える
運用資金NISA、投資信託、債券など余裕資金で長期・分散を検討する

退職後の生活設計では、退職金だけでなく、公的年金、再任用・非常勤勤務の収入、預貯金、保険、住宅ローンの残高まで含めて確認しましょう。

退職金を活用した資産運用のポイント

退職金の一部を資産運用に回すことは、老後資金の寿命を延ばす選択肢の一つです。

ただし、退職金は老後生活を支える大切なお金です。投資に回す場合も、生活費や予備資金を確保したうえで、余裕資金の範囲で行いましょう。

運用を検討する際は、次の点を確認しておくことが大切です。

  • 退職後の毎月の生活費
  • 公的年金の受給見込額
  • 再任用や非常勤勤務の収入見込み
  • 医療費・介護費への備え
  • 住宅ローンや借入金の残高
  • 投資でどの程度の損失まで受け入れられるか

退職金を受け取った直後に、全額を一括で投資するのは避けましょう。相場が下落したときに生活費が不足する可能性があります。

投資信託や債券などを使って運用する場合も、商品のリスク、手数料、換金性、税金を確認し、自分の生活設計に合う範囲で行うことが大切です。

退職後の生活費や医療費を見積もる

退職後は、生活費だけでなく医療費や介護費、住宅修繕費なども見込んでおく必要があります。

教員の場合、退職後も互助会や共済関連の制度を利用できる場合があります。ただし、制度の内容、掛金、医療費補助、給付条件は自治体や勤務先によって異なります。

互助会や共済の保障があるからといって、民間保険が不要になるとは限りません。退職後の健康保険、医療保障、介護への備えをまとめて確認しましょう。

退職前には、次の支出を一覧にしておくと生活設計を立てやすくなります。

  • 毎月の生活費
  • 固定資産税や住民税
  • 健康保険料・介護保険料
  • 医療費・介護費
  • 住宅ローン・リフォーム費用
  • 家族への支援
  • 趣味・旅行・地域活動の費用

教員キャリアと退職金の関係を理解する

教員の退職金は、勤続年数や退職理由だけでなく、職務の級や管理職経験によっても変わる場合があります。

ここでは、教員キャリアと退職金の関係を確認しましょう。

キャリアアップによる退職金への影響を知る

公立教員の退職手当は、退職日給料月額や調整額が関係します。そのため、昇任や管理職経験によって、退職手当の見込額が変わる場合があります。

例えば、教頭や校長などの管理職を経験すると、退職時の給料月額や調整額に影響することがあります。

ただし、キャリアアップすれば必ず大幅に退職金が増えるとまではいえません。自治体の給料表、職務の級、調整額、退職時期によって計算結果は変わります。

退職手当を正確に知りたい場合は、現在の職務の級、号給、管理職経験、退職予定日をもとに、人事担当部署へ試算を依頼しましょう。

異動・出向・転籍が与える影響を把握する

教員の異動や転勤は、同じ自治体内で行われる場合が多く、その場合は退職金の計算上、通常は在職期間が継続します。

一方、自治体をまたぐ異動、退職派遣、転籍、私立学校への転職などでは、退職手当の在職期間や退職金制度の扱いが変わる可能性があります。

特に、転籍出向や雇用主が変わるケースでは、元の勤務先との雇用関係が終了する場合があります。この場合、退職手当の支給時期や在職期間の通算可否を確認する必要があります。

退職金に影響しやすい異動・転職を検討している場合は、辞令や雇用契約の扱い、退職手当条例、退職金規程を事前に確認しましょう。

退職時期の選択が退職金に与える影響

退職時期も退職金に影響します。

自己都合退職と定年退職では、支給率が異なる場合があります。また、勤続年数が1年増えることで退職所得控除額や支給率が変わることもあります。

さらに、退職時期によっては、給与所得に係る住民税の未徴収分が退職手当から一括徴収される場合があります。

退職日を決める前に、次の点を確認しましょう。

  • 自己都合退職と定年退職の支給率の違い
  • 勤続年数の端数処理
  • 調整額が支給される条件
  • 退職所得控除額に影響する勤続年数
  • 1月〜5月退職時の住民税一括徴収
  • 共済組合や互助会の貸付金残高

