iDeCoの出口戦略とは?受け取り方・税金・退職金との順番を解説

iDeCoは、老後資金を自分で準備するための個人型確定拠出年金です。

老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、受給開始時期は75歳までの間で選べます。そのため、60歳になったらすぐ受け取るべきとは限りません。

iDeCoの出口戦略では、いつ受け取るかだけでなく、一時金・年金・併用のどれで受け取るか会社の退職金や公的年金とどう組み合わせるかが重要です。

特に、iDeCoを一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除が関係します。受け取り方によって手取り額が変わるため、事前にシミュレーションしておきましょう。

この記事では、iDeCoの受け取り方、受け取りタイミング、税金、退職金との順番、運用を続ける際の注意点をわかりやすく解説します。

目次

iDeCoの出口戦略の基本

iDeCoの出口戦略を考えるイメージ

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称です。加入者が掛金を拠出し、運用商品を選んで運用し、その結果に応じて将来の受取額が決まります。

iDeCoは原則60歳まで引き出せない制度です。一方で、60歳以降はすぐ受け取るだけでなく、75歳まで受給開始を遅らせることもできます。

また、2026年12月1日施行予定の制度改正では、一定の要件を満たす60歳以上70歳未満の人も、iDeCoへの加入・継続拠出ができるようになる予定です。拠出できる期間が広がることで、出口戦略の選択肢も増えます。

出口戦略とは何か?

iDeCoの出口戦略とは、iDeCoで積み立てた資産を、いつ・どの方法で・どの順番で受け取るかを決めることです。

具体的には、以下のような項目を整理します。

  • 何歳から受け取るか
    60歳から受け取るか、65歳以降まで運用を続けるか
  • どの方法で受け取るか
    一時金、年金、一時金と年金の併用から選ぶ
  • 退職金とどう組み合わせるか
    会社の退職金、企業型DC、企業年金と同じ年に受け取るかを考える
  • 税金や社会保険料にどう影響するか
    退職所得控除、公的年金等控除、住民税、国民健康保険料などを確認する
  • 老後資金の取り崩し計画をどうするか
    生活費、医療費、介護費、運用資金を分けて考える

iDeCoを60歳で受け取らずに運用を続ければ、運用益によって資産が増える可能性があります。一方で、投資信託などで運用している場合は、相場下落により資産が減る可能性もあります。

そのため、「まだ使わないから先延ばしする」「税金が安そうだから一時金にする」といった単純な判断ではなく、家計全体で考えることが大切です。

受給開始年齢のポイント

iDeCoの老齢給付金は、原則60歳から受け取れます。ただし、60歳から受け取るには、60歳になるまでに確定拠出年金の通算加入者等期間が10年以上必要です。

通算加入者等期間が10年未満の場合、受給可能年齢は以下のように繰り下がります。

通算加入者等期間受給可能年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1か月以上2年未満65歳

60歳以上で初めてiDeCoに加入した人は、通算加入者等期間がなくても、加入から5年を経過した日から受給できます。

また、75歳までに受給の請求が必要です。請求しない場合は、年金資産が法務局に供託されるため、受給可能年齢が近づいたら運営管理機関からの案内を確認しましょう。

出口時期を決めるときの確認ポイント

iDeCoをいつ受け取るかは、税金だけでなく生活資金の状況によって変わります。

特に確認したいのは、以下の項目です。

  • 60歳以降も働く予定があるか
  • 公的年金は何歳から受け取る予定か
  • 退職金や企業年金をいつ受け取るか
  • 住宅ローンや教育費など大きな支出が残っているか
  • 医療費・介護費・生活防衛資金をどれくらい確保しているか
  • iDeCo資産をどの商品で運用しているか

