国家公務員の退職金はいくら?平均額・計算方法・受け取り時期を解説

国家公務員の退職金は、国家公務員退職手当法などに基づいて支給される退職手当だ。

支給額は、退職日の俸給月額、勤続年数、退職理由、在職中の職務区分などによって変わる。定年退職と自己都合退職では平均支給額にも大きな差があるため、「国家公務員なら一律で同じ金額がもらえる」と考えるのは避けたい。

この記事では、国家公務員の退職金の平均額、計算方法、受け取り時期、税金、退職後の活用方法をわかりやすく解説する。

国家公務員を目指している人、現在国家公務員として働いていて将来の退職金が気になる人、退職後の資金計画を考えたい人は参考にしてほしい。

目次

国家公務員の退職金とは?平均額と対象者を確認しよう

国家公務員の退職金について確認するイメージ

まずは、国家公務員の退職金の基本を押さえておこう。

国家公務員の退職金は、一般的には「退職手当」と呼ばれる。民間企業の退職金と同じように、退職時にまとまった資金として受け取るものだが、計算方法や支給条件は法律や制度に基づいて定められている。

国家公務員の種類と退職手当の対象

国家公務員は、大きく一般職と特別職に分かれる。人事院の令和8年度資料では、国家公務員は約59.3万人で、その内訳は一般職約29.5万人、特別職約29.8万人とされている。

ただし、国家公務員に該当する職種すべてが同じ退職手当制度で扱われるわけではない。退職手当法の対象となる職員、個別法令で扱いが異なる職員、法人独自の退職金制度が適用される職員がいる。

区分主な例退職手当の扱い
一般職中央省庁の事務官、国税専門官、労働基準監督官、検察官、行政執行法人職員など原則として国家公務員退職手当法などに基づいて扱われる
特別職防衛省職員、裁判官、裁判所職員、国会職員、大臣・副大臣・大臣政務官など職種ごとに個別法令や制度の確認が必要
独立行政法人・国立大学法人などの職員国立大学法人職員、国立病院機構職員など国家公務員ではなく、各法人の退職金規程による場合が多い
非常勤職員・期間業務職員短時間勤務、任期付き、期間業務職員など勤務形態や勤務期間により対象となる場合・ならない場合がある

自分の退職手当がどの制度で計算されるかは、所属機関の人事担当部署や退職手当の案内で確認する必要がある。特に、非常勤職員や法人職員は、国家公務員と同じ名称の仕事に近い業務をしていても、退職金制度が異なることがある。

国家公務員の退職金平均額|定年退職は約2,160万円

内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、令和6年度中に退職した常勤職員の退職理由別平均支給額は以下の通りである。

退職理由常勤職員の平均支給額うち行政職俸給表(一)適用者
1,094.3万円1,389.6万円
定年2,160.1万円2,148.8万円
応募認定2,470.3万円2,277.0万円
自己都合345.4万円331.5万円
その他263.0万円210.0万円

上記は平均額であり、すべての国家公務員が同じ金額を受け取れるわけではない。定年退職は勤続年数が長くなりやすいため平均額が高く、自己都合退職は若年層や勤続年数の短い退職も含まれるため平均額が低くなりやすい。

また、応募認定退職は、いわゆる早期退職募集などに応じて退職したケースであり、制度上の加算が関係する場合がある。自分の退職金を把握するには、平均額ではなく、退職日の俸給月額と支給率をもとに確認することが大切だ。

国家公務員の退職金の計算方法

国家公務員の退職手当は、基本的に以下の計算式で算出される。

退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額

ここでいう俸給月額は、いわゆる基本給にあたる部分であり、年収そのものではない。賞与や各種手当を含めた年収から単純に退職金を計算することはできないため注意しよう。

調整額は、在職中の職務の級や区分などをもとに、職務上の貢献度を反映するための加算部分である。職務区分や勤続年数、退職理由によって扱いが変わるため、正確な金額は所属機関の試算で確認する必要がある。

