確定拠出年金と退職金の違いは?受け取り方・税金も解説

退職時に受け取れるお金といえば、まず「退職金」を思い浮かべる方が多いでしょう。

ただし、退職後の生活資金として準備される制度には、退職一時金、退職年金、企業型確定拠出年金(企業型DC)、iDeCoなど複数の種類があります。

特に確定拠出年金は、退職金制度の一部として会社が導入している場合もあれば、個人が老後資金づくりのために任意で加入する場合もあります。そのため、一般的な退職金と同じように考えると、受け取り方や税金で迷いやすくなります。

この記事では、確定拠出年金と退職金の違い、退職金の平均額や計算方法、受け取り時の税金、退職後の資金活用の考え方を解説します。

老後に向けた資産形成や、退職金の使い道を考える際の参考にしてください。

目次

確定拠出年金と退職金の基本知識

確定拠出年金と退職金の違いを確認するイメージ

確定拠出年金と退職金は、どちらも退職後や老後の生活資金に関係する制度です。

しかし、仕組みや受け取り方、税金の扱いは異なります。まずはそれぞれの基本を押さえておきましょう。

確定拠出年金とは何か

確定拠出年金は、あらかじめ拠出された掛金とその運用益の合計額をもとに、将来の給付額が決まる年金制度です。

英語ではDefined Contribution Planと呼ばれ、日本ではDCと略されることもあります。

確定拠出年金には、主に企業型DCiDeCoがあります。

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種類概要掛金を出す人運用する人
企業型DC会社が退職給付制度の一部として導入する確定拠出年金原則として会社
※規約により加入者拠出も可能
加入者本人
iDeCo個人が任意で加入する個人型確定拠出年金加入者本人
※iDeCo+では事業主拠出も可能
加入者本人

確定拠出年金では、運営管理機関が提示する投資信託、保険商品、預貯金などの中から、加入者自身が商品を選んで運用します。

給付額は運用結果によって増減するため、元本確保型の商品だけで運用するのか、投資信託を組み合わせるのかなど、選択によって将来の受取額が変わります。

老齢給付金は原則60歳以降に受け取れます。ただし、通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が61歳以降に繰り下がることがあります。

また、2026年12月1日施行予定の制度改正では、iDeCoの加入可能年齢や拠出限度額の見直しが予定されています。今後加入や増額を検討する場合は、最新情報も確認しましょう。

退職金とは何か

多くの人がイメージする退職金は、退職時に会社から一括で受け取る退職一時金です。

退職金制度を設けるかどうかは会社によって異なります。制度がある場合は、支給条件、計算方法、支払時期、減額・不支給の条件などが就業規則や退職金規程に定められます。

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業の割合は74.9%です。つまり、約4社に1社は退職給付制度がないことになります。

退職金を見込んで老後資金を考える場合は、自社に退職金制度があるか、企業型DCや確定給付企業年金(DB)などが併用されているかを確認することが大切です。

確定拠出年金は退職給付制度の一部になることがある

企業型DCは、会社の退職給付制度の一部として導入されることがあります。

一方で、iDeCoは個人が任意で加入する制度です。会社から支給される退職金ではありませんが、自分で老後資金を準備する手段として活用できます。

退職金と確定拠出年金の違いは、以下のように整理できます。

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項目退職一時金企業型DCiDeCo
制度の性質会社の退職金制度会社が導入する企業年金制度個人が任意で加入する私的年金
金額の決まり方退職金規程で決まる掛金と運用成果で決まる掛金と運用成果で決まる
運用する人原則として会社側加入者本人加入者本人
受け取り時期退職時が多い原則60歳以降原則60歳以降
一時金の税金退職所得控除の対象退職所得控除の対象退職所得控除の対象
年金受け取りの税金制度により異なる公的年金等控除の対象公的年金等控除の対象

退職金と確定拠出年金を同じタイミングで一時金として受け取る場合、退職所得控除の扱いが重要になります。同じ年に複数の退職金を受け取る場合や、過去に退職金を受け取ったことがある場合は、控除額の計算が変わることがあります。