公的年金だけでは生活費が不足する場合は、iDeCoを早めに取り崩す必要があるかもしれません。一方で、再雇用収入や預貯金が十分にある場合は、iDeCoの受給開始を遅らせて運用を継続する選択肢もあります。

iDeCoの出口戦略の選択肢

iDeCoの受け取り方を選ぶ分かれ道のイメージ

iDeCoの受け取り方は、主に一時金年金一時金と年金の併用の3つです。

どれを選ぶかによって、税金の扱い、資金管理のしやすさ、運用継続の有無が変わります。

受け取り方税金の扱い向いているケース注意点
一時金退職所得控除の対象まとまった資金を確保したい場合退職金との受取順や10年ルールに注意
年金公的年金等控除の対象定期収入として受け取りたい場合公的年金等と合算して所得を確認する
併用一時金部分と年金部分で扱いが分かれる一部をまとめて受け取り、残りを分割したい場合運営管理機関によって取扱いが異なる

一時金で受け取る

一時金は、iDeCoの年金資産をまとめて受け取る方法です。

一時金で受け取る場合は退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。退職所得控除は控除額が大きいため、税負担を抑えやすい方法です。

退職所得控除額は、以下のように計算します。iDeCoの場合は、加入期間・拠出期間を退職所得控除の計算に使います。

勤続年数・加入期間が20年以下の場合

40万円 × 年数
※80万円未満の場合は80万円

勤続年数・加入期間が20年超の場合

800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)

退職所得は、以下の式で計算します。

退職所得の計算式

(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

たとえば、加入期間30年、iDeCoの一時金2,000万円を受け取るケースで概算してみましょう。

1.退職所得控除額
800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円

2.課税退職所得金額
(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円

3.所得税・復興特別所得税
250万円 × 10% − 97,500円 = 152,500円
復興特別所得税を含めると 約15万6,000円

4.住民税
250万円 × 10% = 25万円

税額の概算
約40万6,000円

概算の手取り額
2,000万円 − 約40万6,000円 = 約1,959万円

一時金受け取りは税制面で有利になりやすい一方、受け取った後は自分で資金管理をする必要があります。まとまったお金を一度に受け取るため、生活費・緊急資金・運用資金に分けて管理しましょう。

また、会社の退職金とiDeCo一時金を近い時期に受け取る場合は、退職所得控除の重複調整に注意が必要です。

令和7年度税制改正により、2026年1月1日以後にiDeCoなどのDC老齢一時金を受け取り、その後に会社の退職金などを受け取る場合、退職手当等を受ける年の前年以前9年内に受け取ったDC老齢一時金が、退職所得控除の重複排除の対象になります。

従来の「5年空ければよい」という感覚で考えると、税負担が想定より増える可能性があります。退職金とiDeCoをどちらも一時金で受け取る予定がある方は、受け取り時期を必ず確認しましょう。

年金で受け取る

年金受け取りは、iDeCoの資産を分割して受け取る方法です。

iDeCoを年金で受け取る場合、原則として5年以上20年以下の有期年金として受け取ります。運営管理機関によっては、終身年金を取り扱っている場合もあります。

年金受け取りのメリットは、定期収入として受け取れるため、使いすぎを防ぎやすい点です。また、受け取りを続けながら残りの資産を運用できる場合があります。

一方で、年金で受け取る場合は公的年金等に係る雑所得として扱われます。iDeCoの年金収入だけでなく、公的年金、企業年金なども合算して所得を計算します。

たとえば、iDeCo資産2,000万円を10年間で受け取る場合、年額は200万円です。

60歳〜64歳で、iDeCo年金だけを年額200万円受け取る場合
公的年金等に係る雑所得:200万円 × 0.75 − 27万5,000円 = 122万5,000円