退職理由別・勤続年数別の支給率の代表例は以下の通りだ。

勤続年数自己都合定年・応募認定等
20年19.669524.586875
25年28.039533.27075
30年34.735540.80375
35年39.757547.709
40年44.779547.709
43年以上47.70947.709

単位は「月分」と考えると理解しやすい。たとえば、退職日の俸給月額が35万円で、勤続35年・定年退職の場合、基本額は以下のように概算できる。

35万円×47.709=約1,669.8万円

ここに、職務区分などに応じた調整額が加わる。

同じ勤続35年でも、自己都合退職の場合は支給率が39.7575となるため、基本額は以下のように変わる。

35万円×39.7575=約1,391.5万円

自己都合退職では、同じ俸給月額・勤続年数でも定年退職より基本額が少なくなる。

このように、退職手当は年収ではなく退職日の俸給月額と支給率で計算される。退職時点の職務の級、役職、地域手当の扱い、調整額なども関わるため、実際の支給見込み額は所属機関に確認しよう。

退職理由によって支給額は大きく変わる

国家公務員の退職手当では、退職理由が重要な要素になる。主な退職理由には、定年退職、応募認定退職、自己都合退職、死亡退職、任期終了などがある。

自己都合退職の場合、定年退職や応募認定退職より支給率が低くなることがある。特に若いうちに退職する場合や勤続年数が短い場合は、平均支給額よりも大きく低くなる可能性がある。

また、自己都合退職では、勤続年数に応じて調整額が支給されない、または半額になる場合がある。退職時期を決める前に、自己都合退職時の支給率と調整額の扱いを確認しておきたい。

支給制限や返納の対象になる場合もある

国家公務員の退職手当は、退職すれば必ず満額支給されるとは限らない。懲戒免職等の処分を受けた場合や、在職中の非違行為が退職後に判明した場合などは、退職手当の全部または一部が支給制限・返納の対象になることがある。

通常の自己都合退職であれば支給対象になり得るが、支給率や調整額の扱いは定年退職とは異なる。退職理由による差は、退職前に必ず確認しておこう。

退職金の受け取り時期や条件を把握しよう

退職金の受け取り時期や条件を確認する書類

続いて、国家公務員の退職手当を受け取る時期や、確認しておきたい条件を見ていこう。

退職金の受け取り時期は原則として退職日から1か月以内

国家公務員退職手当法では、一般の退職手当などは、原則として職員が退職した日から起算して1か月以内に支払わなければならないとされている。

たとえば3月31日に退職した場合、通常は4月中に支払われることが多い。ただし、死亡退職で受給者を確認する必要がある場合や、特別な事情がある場合などは、この限りではない。

具体的な入金日や手続きの流れは、所属機関によって異なる。退職予定日が近づいたら、必要書類、振込口座、税務関係書類、支払予定日を人事担当部署に確認しておこう。

受け取り条件で確認したいポイント

退職手当の受け取りで確認したいポイントは、以下の通りである。

  • 退職手当法または個別法令の対象になる職員か
  • 常勤職員、非常勤職員、期間業務職員など勤務形態はどう扱われるか
  • 勤続期間の端数処理や除算期間があるか
  • 退職理由が定年・応募認定・自己都合・その他のどれに該当するか
  • 調整額の支給対象になるか
  • 懲戒免職等による支給制限の対象にならないか

勤続期間に1年未満の端数がある場合、制度上の計算では端数処理が行われる。短い在職期間や非常勤職員の退職手当は扱いが複雑になりやすいため、自己判断せずに所属機関へ確認したい。

定年引き上げにより60歳以降の退職手当にも注意

国家公務員の定年は、令和5年4月から段階的に65歳へ引き上げられている。定年年齢は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和13年度に65歳となる予定だ。

