5年勤続で退職金はいくら?相場・計算方法・税金を解説

退職金は、退職時にまとまって受け取れる可能性がある大切なお金だ。

ただし、退職金はすべての会社で必ず支給されるものではない。5年勤続した場合でも、退職金制度の有無、退職金規程の内容、退職理由によって受け取れる金額は変わる。

特に転職や早期退職を考えている人は、「5年勤めたらいくらもらえるのか」「自己都合退職でも支給されるのか」「税金はいくらかかるのか」を早めに確認しておきたい。

本稿では、5年勤続で退職金を受け取れるか、退職金の目安額、計算方法、税金、退職後の運用を考えるときの注意点を解説する。

目次

5年勤続で退職金はもらえる?支給は退職金規程で決まる

結論からいうと、5年勤続で退職金を受け取れるかどうかは勤務先の退職金規程次第だ。

退職金制度がある会社でも、「勤続3年以上」「正社員のみ」「自己都合退職は支給率を下げる」などの条件が定められていることがある。反対に、退職金制度そのものがない会社では、原則として退職金を受け取れない。

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%、制度がない企業割合は24.8%だった。企業規模別では、1,000人以上の企業で90.1%、30〜99人の企業で70.1%と差がある。

つまり、退職金制度がある企業は多いものの、約4社に1社は退職給付制度がない。5年勤続している場合でも、まずは自社の制度を確認することが重要だ。

5年勤続の退職金相場|中小企業では40万〜60万円前後が一つの目安

5年勤続時の退職金額は、会社規模や学歴、退職理由によって異なる。参考として、東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」のモデル退職金では、都内中小企業の調査産業計で以下の金額が示されている。

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学歴勤続5年の年齢自己都合退職会社都合退職
高校卒23歳39.7万円51.3万円
高専・短大卒25歳40.6万円51.6万円
大学卒27歳43.2万円57.4万円

上記は、従業員10〜299人の都内中小企業を対象にしたモデル退職金であり、全国平均ではない。実際の金額は、勤務先の退職金規程、基本給、役職、退職理由、勤続年数の端数処理などによって変わる。

ただし、5年勤続の退職金は、定年退職時の退職金のように数百万円から数千万円になるケースばかりではない。中小企業のモデル退職金では、40万〜60万円前後が一つの目安になる。

退職金が支給されるか確認すべき5つの項目

5年勤続で退職金を受け取れるか知りたい場合は、就業規則や退職金規程で以下を確認しよう。

  • 退職金制度の有無
  • 退職金の対象者の範囲(正社員、契約社員、パートなど)
  • 退職金を受け取るための最低勤続年数
  • 自己都合退職・会社都合退職・懲戒解雇時の扱い
  • 退職金の計算方法、支払方法、支払時期

労働基準法では、退職手当の定めをする場合、適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払方法、支払時期に関する事項を就業規則に記載する必要がある。

退職金について不明点がある場合は、人事・労務担当者に「退職金規程を確認したい」と伝えるとよい。退職前に確認しておくことで、退職後に想定外のトラブルになるリスクを減らせる。

退職金制度の主な種類

退職金制度にはいくつかの種類がある。制度によって、退職時に現金で受け取れるか、将来の年金資産として扱われるかが異なる。

  • 退職一時金制度
    退職時に一定の金額を一時金として支給する制度。基本給連動型、定額方式、別テーブル方式、ポイント制方式などがある。
  • 退職金共済制度
    中小企業などが外部機関を利用して退職金を積み立てる制度。代表例に中小企業退職金共済制度(中退共制度)がある。
  • 企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
    企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する年金制度。給付額は掛金と運用成果によって決まる。転職時は年金資産を移換するのが基本で、退職時にすぐ現金で受け取れるとは限らない。
  • 確定給付企業年金制度(DB)
    企業が従業員と給付内容を約束し、年金資産を管理・運用する企業年金制度。給付内容があらかじめ定められており、運用リスクは事業主側が負う。

