確定拠出年金と退職金は両方もらえる?受け取り方・税金の注意点を解説

老後資金を考えるときに気になるのが、確定拠出年金退職金の受け取り方だ。

企業型DCに加入している人の中には、「退職金とは別にもらえるのか」「同じ年に受け取ると税金が増えるのか」「一時金と年金のどちらを選ぶべきか」と迷う人も多いだろう。

結論からいえば、勤務先に退職一時金や企業年金制度が別にあり、本人がその支給条件を満たしていれば、確定拠出年金と退職金の両方を受け取れる場合がある。

ただし、企業型DCが退職給付制度の全部または一部として導入されている場合、従来の退職金が減額・廃止されているケースもある。そのため「確定拠出年金に加入しているから退職金も必ず別にもらえる」と考えるのは早計だ。

また、確定拠出年金を一時金で受け取る場合と、勤務先の退職金を受け取る場合は、退職所得控除の重複期間調整にも注意が必要である。受け取り方やタイミングによって手取り額が変わることがあるため、退職前から確認しておきたい。

この記事では、確定拠出年金と退職金の違い、両方受け取れるケース、受け取り方法、税金の注意点、退職後の資産管理の考え方を解説する。

目次

確定拠出年金と退職金の基本を理解しよう

確定拠出年金と退職金は、どちらも退職後の生活資金に関わる制度だが、仕組みは異なる。

確定拠出年金は、掛金を拠出して加入者本人が運用商品を選び、運用結果によって将来の受取額が変わる制度である。一方、退職金は、勤務先の退職金規程などに基づいて退職時に支給される給付である。

まずは、それぞれの仕組みを確認しておこう。

確定拠出年金の仕組みと受け取り方法

確定拠出年金は、あらかじめ拠出する掛金額が決まり、将来受け取る金額は運用結果によって変わる年金制度である。

確定拠出年金には、主に次の2種類がある。

  • 企業型DC:勤務先が制度を導入し、原則として会社が掛金を拠出する制度
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo):個人が自分で掛金を拠出し、自分で運用する制度

企業型DCでは、勤務先が拠出する掛金をもとに、加入者本人が運用商品を選ぶ。制度によっては、会社の掛金に加えて本人が掛金を上乗せする「マッチング拠出」を利用できる。

企業年金連合会の2024年度調査では、マッチング拠出を導入している企業割合は52.4%だった。ただし、これは「導入している企業」の割合であり、加入者全員が実際に上乗せ拠出しているという意味ではない。

確定拠出年金の老齢給付金は、原則60歳に到達すると受給できる。ただし、60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が次のように段階的に遅くなる。

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通算加入者等期間受給開始年齢
8年以上10年未満61歳から
6年以上8年未満62歳から
4年以上6年未満63歳から
2年以上4年未満64歳から
1か月以上2年未満65歳から

受給開始時期の上限は、2022年4月から70歳から75歳に引き上げられた。現在は、要件を満たせば60歳以降75歳までの間で受給開始時期を選べる。

受け取り方は、年金、一時金、年金と一時金の併用が基本だ。ただし、一時金を選べるかどうかや具体的な受取方法は、企業型DCの規約やiDeCoの運営管理機関の取り扱いによって異なる。

退職金の仕組みと受け取り方法

退職金は、勤務先の退職金規程や企業年金規約などに基づいて支給される給付である。

退職金制度は、法律上すべての会社に義務付けられているものではない。退職金制度を設けるかどうか、支給対象者、計算方法、受け取り方法、支払時期は、勤務先の制度によって異なる。

東京都の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」では、都内従業員10〜299人の中小企業を対象とした調査で、退職金制度がある企業割合は64.2%とされている。これは東京都の中小企業調査であり、全国すべての企業の割合ではないが、退職金制度がない企業も一定数あることを示す参考データになる。

退職金の主な受け取り方法は次の通りだ。

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受け取り方法特徴
退職一時金退職時にまとまったお金として一括で受け取る
退職年金退職後に一定期間または終身で分割して受け取る
一時金と年金の併用一部を一時金、残りを年金として受け取る
前払い退職金在職中の給与や賞与に上乗せして受け取る