退職金の計算方法や支払い時期

退職金の計算方法や支払い時期を確認するイメージ

退職金の金額や支払い時期は、会社の制度によって大きく異なります。

ここでは、一般的な退職金の平均額、計算方法、支払い時期、税金の注意点を整理します。

退職金はいくらもらえる?平均額の目安

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、退職給付制度がある企業における勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は、以下の通りです。

学歴・職種定年退職時の平均退職給付額
大学・大学院卒
管理・事務・技術職
1,896万円
高校卒
管理・事務・技術職
1,682万円
高校卒
現業職
1,183万円

この金額には、退職一時金だけでなく、退職年金制度の年金現価額を含む場合があります。

制度の形態別に見ると、大学・大学院卒の定年退職者では、退職一時金制度のみが1,623万円、退職年金制度のみが1,801万円、両制度併用が2,261万円です。

ただし、これは民間企業全体の参考値です。実際の金額は、勤務先の退職金規程、勤続年数、役職、退職理由、企業型DCやDBの有無によって変わります。

退職金の計算方法

退職金の計算方法には、基本給連動型、定額方式、別テーブル方式、ポイント制方式などがあります。

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計算方法仕組み確認ポイント
基本給連動型退職時の基本給に勤続年数や支給率を掛けて計算する基本給、勤続年数、退職理由別支給率
定額方式勤続年数ごとにあらかじめ退職金額を定める勤続年数別の支給表
別テーブル方式基本給とは別に、役職や等級ごとの表で計算する役職、等級、退職理由
ポイント制方式勤続年数、役職、評価などをポイント化して計算する付与ポイント、単価、支給率
企業年金・DC併用退職一時金に加えてDBや企業型DCを組み合わせる一時金額、年金見込み額、DC資産残高

基本給連動型の場合、次のような計算式が使われることがあります。

退職金 = 退職時の基本給 × 勤続年数に応じた支給係数 × 退職理由別係数

たとえば、退職時の基本給が35万円、支給係数が30、定年退職の係数が1.0であれば、退職金は1,050万円です。

ただし、実際には自己都合退職で支給率が下がったり、役職加算があったり、企業型DC部分が別管理になっていたりします。正確な金額は、勤務先の退職金規程と企業年金の資料で確認しましょう。

退職金の支払い時期

退職金の支払い時期は、法律で一律に決まっているわけではありません。

退職金制度を設けている会社では、退職金規程や就業規則に支払い時期が定められています。退職後1〜2か月程度で支払われるケースもありますが、会社ごとに異なるため、退職前に確認が必要です。

また、企業型DCやDBを年金形式で受け取る場合は、退職時にすぐ全額を受け取るとは限りません。受給開始時期、手続き期限、移換手続きの有無も確認しておきましょう。

税金や手続きに関する注意点

退職金を一時金で受け取る場合は、退職所得として所得税・復興特別所得税・住民税の対象になります。

ただし、退職所得控除があるため、退職金の全額に税金がかかるわけではありません。

課税退職所得金額 =(退職金額 − 退職所得控除額)× 1/2
※1,000円未満は切り捨て

勤続年数が20年以下の場合:
40万円 × 勤続年数
※80万円未満の場合は80万円

勤続年数が20年超の場合:
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

たとえば、勤続25年で1,500万円の退職金を受け取った場合は、以下のように概算できます。

1.退職所得控除額
800万円 + 70万円 ×(25年 − 20年)= 1,150万円

2.課税退職所得金額
(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円

3.所得税・復興特別所得税の概算
175万円 × 5% × 102.1% = 約8万9,000円

4.住民税の概算
175万円 × 10% = 17万5,000円

税額の概算
約26万4,000円

勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、退職所得控除を反映した税額で源泉徴収されるため、原則として退職金だけを理由に確定申告する必要はありません。

一方、申告書を提出していない場合は、退職金等の支払金額に対して20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算する必要があります。

また、企業型DCやiDeCoを一時金で受け取る場合も退職所得控除の対象になります。退職金と同じ年に受け取る場合や、過去に退職金を受け取ったことがある場合は、控除額の計算が異なることがあるため注意しましょう。