退職時期を数か月ずらすだけで、手取り額や控除額に影響する場合があります。退職前に試算しておくことが大切です。

教員退職金の運用はどこに相談すればいいのか

教員退職金について相談する場合は、相談内容によって相談先を分けることが重要です。

退職手当の見込額、税金、退職後の生活設計、資産運用は、それぞれ確認すべき窓口が異なります。

相談内容主な相談先
公立教員の退職手当見込額教育委員会、人事担当部署、退職手当担当
私立教員の退職金制度勤務先の学校法人、人事担当、退職金規程
退職金にかかる税金税務署、税理士
年金見込額ねんきんネット、年金事務所
生活設計・家計管理ファイナンシャルプランナー、J-FLECなど
資産運用IFA、証券会社、銀行、FPなど

退職手当の見込額を確定できるのは、基本的に勤務先や教育委員会などの担当部署です。資産運用の専門家に相談しても、退職手当額を確定できるわけではありません。

IFAが提供する教員退職金に関するアドバイス

退職金の活用や資産運用について相談する相手として、IFAがあります。

IFAは、一般に独立系ファイナンシャルアドバイザーを指す言葉として使われます。金融商品仲介業者として活動するIFAは、証券会社などの金融商品取引業者や登録金融機関の委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行います。

IFAに相談する場合、次のような内容が考えられます。

  • 退職金のうち運用に回せる金額の整理
  • 生活費・予備資金・運用資金の分け方
  • NISAやiDeCoの活用方法
  • 預金・債券・投資信託などの資産配分
  • 運用開始後の定期的な見直し

ただし、IFAは完全にどの金融機関とも関係がない立場ではありません。相談前には、提携金融機関、取扱商品、相談料、販売手数料、登録状況を確認しましょう。

資産運用や税金対策でのIFAの役割

IFAは、退職金の資産運用やポートフォリオの考え方について相談できる相手です。

一方で、個別具体的な税務判断や申告書の作成は、税理士の専門領域です。退職所得控除、複数の退職金、iDeCoや企業年金の受け取り時期など、税金の判断が必要な場合は、税務署や税理士へ確認しましょう。

退職金運用では、提案された商品をそのまま契約するのではなく、元本割れリスク、手数料、換金性、運用期間、税金への影響を確認することが大切です。

相談前に用意しておきたい資料

相談前には、次の資料を準備しておくと話が進めやすくなります。

  • 退職手当の試算額
  • 退職予定日
  • ねんきん定期便・年金見込額
  • 毎月の生活費
  • 住宅ローンや借入金の残高
  • 預金・投資信託・保険などの保有資産
  • 退職後に予定している支出

登録状況は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」などで確認できます。相談先の肩書きだけで判断せず、費用やリスク説明まで確認しましょう。

まとめ

本記事では、教員退職金の手取り額、退職手当の計算方法、税金や社会保険料の扱い、退職後の生活設計、教員キャリアと退職金の関係について解説しました。

公立教員の退職手当は、自治体の退職手当条例に基づき、退職日給料月額、支給率、調整額などをもとに計算されます。令和6年地方公務員給与実態調査では、教育公務員が25年以上勤続後に定年退職等をした場合の平均退職手当額は約2,295万円です。

ただし、実際の手取り額は、所得税・復興特別所得税・住民税、未徴収住民税、共済組合や互助会の貸付金残高などによって変わります。

退職金を一時金で受け取る場合は、退職所得控除や2分の1課税により税負担が軽くなる仕組みがあります。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算が必要です。

退職後は、生活資金、予備資金、目的資金、運用資金に分けて退職金を管理しましょう。資産運用を行う場合も、必要資金まで投資に回さず、リスクと手数料を確認することが大切です。

退職手当の見込額は勤務先や教育委員会、税金は税務署や税理士、運用や生活設計はIFAやファイナンシャルプランナーなど、相談内容に応じて相談先を使い分けましょう。

出典

e-Stat「令和6年地方公務員給与実態調査 第9表 2 団体区分別,職員区分別,退職事由別,年齢別退職者数及び退職手当額(定年退職―再掲)」(公開日:2025年9月18日)
人事院「国家公務員の退職手当制度の概要」
総務省「退職手当の調整額について」
公立学校共済組合山口支部「退職手当」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(更新日:2025年4月1日)
厚生労働省「いわゆる退職金の前払いに係る社会保険料の取扱いについて」(公開日:2003年10月1日)
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「専門家に相談したい」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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