退職を控えている方のなかには、「退職金はいつ支払われるのか」「退職後すぐに受け取れるのか」と不安を感じている方も多いのではないだろうか。
結論から言えば、民間企業の退職金は、会社の就業規則や退職金規程で定められた支払時期に支払われるのが基本だ。
退職金制度は法律上すべての会社に義務づけられているものではない。ただし、会社に退職金制度がある場合は、支給対象者、支給要件、計算方法、支払方法、支払時期などが就業規則や退職金規程に記載されている。
この記事では、退職金の支払時期の基本ルール、退職金の計算方法、受け取り方法、退職金が支払われない場合の対応を解説する。
退職金の支払時期の基本ルール|まず退職金規程を確認する

退職金の支払時期を知るには、まず勤務先の退職金規程を確認することが重要だ。
会社が退職金制度を設けている場合、退職金の支払時期や支払方法は会社ごとに定められている。退職後すぐに支払われる会社もあれば、退職月の翌月や数か月後に支払う会社もある。
確認すべき主な項目は以下のとおりだ。
- 退職金制度の有無
- 退職金の支給対象者
- 支給される退職理由と支給されない退職理由
- 退職金の計算方法
- 退職金の支払方法
- 退職金の支払時期
- 退職金を受け取るために必要な書類
「退職金はいつ振り込まれるのか」を知りたい場合は、退職金規程のうち「支払方法及び支払時期」「支給時期」などの項目を確認しよう。
民間企業の退職金は会社の規程で定めた時期に支払われる
民間企業の退職金について、法律上「退職後何日以内に必ず支払う」と一律に定められているわけではない。
退職金規程に「退職日から1か月以内に支払う」「退職月の翌月末に支払う」などの定めがある場合は、原則としてその時期に支払われる。
一方で、退職手当についてあらかじめ支払時期が定められていない場合は、退職者から請求があった日から7日以内に支払う必要があるとされている。
なお、毎月の給与や未払い賃金、積立金、保証金などは、退職者から請求があった場合、原則として7日以内に支払いや返還が必要になる。退職金と給与では扱いが異なる場合があるため、混同しないよう注意しよう。
| 確認したいこと | 主な確認先 |
|---|---|
| 退職金があるか | 就業規則・退職金規程 |
| いつ支払われるか | 退職金規程の支払時期 |
| いくら受け取れるか | 退職金の計算方法・人事部門の試算 |
| 必要書類は何か | 退職手続き案内・人事部門 |
| 支払が遅れているか | 退職金規程と実際の支払状況 |
会社都合退職の場合|支払時期より支給額や雇用保険の違いに注意
会社都合退職とは、倒産、解雇、人員整理、事業縮小など、主に会社側の事情によって退職するケースを指す。
退職金の支払時期は、会社都合退職か自己都合退職かだけで自動的に変わるわけではない。基本的には、退職金規程で定められた支払時期に従う。
ただし、退職金の支給額は退職理由によって変わることがある。会社都合退職では自己都合退職より支給率が高く設定されている会社もあるため、支給額の計算式を確認しておこう。
また、雇用保険の基本手当では、会社都合退職などに該当する場合、所定給付日数や給付開始時期が自己都合退職と異なる場合がある。退職金とは別に、ハローワークで確認することが大切だ。
自己都合退職の場合|退職金の支給率が下がる規程がないか確認する
自己都合退職とは、転職、家庭の事情、健康上の理由、独立など、従業員本人の事情で退職するケースを指す。
自己都合退職でも、退職金制度の対象であり支給要件を満たしていれば、退職金を受け取れる可能性がある。
ただし、退職金規程によっては、自己都合退職の支給率が会社都合退職より低く設定されている場合がある。短期間で退職した場合は退職金が支給されない会社もあるため、勤続年数の条件も確認しておこう。
雇用保険については、正当な理由のない自己都合退職の場合、受給資格決定後の7日間の待期期間に加え、原則として一定期間の給付制限がある。2025年4月1日以降は、原則の給付制限期間が1か月に見直されている。
退職金の計算方法と受け取り方法|税金・社会保険料も確認する

退職金の支払時期とあわせて、いくら受け取れるのか、税金や社会保険料はどう扱われるのかも確認しておきたい。
