退職金を受け取ったあと、まず候補に上がりやすい運用方法が定期預金だ。普通預金より高い金利が設定される場合があり、満期まで預ければ利息の見込みも立てやすい。
特に金融機関によっては、退職金を対象にした金利優遇プランを用意している。まとまった退職金を「すぐに投資へ回すのは不安」「当面は安全性を重視したい」と考える人にとって、定期預金は検討しやすい選択肢といえる。
ただし、退職金向けの優遇金利は「当初3か月だけ」「店頭限定」「退職金を受け取ってから一定期間内」「投資信託やファンドラップとの同時申込が条件」など、通常の定期預金とは異なる条件が付くことが多い。
高い金利だけを見て選ぶと、実際の利息額や運用商品のリスクを見落とす可能性がある。
本記事では、退職金運用における定期預金の活用方法、メリット・デメリット、定期預金以外の選択肢を整理する。
退職金を安全に守りながら、必要に応じて増やす方法を検討したい方は参考にしてほしい。
退職金運用に定期預金を活用する|高金利でも「3か月だけ」に注意
定期預金は退職金のすべてを預ける商品というより、退職金の一部を安全性の高い場所に置くための商品として活用しやすい。
ここでは、退職金向け定期預金を選ぶときに確認したい預入期間、金利、預金保険制度、他の金融商品との組み合わせについて解説する。
預金期間と金利を比較する|退職金優遇は条件まで確認する
定期預金は、あらかじめ決めた期間だけ資金を預け入れる商品だ。満期前に資金を使いたくなった場合は中途解約が必要になり、当初の金利ではなく中途解約利率が適用されることがある。
退職金を定期預金に預けるときは、金利の高さだけでなく「いつ使う予定のお金か」「満期後にどうするか」を先に決めておきたい。
主な銀行の退職金向け定期預金・セットプランの例は以下の通りだ。
| 金融機関 | 金利の例 | 主な条件・注意点 |
|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 3か月物 年2.2% 税引後 年1.753% | 退職金円定期金利優遇プラン エクセレント倶楽部会員、退職金受取から3年以内、1,000万円以上5,000万円以下が主な条件 窓口限定で、優遇金利は当初3か月のみ |
| 三井住友銀行 | 3か月物 年3.5% 条件達成で最大 年4.7% | 資産づくりセット 対象運用商品の申込から1か月以内の定期預金が対象 退職金等は受取から3年以内 投資信託・ファンドラップ等との組み合わせが前提となる |
| みずほ銀行 | 3か月物 年2.0% 条件達成で最大 年2.2% | 退職金特別金利円定期預金 直近3年以内に退職金を受け取り、直近3か月以内にみずほ銀行へ入金した資金が対象 最低取扱金額は1,000万円 |
| りそな銀行 | 定期預金コース 年2.5% 投資商品同時申込では年4.0%または年8.0%の退職金コースもある | 定期預金コースは、りそなグループアプリ利用者などが対象 投資商品同時申込の退職金コースは、投資信託・ファンドラップが申込総額の50%以上などの条件がある |
退職金向け定期預金の金利は年利で表示される。たとえば、3か月物年2.2%の定期預金に1,000万円を90日預けた場合、税引後の利息は約43,226円となる。
「年2.2%」と聞くと1年分の利息を想像しやすいが、実際には預入期間に応じて日割りで計算される。さらに利息には20.315%の税金がかかるため、金利だけでなく実際の受取利息で比較することが大切だ。
また、投資商品とのセットプランでは、定期預金部分の金利が高く見えやすい。一方で、同時に購入する投資信託やファンドラップには価格変動リスクや手数料がある。定期預金の金利だけで判断せず、商品全体のリスクと費用を確認したい。
預金保険制度とは|1金融機関ごとに元本1,000万円と利息等を保護
預金保険制度とは、万が一金融機関が破綻した場合に、一定範囲の預金を保護する制度だ。ペイオフ制度とも呼ばれる。
定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息等が保護される。
1,000万円を超える部分とその利息等は、破綻した金融機関の財産状況に応じて支払われるため、一部カットされる可能性がある。
退職金は金額が大きくなりやすい。1つの金融機関に1,000万円を超えて預ける場合は、預金保険の範囲を理解した上で、複数の金融機関に分けるかどうかも検討したい。
定期預金だけに集中しない|退職金は目的別に分けて管理する
定期預金は元本と利息の見通しが立てやすく、安全性を重視したい資金の置き場所として使いやすい。
一方で、定期預金だけで退職後の資産全体を大きく増やすのは難しい。物価が上がる局面では、預金残高が減らなくても、同じ金額で買えるものが少なくなるインフレリスクもある。