確定拠出年金や退職金の効果的な活用方法

確定拠出年金や退職金の活用方法を考えるイメージ

確定拠出年金や退職金は、退職後の生活を支える重要な資金です。

まとまった金額を受け取ると、投資や住宅ローン返済、リフォームなどに使いたくなるかもしれません。しかし、退職後の生活費や医療費、介護費なども考えると、すぐに大きく使うのは慎重に判断すべきです。

ここでは、確定拠出年金や退職金を活用するための基本的な考え方を紹介します。

確定拠出年金の運用戦略

確定拠出年金では、加入者自身が運用商品を選びます。選択肢には、元本確保型の預貯金・保険商品と、元本変動型の投資信託などがあります。

若い世代であれば、退職までの期間が長いため、株式を含む投資信託を活用して長期・積立・分散投資を行う選択肢があります。一方で、退職が近い世代は、値動きの大きい資産を持ちすぎると、受け取り直前の相場下落で不安が大きくなります。

年齢だけで決めるのではなく、以下の点を確認して運用商品を選びましょう。

  • 退職まで何年あるか
  • 退職後すぐに使う予定があるか
  • 価格変動にどの程度耐えられるか
  • 退職金や公的年金など、他の収入源があるか
  • 元本確保型と投資信託の比率が偏りすぎていないか

企業型DCでは、運用状況を定期的に確認できます。長期間見直していない場合は、資産配分が現在の年齢や目的に合っているか確認しましょう。

また、転職・退職時には、企業型DCの資産をiDeCoや転職先の企業型DCへ移換する手続きが必要になる場合があります。放置すると自動移換となり、手数料や運用機会の面で不利になることがあるため注意が必要です。

退職金の活用方法

退職金は、まず「使うお金」「守るお金」「運用するお金」に分けて考えると判断しやすくなります。

  • 使うお金
    退職直後の生活費、住宅ローン返済、リフォーム、引っ越し、教育費など、数年以内に使う予定のある資金
  • 守るお金
    医療費、介護費、家族支援、住宅修繕、収入減に備える緊急資金
  • 運用するお金
    当面使う予定がなく、長期で資産寿命を延ばすために活用できる資金

退職金をすべて預貯金に置くと、物価上昇によって実質的な価値が下がる可能性があります。一方で、生活費まで投資に回すと、相場下落時に必要な資金を取り崩しにくくなります。

運用に回す資金については、NISAの活用も選択肢です。2024年以降のNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用ができ、年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円です。

ただし、NISAで投資信託や株式に投資する場合は、元本割れのリスクがあります。退職金を運用する際は、無理に高いリターンを狙うよりも、生活資金を守りながら長期で運用できる範囲を決めることが大切です。

確定拠出年金・iDeCoの受け取り方を確認する

確定拠出年金やiDeCoは、一時金、年金、または一時金と年金の併用で受け取れる場合があります。

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受け取り方税金の扱い確認ポイント
一時金退職所得控除の対象退職金と同じ年に受け取る場合、控除額の計算に注意
年金公的年金等控除の対象公的年金や企業年金と合算して所得を確認
併用一時金部分と年金部分で税金の扱いが分かれる手取り額と生活費の管理しやすさを比較

一時金で受け取ると退職所得控除を使いやすい一方、退職金と重なると控除額の調整が必要になる場合があります。年金で受け取ると収入を分散できますが、公的年金等の雑所得として課税されるため、所得税や住民税、社会保険料への影響も確認が必要です。

どちらが有利かは、退職金額、DC資産残高、勤続年数、他の年金収入、家計状況によって異なります。退職前にシミュレーションしておきましょう。

リスクとリターンのバランスを考慮する

投資には、預貯金より高いリターンを期待できる一方で、元本割れのリスクがあります。

金融商品は、安全性、収益性、流動性のバランスで見ることが大切です。3つをすべて高い水準で満たす商品はありません。

退職金や確定拠出年金の運用では、以下の順番で考えると無理のない方針を立てやすくなります。

  1. 退職後の生活費を把握する
    毎月の支出、年金額、再雇用収入、住宅ローンなどを整理します。
  2. 当面使うお金を分ける
    数年以内に使う予定がある資金は、値動きの大きい商品に回しすぎないようにします。
  3. 長期で運用できる金額を決める
    余裕資金の範囲で、NISAや投資信託などを検討します。
  4. 定期的に見直す
    年齢、家計、相場環境、医療・介護費の見通しが変わったら、資産配分も見直します。