この章では、退職金の計算方法、税金、社会保険料、一時金と年金の受け取り方法について解説する。
- 退職金の計算方法の基本
- 退職金にかかる税金
- 社会保険料の扱い
- 一時金・年金・併用の違い
退職金の計算方法の基本
退職金の計算方法は、会社ごとの退職金規程によって異なる。法律で全国一律の計算式が定められているわけではない。
代表的な計算方法には、以下のようなものがある。
| 計算方法 | 内容 |
|---|---|
| 基本給連動型 | 退職時の基本給に、勤続年数や退職理由に応じた係数を掛けて計算する方法 |
| 勤続年数連動型 | 勤続年数ごとの支給額や支給率をもとに計算する方法 |
| ポイント制 | 勤続年数、役職、等級、評価などで付与されたポイントをもとに計算する方法 |
| 企業年金・共済型 | 企業年金、中小企業退職金共済、確定拠出年金などの制度に基づいて受け取る方法 |
基本給連動型の場合は、以下のような式で計算されることがある。
退職金=算定基礎額×勤続年数・退職理由などに応じた支給率+調整額
ただし、これはあくまで一例だ。実際の計算では、退職時の基本給、勤続年数、退職理由、役職、等級、休職期間、再雇用期間などが影響する場合がある。
自分の退職金額を正確に知りたい場合は、人事・総務部門に退職金の試算を依頼するとよい。
退職金にかかる税金|退職所得控除を確認する
退職金を一時金で受け取る場合、原則として退職所得として扱われる。退職所得には退職所得控除があり、通常の給与所得とは異なる方法で税金を計算する。
退職所得の金額は、原則として以下の式で計算する。
退職所得の金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続年数30年の人であれば、退職所得控除額は「800万円+70万円×10年=1,500万円」となる。
また、退職金を受け取る際には「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出するのが一般的だ。提出している場合は、会社が所得税および復興特別所得税を計算し、退職金の支払時に源泉徴収するため、原則として確定申告は不要とされる。
一方、この申告書を提出していない場合は、退職金の支給額に対して20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算することになる。
退職所得には住民税もかかる。退職所得にかかる住民税は、原則として退職金の支払者が退職金の支払時に計算し、退職金から差し引いて納入する。
なお、役員としての勤続年数が5年以下の場合や、短期退職手当等に該当する場合は、2分の1課税の扱いが異なることがある。退職金額が大きい場合や複数の退職金を受け取る場合は、税務署や税理士に確認しよう。
社会保険料は原則として退職金から控除されない
退職金を受け取る際、「健康保険料や厚生年金保険料も差し引かれるのか」と疑問に感じる方もいるだろう。
退職手当は、原則として社会保険料の対象となる報酬等には該当しない。そのため、通常の退職金一時金から健康保険料や厚生年金保険料が控除されるわけではない。
ただし、退職金相当額を在職中の毎月の給与や賞与に上乗せして前払いする制度では、通常の生計に充てられる経常収入として報酬等に該当する場合がある。
また、退職後は健康保険を任意継続にするのか、国民健康保険に加入するのか、家族の扶養に入るのかなどを選ぶ必要がある。退職金そのものに社会保険料がかからなくても、退職後の保険料や住民税の支払い予定は別途確認しておこう。
受け取り方法は一時金・年金・併用から選ぶ場合がある
退職金の受け取り方法は、制度によって異なる。退職一時金としてまとめて受け取る場合もあれば、企業年金として分割で受け取る場合もある。
主な受け取り方法の違いは以下のとおりだ。
| 受け取り方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職時にまとまった金額を受け取る | 退職所得控除を使えるが、使いすぎや運用リスクに注意 |
| 年金 | 一定期間または終身で分割して受け取る | 公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある |
| 一時金と年金の併用 | 一部を一時金、残りを年金で受け取る | 税金・生活費・運用方針を総合的に判断する必要がある |
一時金はまとまった資金を得られる一方、使い道を決めずに受け取ると短期間で取り崩してしまうリスクがある。
年金形式は定期的な収入を確保しやすいが、税金の扱いや受給期間、運用状況によって手取り額が変わる場合がある。
どの受け取り方法が有利かは、退職金額、勤続年数、公的年金の受給額、退職後の生活費、他の資産状況によって異なる。受け取り方法を選べる場合は、事前に試算しておこう。
退職金が支払われない際には|支払期限後は書面で確認する

退職金が予定どおり支払われない場合は、感情的に問い合わせるのではなく、支払時期・支給要件・必要書類を順番に確認することが大切だ。
退職金請求権には時効があるため、支払われない状態を長期間放置しないようにしよう。
会社の規程を確認する
まずは、退職金規程や労働契約書を確認し、自分が退職金の支給対象かどうかを確認する。
- 退職金制度の対象者
正社員のみなのか、契約社員・パートタイマーも対象なのかを確認する。 - 支給要件
勤続年数、退職理由、懲戒処分の有無など、支給条件を満たしているか確認する。 - 支払時期
退職日から何日後、何か月後、どの給与支払日などに支払われるかを確認する。 - 計算方法
基本給、勤続年数、支給率、ポイント、退職理由係数などの計算根拠を確認する。 - 必要書類
退職所得の受給に関する申告書、振込先情報、退職手続き書類などに不備がないか確認する。
支払時期がまだ到来していない場合は、会社が規程どおりに処理している可能性がある。反対に、規程上の支払時期を過ぎている場合は、次のステップで担当部署に確認しよう。
担当部署に確認する
退職金の支払予定日を過ぎても入金されない場合は、人事・総務・給与担当などの担当部署に確認する。
問い合わせる際は、口頭だけでなくメールや書面で記録を残すと、後で状況を整理しやすい。
- 退職日と氏名を伝える
退職日、所属部署、社員番号などを伝え、確認しやすい状態にする。 - 退職金規程の支払時期を示す
規程上の支払時期を確認したうえで、入金予定日を質問する。 - 未提出書類の有無を確認する
必要書類の不備や未提出が原因で支払いが止まっていないか確認する。 - 計算根拠を確認する
支給額が想定より少ない場合は、計算式や控除内容の説明を求める。 - 連絡履歴を残す
問い合わせ日、担当者名、回答内容、次回の確認予定日を記録しておく。
会社側の事務処理遅れや書類不備であれば、この段階で支払予定日が分かることもある。
支払われない場合は労働基準監督署や弁護士に相談する
退職金制度があり、支給要件を満たしているにもかかわらず退職金が支払われない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、弁護士への相談を検討しよう。
退職金規程に基づく退職金は、支給条件が明確であれば賃金として扱われる場合がある。会社が規程に従って支払わない場合は、労働基準法に抵触する可能性がある。
相談時には、以下の資料を用意しておくと状況を説明しやすい。
- 就業規則・退職金規程
- 労働契約書・労働条件通知書
- 退職日が分かる書類
- 退職金の試算書や会社からの通知
- 会社とのメール・書面のやり取り
- 給与明細や源泉徴収票
退職金の不払いは、資産運用の相談とは異なる。IFAや金融機関に相談する前に、まずは労務トラブルに対応できる公的機関や法律専門家へ相談しよう。
退職金が支給されたら活用法は誰に相談するべきか

退職金が支給された後は、生活資金、税金、住宅ローン、医療費、介護費、相続、資産運用などを踏まえて使い道を考える必要がある。
退職金の支払時期や不払いに関する相談は人事部門、労働基準監督署、弁護士などが主な相談先になる。一方で、退職金をどのように運用・管理するかを相談したい場合は、ファイナンシャル・プランナーやIFAなどの専門家を活用する選択肢がある。
ここでは、退職金の運用相談先の一つであるIFAについて解説する。
IFAとは
IFAとは、独立系ファイナンシャル・アドバイザーのことだ。金融商品仲介業者として、顧客のライフプランや資産状況に合わせて、金融商品の提案や売買取引の支援を行う。