同じ「退職金」と呼ばれていても、制度によって受け取り方や税金の扱いは異なる。5年勤続で退職する場合は、勤務先の制度が退職一時金なのか、企業年金なのか、共済制度なのかを確認しておこう。

未払い退職金は早めに確認する

退職金規程上、退職金を受け取る権利があるにもかかわらず支給されない場合は、会社に確認し、必要に応じて支払いを求めることができる。

労働基準法上、退職手当の請求権は、行使できる時から5年間で時効により消滅する。支給が遅れている、金額が規程と違う、支給対象なのに支払われないといった場合は、退職金規程や退職時の書類を確認し、早めに相談先を検討しよう。

退職金の計算方法|基本給・勤続年数・退職理由で変わる

退職金の計算方法は会社によって異なる。代表的な方式は、基本給連動型、定額方式、別テーブル方式、ポイント制方式の4つだ。

代表的な退職金の計算方式

退職一時金でよく使われる考え方は、退職時の基本給に、勤続年数や退職理由に応じた支給率を掛ける方法だ。

  • 基本給連動型:退職時の基本給に、勤続年数や退職理由に応じた係数を掛けて計算する方式
  • 定額方式:勤続年数ごとに、あらかじめ退職金額を決めておく方式
  • 別テーブル方式:基本給とは別に、勤続年数、退職理由、役職などに応じた専用の表で計算する方式
  • ポイント制方式:勤続年数、役職、評価、退職理由などをポイント化し、累積ポイントに応じて退職金を計算する方式

たとえば基本給連動型の場合、計算式は以下のように表されることが多い。

退職金=退職時の基本給×勤続年数に応じた支給率×退職理由に応じた係数

ただし、実際の計算式は会社ごとに異なる。正確な金額を知りたい場合は、退職金規程に記載された計算式を使う必要がある。

賞与や昇給は退職金に影響する?

基本給連動型の場合、昇給によって基本給が上がると退職金も増える可能性がある。特に、退職時の基本給をもとに計算する会社では、昇給の影響を受けやすい。

一方で、定額方式やポイント制方式では、基本給が上がっても退職金に直接反映されない場合がある。賞与についても、退職金の計算要素に含めるかどうかは会社の規程次第だ。

「基本給が上がったから退職金も必ず増える」「賞与が高いから退職金も増える」とは限らないため、退職金規程の算定基礎を確認しておこう。

自己都合退職と会社都合退職では支給率が変わることがある

同じ5年勤続でも、自己都合退職と会社都合退職では退職金額が変わることがある。

一般的に、自己都合退職は会社都合退職より支給率が低く設定されるケースがある。東京都の中小企業モデル退職金でも、大学卒・勤続5年では自己都合退職43.2万円、会社都合退職57.4万円と差がある。

転職を理由に退職する場合は自己都合退職として扱われることが多いため、退職前に支給率や減額の有無を確認しておきたい。

労働条件によっては支給されない場合もある

退職金制度がある会社でも、すべての労働者が対象になるとは限らない。たとえば、退職金の対象を正社員に限定している会社や、勤続年数の条件を満たした人だけに支給する会社もある。

契約社員、パート、アルバイト、試用期間中の退職などは、退職金規程で扱いが分かれやすい。自分が支給対象になるかどうかは、雇用形態と退職金規程の両方を確認しよう。

退職金の税金|5年勤続では退職所得控除と短期退職手当等に注意

退職金を一時金で受け取る場合は、原則として「退職所得」として扱われる。退職所得には退職所得控除があり、給与所得などとは分けて税額を計算する。

5年勤続の場合、退職所得控除額は原則として40万円×5年=200万円だ。退職金が退職所得控除額以下であれば、退職所得の金額は0円になる。

退職所得控除の計算方法

退職所得控除の計算方法

勤続年数が20年以下の場合:

40万円×勤続年数

※80万円に満たない場合は80万円

勤続年数が20年超の場合:

800万円+70万円×(勤続年数−20年)

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算する。たとえば4年2か月勤務した場合、税金計算上の勤続年数は5年になる。