商品選びが難しい場合は、お金の専門家に相談するのも選択肢です。ただし、相談先の提案をそのまま受け入れるのではなく、手数料やリスクを理解したうえで判断しましょう。

専門家に相談して最適なプランを立てよう

退職金や確定拠出年金について専門家に相談するイメージ

退職金や確定拠出年金は、老後の生活設計に大きく関わる資金です。

受け取り方、税金、運用方法、取り崩し方に迷う場合は、専門家に相談して資金計画を整理するのもよいでしょう。

IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)とは

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、日本語では独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれます。

IFAは金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやリスク許容度に応じて、金融商品の提案や売買取引の支援を行います。

退職金運用、NISAやiDeCoの活用、資産配分の見直し、退職後のキャッシュフロー整理などを相談できる場合があります。

IFAのメリットと相談内容

IFAに相談するメリットは、退職金だけでなく、年金、家計、保険、住宅ローン、相続、資産運用を含めて、長期的な資金計画を整理しやすい点です。

たとえば、以下のような内容を相談できます。

  • 退職金の使い道の整理
    生活資金、緊急資金、運用資金に分ける
  • 確定拠出年金の受け取り方
    一時金、年金、併用の違いを確認する
  • NISA・iDeCoの活用
    非課税制度を使った長期運用を検討する
  • 資産配分の見直し
    預貯金、投資信託、債券、株式、保険などのバランスを確認する
  • 退職後のキャッシュフロー作成
    年金、退職金、生活費、医療・介護費を見える化する

ただし、IFAに相談すれば必ず最適な運用ができるわけではありません。相談先によって、提携金融機関、取扱商品、手数料、提案方針が異なります。

IFAを活用する前に確認したいこと

IFAに相談する場合は、以下の点を確認しておきましょう。

  1. 金融商品仲介業者として登録されているか
    金融庁の登録業者一覧などで確認できます。
  2. 提携している金融機関はどこか
    提携先によって、提案できる商品や手数料体系が変わります。
  3. 手数料や報酬の仕組み
    相談料、販売手数料、信託報酬、継続的な管理費用を確認しましょう。
  4. リスク説明が十分か
    メリットだけでなく、元本割れや価格変動リスクについて丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。
  5. 税務は専門家と連携できるか
    個別具体的な税務判断や確定申告は税理士の専門領域です。

退職金や確定拠出年金は、退職後の生活を支える大切な資金です。提案された商品をそのまま選ぶのではなく、自分の生活設計に合っているかを確認してから判断しましょう。

必要に応じて、以下ボタンから相談先を確認してみてください。

まとめ

確定拠出年金と退職金は、どちらも退職後の生活資金に関係する制度ですが、仕組みは異なります。

退職一時金は会社の退職金規程に基づいて支給されるお金です。一方、企業型DCやiDeCoは、掛金と運用成果によって将来の給付額が決まる年金制度です。

退職金の平均額は、大学・大学院卒の定年退職者で1,896万円、高校卒の定年退職者で1,682万円が参考値ですが、実際の金額は勤務先の制度や勤続年数、退職理由によって変わります。

退職金や確定拠出年金を受け取る際は、一時金・年金・併用の違い、退職所得控除、公的年金等控除、確定申告の要否を確認しましょう。

受け取った資金は、使うお金・守るお金・運用するお金に分け、生活資金までリスク資産に回しすぎないことが大切です。

自分だけで判断するのが難しい場合は、IFAなどの専門家に相談するのも選択肢です。ただし、登録状況、手数料、提携金融機関、リスク説明を確認したうえで利用しましょう。

出典

厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
厚生労働省「iDeCoの概要」
厚生労働省「2025年の制度改正」
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態」(公開日:2023年10月31日)
厚生労働省「モデル就業規則について」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2260 所得税の税率」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(公開日:2025年4月1日)
横浜市「退職所得の課税の特例」(公開日:2026年5月1日)
金融庁「NISAを知る」
金融庁「資産形成の基本」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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