IFA法人は、証券会社などの金融商品取引業者や登録金融機関と業務委託契約を結んで業務を行う。そのため、完全にどの金融機関とも関係がないわけではない。
相談する際は、どの金融機関と提携しているのか、どのような商品を取り扱えるのか、手数料がどのように発生するのかを確認することが大切だ。
IFAに相談するメリット
退職金の運用相談をIFAに行う主なメリットは以下のとおりだ。
- 退職後の生活設計を踏まえた資産運用方針を相談できる
- リスク許容度に合わせた運用商品の提案を受けられる場合がある
- 運用後の資産配分の見直しやフォローを相談できる場合がある
- NISAやiDeCoなど、制度活用の相談ができる場合がある
退職金は老後資金の重要な柱になりやすい。すぐに全額を投資に回すのではなく、生活費、予備資金、運用資金に分けて考えることが大切だ。
IFAに相談する場合も、提案された商品をそのまま契約するのではなく、リスク、手数料、途中解約時の条件、運用後のフォロー内容を確認しよう。
IFAに相談する前に確認したいこと
退職金の運用相談では、相談先の信頼性を確認することも欠かせない。
相談前には、以下の点を確認しておこう。
- 金融商品仲介業者として登録されているか
- 所属金融機関や提携金融機関はどこか
- 取り扱える金融商品の範囲はどこまでか
- 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用はいくらか
- 特定の商品を強く勧める理由を説明してくれるか
- 運用開始後の定期フォローがあるか
退職金の活用は、税金、生活費、運用リスクを総合的に考える必要がある。複数の相談先を比較し、納得できる説明を受けたうえで判断しよう。
まとめ

この記事では、退職金の支払時期、計算方法、受け取り方法、支払われない場合の対応について解説した。
民間企業の退職金は、会社の就業規則や退職金規程で定められた時期に支払われるのが基本だ。退職金制度がある場合は、支給対象者、計算方法、支払方法、支払時期が規程に記載されているため、まずは勤務先の規程を確認しよう。
退職金規程に支払時期が定められている場合は、その時期に支払われる。支払時期が定められていない場合は、請求日から7日以内に支払う必要があるとされている。
退職金が予定どおり支払われない場合は、支払時期、支給要件、必要書類を確認したうえで、人事・総務部門へ書面で問い合わせよう。それでも解決しない場合は、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、弁護士などに相談することが大切だ。
退職金を受け取った後は、税金や社会保険、生活費、資産運用の方針を整理する必要がある。退職金の運用に不安がある場合は、IFAやファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談する選択肢もある。
ただし、退職金は老後生活を支える大切な資金だ。相談先の登録状況、手数料、取扱商品、リスク説明を確認し、自分の生活設計に合う方法を選ぼう。
出典
e-Gov法令検索「労働基準法」
厚生労働省「モデル就業規則」
群馬労働局「賃金支払いに関する事項のあらまし」
沖縄労働局「労働相談事例 退職・解雇Q2」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(公開日:2025年4月1日)
東京都北区「退職所得にかかる住民税」(公開日:2026年2月2日)
厚生労働省「いわゆる退職金の前払いに係る社会保険料の取扱いについて」(公開日:2003年10月1日)
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」
厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金請求権の消滅時効が変わったと聞きました。どのようになったのでしょうか?」
ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(公開日:2025年4月1日)
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