また、60歳に達した日以後に定年前の退職を選択した職員については、当分の間、定年を理由とする退職と同様に退職手当を算定する仕組みがある。

一方、60歳以降の給与は原則として60歳前の7割水準に設定されるなど、働き方や収入の条件も変わる。退職金だけでなく、60歳以降の給与、公的年金、再任用、生活費を含めて資金計画を考えることが重要だ。

退職金の非課税限度額と課税方法

退職金を一時金で受け取る場合は、原則として「退職所得」として扱われる。退職所得には退職所得控除があり、給与所得などとは分けて税額を計算する。

退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算される。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数−20年)

たとえば、勤続10年なら退職所得控除額は400万円、勤続30年なら1,500万円、勤続40年なら2,200万円である。勤続年数に1年未満の端数がある場合、税金計算上は1年に切り上げて計算する。

退職所得の金額は、原則として以下の計算式で求める。

退職所得の金額=(退職金の収入金額−退職所得控除額)×1/2

ただし、国家公務員は税法上の「役員等」に含まれる。勤続年数5年以下の退職手当が「特定役員退職手当等」に該当する場合は、2分の1課税が適用されず、退職金の収入金額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になる。

長期勤続で定年退職する場合は退職所得控除の効果が大きい一方、短期間で退職する場合は税務上の扱いが異なることがある。退職手当の金額が大きい場合や、複数の退職金・企業年金・iDeCoの一時金を同じ年に受け取る場合は、税理士や税務署に確認すると安心だ。

退職金を活用する方法|まずは生活費・税金・運用資金に分ける

退職金の使い道や資産計画を考えるイメージ

国家公務員の退職手当は、定年退職では2,000万円前後になるケースもある。まとまった金額を受け取るからこそ、受け取った直後の判断が重要だ。

退職金を有効に活用するには、すぐに投資するのではなく、生活費、税金、緊急資金、長期運用資金に分けて考えることが大切である。

資産把握と資金計画の策定を行う

退職金を受け取る前後で、まず確認したいのは家計全体の資産状況だ。

  • 預貯金、退職金、保険、投資信託、株式などの資産
  • 住宅ローン、教育ローン、カードローンなどの負債
  • 退職後の毎月の生活費
  • 医療費、介護費、住宅修繕費、車の買い替え費用などの将来支出
  • 公的年金や再任用・再就職による収入見込み

退職金は老後資金の柱になりやすい。まずは、すぐ使うお金、数年以内に使うお金、長期で運用できるお金に分けよう。

退職直後は、生活環境や支出が変わりやすい時期でもある。受け取った退職金を一度に投資へ回すのではなく、当面の生活費と緊急資金を確保したうえで運用を検討するとよい。

税金対策は「控除の確認」と「受け取り時期」が重要

退職金の税金対策では、まず退職所得控除を正しく把握することが重要だ。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金の支払者が退職所得に対する所得税・復興特別所得税を計算し、源泉徴収するため、原則として確定申告は不要である。

一方で、医療費控除や寄附金控除を受ける場合、他の所得がある場合、同じ年に複数の退職金や一時金を受け取る場合などは、確定申告や税務確認が必要になることがある。

節税という言葉だけで判断するのではなく、退職所得控除、受け取り時期、他の所得、住民税や社会保険料への影響を整理しておこう。

NISAなどを活用する場合は元本保証ではない点に注意

退職金の一部を長期運用に回す場合、NISAを活用する選択肢がある。

2024年から始まった新しいNISAでは、非課税保有期間が無期限となり、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になった。年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円である。

ただし、NISAを使っても投資元本が保証されるわけではない。退職金は生活資金としての性格も強いため、値下がりしても生活に支障が出ない範囲で運用を検討する必要がある。

退職金運用では、「増やすこと」だけでなく、「必要なときに必要な金額を使えること」も重要だ。預貯金、個人向け国債、投資信託、保険などの特徴を比較し、資金の使う時期に合わせて分けると判断しやすい。