どの方法を選べるかは勤務先の制度によって異なる。退職前に、就業規則、退職金規程、企業年金規約、退職給付制度の説明資料を確認しておこう。

確定拠出年金と退職金の違い

確定拠出年金と退職金の違いは、掛金・運用・受取額の決まり方にある。

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個人型確定拠出年金(iDeCo)企業型DC退職金
掛金・原資個人が拠出会社が拠出
※マッチング拠出がある場合は本人も上乗せ可能
会社が制度に基づいて準備・支給
運用する人本人本人会社または制度運営者
受取額掛金と運用結果で変わる掛金と運用結果で変わる退職金規程や企業年金規約で決まる
受け取り方法年金・一時金・併用年金・一時金・併用一時金・年金・併用・前払いなど
主な税制一時金は退職所得、年金は公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある一時金は退職所得、年金は公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある一時金は退職所得、年金は公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある

退職金は勤務先の制度によって決まり、確定拠出年金は本人の運用結果で受取額が変わる。この違いを理解しておくと、退職前の資金計画を立てやすくなる。

確定拠出年金と退職金は両方受け取れる?受け取り方法を比較

確定拠出年金と退職金を両方受け取れるかどうかは、勤務先の制度によって決まる。

たとえば、勤務先に退職一時金制度があり、さらに企業型DCにも加入している場合は、条件を満たせば両方を受け取れることがある。

一方で、企業型DCが退職給付制度の全部として導入されている場合、会社から別途退職一時金が支払われないケースもある。企業年金連合会の2024年度調査では、企業型DCを「退職給付制度の全部または一部として実施している」企業割合は69.9%だった。

つまり、確認すべきなのは「確定拠出年金に加入しているか」だけではない。退職一時金、確定給付企業年金、企業型DC、前払い退職金など、自社の退職給付制度全体を確認することが重要だ。

確定拠出年金の受け取り方法

確定拠出年金の老齢給付金は、年金、一時金、年金と一時金の併用で受け取るのが基本である。

受け取り方法特徴税金の扱い
年金一定期間に分割して受け取る公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある
一時金一括で受け取る退職所得として扱われる
年金と一時金の併用一部を一時金、残りを年金で受け取る一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得として扱われる場合がある

一時金を選ぶと、退職所得控除を利用できる。一方、年金形式で受け取る場合は、毎年の所得として公的年金等控除の対象になる場合がある。

どちらが有利かは、DC資産額、退職金額、公的年金の見込み額、他の所得、健康保険料への影響によって変わる。

退職金の受け取り方法

退職金の受け取り方法は、勤務先の退職給付制度で定められる。

一時金で受け取る場合は、まとまった資金を確保しやすい。住宅ローン返済、退職直後の生活費、医療・介護費への備えなどに使いやすい点がメリットだ。

年金で受け取る場合は、定期収入として生活費に組み込みやすい。一方で、毎年の所得に含まれるため、公的年金や他の所得との合算によって税金や保険料に影響する場合がある。

一時金と年金を併用できる場合は、短期で使う資金を一時金で確保し、残りを年金で受け取る方法も考えられる。

同じ年に受け取る場合は退職所得の合算に注意する

確定拠出年金を一時金で受け取り、同じ年に勤務先の退職金も受け取る場合、どちらも退職所得として扱われる。

国税庁は、同じ年にすでに他の会社などから退職手当等を支払われている場合、他の支払者が支払った退職手当等も含めて源泉徴収税額を計算する必要があると案内している。

つまり、同じ年にDC一時金と退職金を受け取ると、それぞれに退職所得控除を別々に満額使えるわけではない。退職所得控除の計算や源泉徴収が複雑になるため、勤務先や運営管理機関、税務署、税理士に確認しよう。