そのため、退職金は「すぐ使うお金」「数年以内に使うお金」「当面使わないお金」に分けて考えると管理しやすい。定期預金は、数年以内に使う予定があるお金の保管先として特に活用しやすい。
定期預金のメリット・デメリット|退職金の一部保管に向いている
ここでは、定期預金の基本的な仕組みと、退職金運用で使うときのメリット・デメリットを整理する。
定期預金の基本的な仕組み
定期預金は、預入期間を決めてお金を預け、満期時に元本と利息を受け取る預金商品だ。原則として満期まで引き出せないため、使う予定の時期に合わせて期間を選ぶ必要がある。
代表的な定期預金には、以下のような種類がある。
- 定期預金
1か月、3か月、1年など、決められた期間から選んで預け入れる - 期日指定定期預金
一定期間が経過したあと、利用者が満期日を指定できるタイプ - 積立定期預金
毎月決まった金額を積み立て、将来の目的資金を準備するタイプ - 大口定期預金
一般的に1,000万円以上など、まとまった金額を一括で預け入れるタイプ
退職金のようにまとまった資金を預ける場合は、大口定期預金や退職金向けの特別プランが候補になりやすい。ただし、金融機関ごとに対象者や預入金額、受付期間が異なるため、事前確認が欠かせない。
定期預金のメリット:利息の見通しが立てやすく、使う予定のお金を分けやすい
定期預金のメリットは、満期まで預けた場合の利息を事前に見込みやすい点だ。投資信託や株式のように日々価格が大きく変動する商品ではないため、退職金のうち守りたい資金を置く場所として利用しやすい。
また、預入期間を決めることで、将来使う予定のお金を分けて管理できる。たとえば、住宅リフォーム費用、車の買い替え費用、医療・介護費用、子どもや孫への援助資金など、数か月から数年後に使う可能性がある資金は定期預金と相性がよい。
退職金専用の定期預金では、通常の店頭金利より高い優遇金利が設定されることもある。条件に合うプランがあれば、普通預金に置いたままにするより利息を得やすい。
定期預金のデメリット:優遇金利は短期間が多く、インフレには弱い
定期預金のデメリットは、投資性のある金融商品と比べて大きなリターンを期待しにくい点だ。
退職金向けの優遇金利は高く見えるが、当初3か月のみ適用されるケースが多い。満期後は通常の店頭金利で自動継続されることがあるため、満期後の使い道や預け替え先を事前に考えておきたい。
また、預入期間中に資金が必要になった場合は中途解約が必要になる。中途解約をすると、当初の優遇金利が適用されず、低い中途解約利率になることがある。
さらに、インフレリスクにも注意したい。物価が上がると、預金残高は減らなくても実質的な購買力は下がる。退職金のすべてを定期預金に置くのではなく、生活費や使う予定のある資金を確保したうえで、余裕資金の運用も検討することが大切だ。
退職金の効果的な運用方法とは?|最初に資金を3つに分ける
定期預金のメリットとデメリットを押さえた上で、退職金全体の運用方法を考えていこう。
退職金を運用する目的と考慮すべきポイント
退職金の運用では、「資産を守るお金」と「増やすことを目指すお金」を分けて考えることが重要だ。
金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書では、夫65歳以上・妻60歳以上の無職夫婦世帯で毎月約5万円の不足が発生する場合、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になると示されている。
ただし、これは平均的な収入・支出をもとにした単純計算であり、すべての人に2,000万円が不足するという意味ではない。実際に必要な老後資金は、年金額、退職金額、住居費、医療・介護費、家族構成、働き方によって大きく異なる。
そのため、退職金を受け取ったら、まず次の3つに分けて管理すると考えやすい。
- 日々の生活費:普通預金など、すぐ使える形で確保する
- 数年以内に使う予定のお金:定期預金など、使う時期に合わせて保管する
- 当面使う予定のない余裕資金:リスク許容度に応じて、投資信託・債券・株式などの運用を検討する
退職金を一括で1つの商品に預けるのではなく、目的別に分けることで、必要なときに使える資金と長期運用できる資金を整理しやすくなる。
運用商品のリスクとリターンを理解する
運用商品にはリスクとリターンがある。リスクとは、単に「損をすること」ではなく、価格や収益がどの程度ぶれるかを表す考え方だ。
一般的に、高いリターンを期待する商品ほど価格変動も大きくなりやすい。株式や投資信託は定期預金よりリターンを期待できる一方、元本割れする可能性もある。
退職金は老後の生活資金に直結するため、全額を高リスク商品に回すのは避けたい。生活費と使う予定のある資金を確保したうえで、当面使わない余裕資金の範囲でリスクを取るのが基本だ。
運用期間や資産の分散でリスクを管理する
リスクを抑えながら運用を考えるなら、長期投資と分散投資を意識したい。