65歳以上で、iDeCo年金だけを年額200万円受け取る場合
公的年金等に係る雑所得:200万円 − 110万円 = 90万円

実際には、ここに公的年金や企業年金などの収入を合算します。その後、基礎控除や社会保険料控除などを差し引いて所得税・住民税を計算します。

年金受け取りは「長く分けて受け取れば必ず有利」とは限りません。公的年金の受給開始後は所得が増え、税金や社会保険料に影響する場合があります。

一時金と年金を併用して受け取る

iDeCoの資産の一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る方法もあります。

たとえば、退職直後の生活費や住宅ローン返済のために一部を一時金で受け取り、残りを年金として定期的に受け取るといった使い方です。

併用受け取りでは、一時金部分は退職所得控除、年金部分は公的年金等控除の対象になります。税金面と資金管理のしやすさを両方考えられる点がメリットです。

ただし、併用受け取りを取り扱っているかどうかは、運営管理機関によって異なります。受け取り開始前に、利用している金融機関や運営管理機関に確認しましょう。

iDeCo出口戦略の注意点

iDeCo出口戦略の注意点を確認するイメージ

iDeCoの出口戦略を考えるときは、税金だけでなく、運用リスクや老後の生活費もあわせて確認する必要があります。

ここでは、特に注意したい3つのポイントを解説します。

税金対策|退職金との受取順に注意する

iDeCoを一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除が使えます。

ただし、税制優遇を最大限使えるかどうかは、会社の退職金、企業型DC、企業年金、iDeCoの受け取り時期によって変わります。

特に注意したいのは、iDeCoなどのDC老齢一時金を先に受け取り、その後に会社の退職金を受け取るケースです。2026年以降は、前年以前9年内のDC老齢一時金が退職所得控除の重複排除の対象になるため、10年程度の間隔を意識する必要があります。

一方で、会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCo一時金を受け取る場合は、別の調整ルールが関係します。どちらを先に受け取るかで結果が変わるため、退職前に税理士や勤務先、運営管理機関へ確認しましょう。

運用リスク|受け取り直前の値下がりに備える

iDeCoを60歳以降も運用し続ける場合、運用益によって資産が増える可能性があります。一方で、投資信託などで運用している場合は、受け取り直前に相場が下落すると、予定していた金額を下回る可能性があります。

退職が近づいたら、資産配分を見直しましょう。

  • 株式比率が高すぎないか
  • 元本確保型商品や債券型商品をどの程度組み入れるか
  • 一時金で受け取る予定額を値動きの大きい商品に置きすぎていないか
  • 年金受け取り中に運用を続ける場合、どの程度の変動に耐えられるか

「60歳以降も増やしたい」と考える場合でも、生活費として使う予定の資金までリスク資産に置きすぎないことが大切です。

生活費のプランニング|年金・退職金・NISAも含めて考える

iDeCoの出口戦略は、iDeCo単独では決められません。公的年金、退職金、企業年金、NISA、預貯金、保険、住宅ローン、医療費、介護費を含めて考える必要があります。

たとえば、以下のような選択肢があります。

  • 60歳以降も働き、iDeCoの受給開始を遅らせる
  • iDeCoを先に受け取り、公的年金を繰り下げる
  • 公的年金を受け取りながら、iDeCoは年金形式で上乗せする
  • 退職金を生活防衛資金として残し、NISAで余裕資金を運用する
  • iDeCoの一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る

NISAを活用する場合、2024年以降は年間投資枠が最大360万円、非課税保有限度額が最大1,800万円です。iDeCoを一時金で受け取った後、すぐ使わない資金をNISAで運用する方法もあります。

ただし、NISAも投資である以上、元本割れのリスクがあります。退職金やiDeCoをすべて投資に回すのではなく、まずは生活費や緊急資金を確保してから運用資金を決めましょう。

プロによるiDeCo出口戦略のアドバイス

iDeCo出口戦略について専門家に相談するイメージ

iDeCoの出口戦略は、運用益や税金の損得だけで判断できません。

退職金、公的年金、企業年金、NISA、預貯金、保険、相続予定資産などを含めて、資産全体のバランスを確認する必要があります。

自分だけで判断するのが難しい場合は、勤務先、運営管理機関、税理士、IFAなどに相談するのも選択肢です。

適切なタイミングを見極める

iDeCoを受け取る手続き自体は、運営管理機関の案内に沿って進めれば対応できます。

しかし、どのタイミングで受け取るのが自分に合うかは、家計や退職金、公的年金、税金によって異なります。

たとえば、退職金を60歳で受け取り、iDeCoを65歳で受け取る場合と、iDeCoを60歳で受け取り、退職金を65歳で受け取る場合では、退職所得控除の扱いが変わる可能性があります。