別の年に受け取る場合も退職所得控除の調整に注意する

退職金とDC一時金を別の年に受け取る場合でも、一定期間内に複数の退職手当等を受け取ると、退職所得控除額の計算で重複期間の調整が入ることがある。

主な注意点は次の通りだ。

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受け取り順注意点
DC一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取る2026年1月1日以後にDC一時金を受け取っている場合、退職金を受け取る年の前年以前9年内にDC一時金等があると、退職所得控除の重複期間調整の対象になる場合がある
退職金を先に受け取り、その後にDC一時金を受け取るDC一時金を受け取る年の前年以前19年内に退職手当等を受け取っている場合、重複期間調整の対象になる場合がある
同じ年に受け取る同じ年の退職手当等として合算して計算されるため、支払者への申告書や源泉徴収票の提出が重要になる

この調整は「数年ずらせば必ず税金が安くなる」と単純に判断できるものではない。加入期間、勤続年数、退職金額、DC資産額、受け取り順によって結果が変わる。

退職金とDC一時金の両方を受け取る予定がある人は、退職前に受け取り時期のシミュレーションをしておこう。

最適な受け取り方を見極めるためのポイント

確定拠出年金と退職金の受け取り方は、税金だけで決めるべきではない。

退職直後に必要な生活費、住宅ローン、医療費、介護費、公的年金の受給時期、働き続ける予定なども含めて考える必要がある。

最適な選択を見極めるポイント
  • 退職所得控除と公的年金等控除の違い
  • 一時金で必要な金額と年金で受け取りたい金額
  • 退職後の生活費・税金・健康保険料
  • 運用リスクと換金しやすさ

税金や手続きの観点から考慮すべきこと

確定拠出年金と退職金は、受け取り方によって税金の扱いが変わる。

【受け取り方別|確定拠出年金と退職金の税金】

  • 一時金で受け取る:退職所得
  • 年金で受け取る:公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある

退職所得には、勤続年数や加入期間に応じた退職所得控除がある。一般的な退職所得の金額は次の式で計算される。

退職所得の金額=(収入金額−退職所得控除額)×1/2

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勤続年数・加入期間退職所得控除額
20年以下40万円×年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(年数−20年)

ただし、短期退職手当等や特定役員退職手当等に該当する場合、2分の1計算の扱いが変わることがある。

また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金等の支給額に20.42%を乗じた所得税および復興特別所得税が源泉徴収される。この場合は、確定申告で精算する必要がある。

退職金やDC一時金を受け取る前には、勤務先や運営管理機関に必要書類を確認しよう。

ライフスタイルや将来設計に合わせた選択

退職金や確定拠出年金の受け取り方は、将来の生活設計に合わせて選ぶことが大切だ。

退職直後に住宅ローン返済や生活費の補てんが必要な人は、一時金の必要性が高い。一方、毎月の生活費を安定させたい人は、年金形式での受け取りが向いている場合もある。

ただし、年金形式で受け取る場合は、公的年金や給与収入などと合算され、所得税・住民税・国民健康保険料などに影響することがある。

受け取り方を決める前に、次の項目を整理しておこう。

  • 退職金の見込み額
  • 確定拠出年金の資産額
  • 公的年金の受給開始時期と見込み額
  • 退職後の毎月の生活費
  • 住宅ローンや借入金の残高
  • 医療費・介護費・住宅修繕費など将来の支出
  • 退職後も働く予定があるか

資産運用の観点から考慮すべきこと

退職金や確定拠出年金を受け取った後は、すぐに全額を運用に回すのではなく、使う時期ごとに分けて管理することが重要だ。

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資金の区分主な使い道管理方法の例
短期資金退職直後の生活費、税金、健康保険料、引っ越し費用など普通預金など換金しやすい形で管理
中期資金住宅修繕費、医療費、介護費、家族への支援など定期預金、個人向け国債など安全性を重視
長期資金老後後半の生活費、資産形成、相続対策など余裕資金の範囲でNISAや投資信託などを検討

2024年からのNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になり、非課税保有限度額は最大1,800万円となった。

ただし、NISAは税制優遇のある投資制度であり、元本保証ではない。投資信託や株式には値下がりリスクがあるため、退職金のうち生活費として必要な資金まで投資に回さないようにしよう。