退職金活用に迷う場合は専門家に相談する

退職金の使い道は、年齢、家族構成、住宅ローン、年金見込み額、健康状態、相続の考え方によって変わる。そのため、一般的な情報だけで最適な判断をするのは難しい。

相談先には、IFA、ファイナンシャルプランナー、税理士、社会保険労務士、弁護士などがある。資産運用ならIFAや金融機関、税金の個別判断なら税理士、年金や社会保険なら社会保険労務士、退職手当の支給トラブルなら弁護士といったように、相談内容に応じて選ぶことが大切だ。

国家公務員の退職金相談はどこにするべきか

国家公務員の退職金について専門家に相談するイメージ

国家公務員の退職金は、制度上の計算方法がある一方で、退職後の使い方は人によって大きく異なる。

退職金を受け取った後にどう管理するか、どの程度を運用に回すか、住宅ローンを返済するか、生活費として取り崩すかは、個別の家計状況を見て判断する必要がある。

ここでは、退職金の相談先の一つであるIFAについて整理する。

IFAとは

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、独立系ファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれる。

日本では、金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやニーズに合った資産形成の提案、金融商品の選定、売買取引の支援などを行う。投資信託、債券、株式、NISAやiDeCoなどの制度活用について相談できる場合がある。

ただし、IFAに相談すれば必ず利益が出るわけではない。投資には元本割れのリスクがあり、提案される商品には手数料や運用管理費用もかかる。相談前には、手数料体系、提携金融機関、取り扱い商品、利益相反の説明を確認しよう。

IFAに相談できること

IFAに相談することで、退職金を含めた資産全体の配分を検討しやすくなる。

  • 退職金を預貯金・運用資金・生活費に分ける考え方
  • NISAやiDeCoなどの制度活用
  • リスク許容度に応じた金融商品の選び方
  • 退職後の資産取り崩しの考え方
  • 長期的な資産配分の見直し

退職金は一度に大きな金額を受け取るため、短期間で大きな判断をしがちだ。しかし、老後資金として長く使うお金である以上、生活費や緊急資金を確保したうえで、無理のない範囲で運用を検討することが重要である。

税金や法律の相談は専門家を使い分ける

IFAは資産運用や金融商品に関する相談先の一つだが、すべての退職金問題を解決できるわけではない。

退職所得の計算、確定申告、複数の退職金・一時金を受け取る場合の税務判断は、税理士や税務署に確認するのが適切である。未払い退職手当や支給制限など法的な問題がある場合は、弁護士への相談も検討したい。

相談先を選ぶときは、「退職金を増やしたい」だけでなく、「何に不安があるのか」を先に整理しよう。税金、生活費、運用、相続、支給トラブルのどれに悩んでいるかによって、相談すべき相手は変わる。

まとめ

国家公務員の退職金についてまとめるイメージ

国家公務員の退職金は、退職日の俸給月額、勤続年数、退職理由、調整額によって決まる。

令和6年度の退職手当支給状況では、常勤職員の平均支給額は、定年退職で2,160.1万円、応募認定で2,470.3万円、自己都合で345.4万円だった。平均額だけを見るのではなく、自分の退職理由や勤続年数に応じた支給率を確認することが大切だ。

退職手当は原則として退職日から1か月以内に支払われる。ただし、手続きや事情によって異なる場合があるため、退職前に所属機関へ確認しておこう。

退職金を受け取った後は、生活費、税金、緊急資金、運用資金に分けて考えると判断しやすい。運用を検討する場合も、元本保証ではない点を理解し、必要に応じてIFA、税理士、社会保険労務士、弁護士など相談内容に合った専門家を活用しよう。

出典

人事院「人事院行政リーフレット 令和8年度 国家公務員の数と種類」
内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度)」
内閣官房内閣人事局「給与・退職手当」
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」
e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
人事院「定年・役職定年・再任用」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和7年分)」
金融庁「NISAを知る」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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