税金の個別判断は税理士、資産運用やライフプランの相談はIFAなど、相談内容に応じて専門家を使い分けましょう。

資産全体のバランスを考慮する

iDeCoだけを見て出口戦略を決めると、老後資金全体のバランスを崩すことがあります。

たとえば、iDeCoを一時金で受け取ってNISAで運用する場合でも、生活費や医療費に使う予定のお金までリスク資産に回すのは避けたいところです。

退職前後は、以下の3つに分けて資金を整理しましょう。

  • 使うお金
    退職直後の生活費、住宅ローン返済、リフォーム、旅行、教育費など
  • 守るお金
    医療費、介護費、家族支援、住宅修繕、収入減に備える緊急資金
  • 運用するお金
    当面使う予定がなく、長期で資産寿命を延ばすために活用できる資金

この整理をしたうえで、iDeCoを一時金で受け取るか、年金で受け取るか、併用するかを考えると判断しやすくなります。

IFAに相談する場合の確認ポイント

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれます。

IFAは金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやリスク許容度に応じた金融商品の提案や売買取引の支援を行います。iDeCoの出口戦略、NISAの活用、退職金の運用、資産配分の見直しなどを相談できる場合があります。

ただし、IFAに相談すれば必ず最適な運用ができるわけではありません。相談先によって提携金融機関、取扱商品、手数料、提案方針が異なります。

相談前には以下を確認しましょう。

  1. 金融商品仲介業者として登録されているか
    金融庁の登録業者一覧などで確認できます。
  2. 提携している金融機関はどこか
    提携先によって、提案できる商品や手数料体系が変わります。
  3. 手数料や報酬の仕組み
    相談料、販売手数料、信託報酬、継続的な管理費用を確認しましょう。
  4. 税務の個別判断は誰が対応するか
    税金の申告や個別具体的な税務判断は税理士の専門領域です。
  5. リスク説明が十分か
    メリットだけでなく、元本割れや価格変動リスクを丁寧に説明してくれるか確認しましょう。

老後のiDeCo出口戦略は、一度決めたら終わりではありません。働き方、年金額、家計、相場環境、健康状態が変われば、見直しが必要になることもあります。

必要に応じて、以下ボタンから相談先を確認してみてください。

まとめ

iDeCo出口戦略のまとめイメージ

iDeCoの出口戦略では、何歳から受け取るか、どの方法で受け取るか、退職金や公的年金とどう組み合わせるかを考える必要があります。

iDeCoは原則60歳から受け取れますが、60歳から受け取るには通算加入者等期間10年以上が必要です。受給開始時期は75歳まで選べますが、75歳までに請求する必要があります。

一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象になります。ただし、会社の退職金や企業年金と近い時期に受け取る場合は、退職所得控除の重複調整に注意しましょう。

特に2026年1月以後は、DC老齢一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取るケースで、前年以前9年内の受け取りが調整対象になります。従来の「5年ルール」の感覚で判断しないことが大切です。

また、60歳以降もiDeCoを運用し続ける場合は、運用益を期待できる一方で、相場下落による元本割れリスクもあります。退職が近づいたら、資産配分を見直しましょう。

自分だけで判断するのが難しい場合は、勤務先、運営管理機関、税理士、IFAなどに相談するのも選択肢です。登録状況、手数料、提携金融機関、リスク説明を確認したうえで利用しましょう。

出典

iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
iDeCo公式サイト「iDeCo加入者・運用指図者の方へ」
厚生労働省「iDeCoの概要」
厚生労働省「2025年の制度改正」
財務省「令和7年度税制改正の大綱(1/9)」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2260 所得税の税率」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(公開日:2025年4月1日)
金融庁「NISAを知る」
金融庁「資産形成の基本」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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