確定拠出年金を受給開始まで運用し続ける場合も、運用商品によって資産額が変動する。受け取り直前に大きく値下がりするリスクを避けるため、年齢や受給予定時期に合わせて運用配分を見直すことも大切だ。

確定拠出年金や退職金の相談は誰にするべきか

確定拠出年金と退職金の受け取り方は、制度・税金・家計・運用の論点が重なるため、一人で判断しにくい場合がある。

相談先は、悩みの内容に応じて使い分けよう。

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相談したい内容主な相談先確認できること
退職金制度・企業型DCの規約勤務先の人事・総務、企業年金担当部署退職給付制度の有無、受け取り方法、必要書類、支給予定日
確定拠出年金の受け取り手続き運営管理機関、記録関連運営管理機関受給開始年齢、年金・一時金・併用の可否、手続き期限
税金税務署、税理士退職所得控除、重複期間調整、確定申告、住民税
退職後の生活設計FP、J-FLEC認定アドバイザーなど家計管理、生活設計、公的年金、NISA・iDeCoなどの資産形成
資産運用IFA、金融機関、FPなど資産配分、金融商品の選択肢、リスクと手数料

J-FLECでは、家計管理や生活設計、NISAやiDeCoといった資産形成について無料体験相談や電話相談を提供している。ただし、無料体験や電話相談では、個別の金融商品・サービスについて提案や推奨はできない。

具体的な金融商品の提案まで受けたい場合は、IFAや金融機関、FPなどに相談する選択肢がある。ただし、相談範囲や報酬体系は相談先によって異なるため、事前確認が必要だ。

IFAに相談する場合の確認ポイント

IFAは、一般に独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれる。金融商品仲介業者として活動するIFAは、証券会社や登録金融機関の委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行う。

退職金や確定拠出年金の運用相談では、生活費として残す金額、運用に回す金額、NISAや投資信託などの使い方、資産配分について相談できる場合がある。

一方で、IFAが扱える商品や報酬体系は、所属先や提携金融機関によって異なる。相談前には、次の点を確認しよう。

  • 金融商品仲介業者として登録されているか
  • 提携している証券会社・金融機関はどこか
  • 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用はいくらか
  • 提案できる商品の範囲に偏りがないか
  • 元本割れや為替変動などのリスク説明が十分か
  • 運用後のフォロー体制があるか

税金の個別判断は税理士、制度手続きは勤務先や運営管理機関、資産運用はIFAやFPなど、相談内容に応じて専門家を使い分けることが大切だ。

まとめ

確定拠出年金と退職金は、どちらも老後資金に関わる重要な制度である。

勤務先に退職一時金や企業年金制度があり、本人が支給条件を満たしていれば、確定拠出年金と退職金の両方を受け取れる場合がある。ただし、企業型DCが退職給付制度の全部または一部として導入されている場合は、別途退職金がないケースもある。

一時金で受け取る場合は退職所得、年金で受け取る場合は公的年金等に係る雑所得として扱われる場合がある。税金の面では、同じ年に受け取る場合だけでなく、別の年に受け取る場合でも、退職所得控除の重複期間調整に注意が必要だ。

受け取り方は、税金だけでなく、退職後の生活費、健康保険料、公的年金、住宅ローン、医療・介護費、運用リスクまで含めて考えよう。

まずは勤務先の退職給付制度と企業型DCの規約を確認し、必要に応じて税務署・税理士・運営管理機関・FP・IFAなどに相談しながら、自分に合った受け取り方を検討することが大切だ。

退職金や確定拠出年金の相談先を比較したい場合は、以下のボタンから確認できる。

出典

厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
厚生労働省「2020年の制度改正」
企業年金連合会「2024(令和6)年度 企業型確定拠出年金実態調査結果(概要版)」(公開日:2026年3月26日)
東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
財務省「令和7年度税制改正の大綱」(公開日:2024年12月27日)
金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
金融経済教育推進機構 J-FLEC「専門家に相談したい」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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