長期投資は、短期的な価格変動の影響をならしやすい。分散投資は、定期預金、債券、投資信託、株式など複数の商品や地域に資金を分けることで、特定の商品に集中するリスクを抑える考え方だ。
ただし、長期・分散投資をすれば必ず利益が出るわけではない。元本割れを防ぐ保証ではないため、自分の年齢、収入、支出、取り崩し予定、リスク許容度に合わせて運用割合を決める必要がある。
どのような組み合わせが適切か迷う場合は、お金の専門家に相談し、退職後の生活設計に合わせて運用方針を整理する方法もある。
IFAに相談して退職金運用の選択肢を整理する
IFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザーのことだ。金融商品仲介業者として、証券会社などの金融機関と業務委託契約を結び、資産形成に関する提案や金融商品の売買の媒介を行う。
銀行や証券会社の担当者に相談する方法もあるが、退職金全体の使い道や長期的な資産管理を整理したい場合は、IFAへの相談も選択肢になる。
IFAの役割と相談前に確認したいこと
IFAは、顧客のライフプランや資産状況、リスク許容度に合わせて、資産配分や金融商品の選択肢を提案する。
特定の金融機関の営業方針から独立した立場で相談しやすい点が特徴だが、提携している金融機関や報酬体系によって提案できる商品や費用は異なる。
相談する際は、以下を確認しておくと安心だ。
- 金融商品仲介業者として登録されているか
- どの金融機関と提携しているか
- 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用がどのように発生するか
- 退職金運用や老後資金の相談実績があるか
IFAによる退職金運用の整理プロセス
退職金は金額が大きいため、なんとなく定期預金に入れる、または一気に投資するのではなく、資産全体の中で役割を決めることが大切だ。
IFAに相談する場合は、まず預貯金、投資信託、株式、保険、不動産、住宅ローンなどの資産・負債を整理する。そのうえで、生活費、医療・介護費、相続、住み替え、旅行、趣味など、退職後にどのようなお金が必要になるかを確認する。
その情報をもとに、定期預金で守る資金、投資で増やすことを目指す資金、いつでも使える資金の割合を検討する流れになる。
IFAと共に考える定期預金以外の選択肢
定期預金は退職金運用の重要な選択肢だが、すべての資金を定期預金に入れる必要はない。
当面使う予定のない資金については、投資信託、債券、株式、NISAの活用なども検討できる。ただし、どの商品が適しているかは、年齢、資産額、収入、支出、相続方針、リスク許容度によって異なる。
退職金の運用では、「どの商品が一番よいか」よりも「どの資金を、どの目的で、どの期間運用するか」を明確にすることが重要だ。専門家の意見を取り入れることで、自分だけでは気づきにくいリスクや費用も確認しやすくなる。
定期預金との組み合わせで退職金運用を考えよう
本記事では、退職金運用における定期預金の活用方法、メリット・デメリット、定期預金以外の選択肢を解説した。
定期預金は、退職金のうち安全性を重視したい資金や、数か月から数年以内に使う予定のある資金の保管先として使いやすい。
一方で、退職金向けの優遇金利は短期間に限られることが多く、定期預金だけで老後資金全体を増やすには限界がある。投資商品とのセットプランを利用する場合は、定期預金部分の金利だけでなく、同時に購入する商品のリスクや手数料も確認しなければならない。
退職金運用では、まず資金を「生活費」「使う予定のあるお金」「当面使わない余裕資金」に分けることが大切だ。そのうえで、定期預金、普通預金、投資信託、債券、株式などを目的に応じて組み合わせるとよい。
商品単体の良し悪しではなく、自分の生活設計に合う組み合わせを考えることが、退職金を長く活かすためのポイントとなる。
退職金の預け先や投資割合を自分だけで判断しづらい場合は、IFAなどの専門家に相談しながら、資産全体の方針を整理する方法もある。
まずは以下ボタンからIFAへの無料相談を申し込み、定期預金を含めた退職金運用の方法を比較してみてはいかがだろうか。
出典
三菱UFJ銀行「退職金円定期金利優遇プラン」
三井住友銀行「『資産づくりセット』改定のお知らせ」
みずほ銀行「退職金特別金利円定期預金」
りそな銀行「退職金コース(りそなの資金運用プラン)」
りそな銀行「年2.5%の特別金利 退職金・相続資金向け定期預金」
一般社団法人 全国銀行協会「目的に応じて使い分けたい7つの銀行預金」
金融庁「預金保険制度(ペイオフとは?)」
金融庁 金融審議会「市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」(公開日:2019年6月3日)
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」