退職所得の基本的な計算方法

退職所得の計算方法

(退職金額−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

退職所得の金額に応じて所得税・復興特別所得税・住民税が計算される。

※実際の税額計算では、復興特別所得税や住民税も考慮する必要がある。

5年勤続の場合、退職所得控除額は200万円である。たとえば退職金が50万円なら、退職所得控除の範囲内に収まるため、退職所得の金額は0円になる。

勤続5年以下の短期退職手当等は300万円超部分に注意

勤続年数が5年以下の従業員に支払われる退職金は、一定の場合「短期退職手当等」に該当する。

短期退職手当等では、「退職金額−退職所得控除額」のうち300万円を超える部分について、通常の退職所得で使われる2分の1課税が適用されない。

たとえば勤続5年で退職所得控除額が200万円の場合、退職金から控除額を差し引いた残額が300万円以下なら、通常の計算と同じく2分の1課税が適用される。一方、残額が300万円を超える場合は、300万円を超える部分の税負担が重くなる可能性がある。

5年勤続の退職金が数十万円程度であれば、退職所得控除の範囲内に収まることが多い。ただし、役職者や高額な退職金を受け取るケースでは、短期退職手当等の扱いを確認しておこう。

退職金を受け取ったら確定申告は必要?

退職金の支払いを受ける前に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先へ提出している場合、原則として確定申告は不要だ。勤務先が退職所得に対する所得税・復興特別所得税を計算し、源泉徴収するためである。

ただし、医療費控除や寄附金控除を受けるために確定申告をする場合などは、退職所得の金額も申告書に記載する必要がある。

一方、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職金等の支払金額に対して20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収される。この場合は、確定申告によって税額を精算する。

退職金を運用する前に確認したいこと

退職金を受け取った後は、すぐに投資へ回すのではなく、生活費、税金、社会保険料、住宅ローン、教育費、医療・介護費などを整理してから運用方針を決めることが大切だ。

現行のNISAは、2024年から非課税保有期間が無期限となり、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になった。年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円である。

ただし、NISAを使っても投資元本が保証されるわけではない。退職金は生活資金としての性格も強いため、当面使うお金と長期運用に回せるお金を分けて考えよう。

退職金の受け取り方・運用に迷う場合はIFAなど専門家に相談する選択肢もある

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、一般的に独立系ファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれる。日本では金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやニーズに合った資産形成の提案、金融商品の選定、売買取引の支援などを行う。

退職金は、受け取り方、税金、運用、老後資金の計画が関わるため、人によって判断が異なる。自分だけで判断しにくい場合は、IFA、ファイナンシャルプランナー、税理士、社会保険労務士、弁護士など、相談内容に合った専門家を選ぶことが大切だ。

税金や社会保険を踏まえた受け取り方を整理できる

退職金を一時金で受け取るか、年金形式で受け取るかによって、税金や社会保険料への影響が変わる場合がある。

また、退職前後には退職金だけでなく、企業年金、iDeCo、個人年金保険、給与、失業給付、年金など複数のお金が関わることもある。受け取り時期や金額が重なると、家計管理や税金の確認が複雑になりやすい。

IFAは資産形成や金融商品に関する相談に対応できるが、個別具体的な税務判断や税務申告の代理は税理士の領域になる。税金の判断が必要な場合は、税理士などの専門家に確認しよう。

退職金の運用方法を生活資金と分けて検討できる

退職金を運用する場合は、すべてを一度に投資するのではなく、使う時期ごとに分けて考えると判断しやすい。

  • すぐ使うお金:生活費、税金、引っ越し費用、医療費など
  • 数年以内に使うお金:住宅費、教育費、車の購入費など
  • 長期で運用できるお金:老後資金や余裕資金など

IFAに相談する場合は、金融商品の提案を受ける前に、生活費、家族構成、資産額、負債、リスク許容度、将来使う予定のあるお金を整理しておくとよい。

退職金制度がない場合は早めに資産形成を準備する

勤務先に退職金制度がない場合、退職時にまとまったお金を受け取れない可能性が高い。その場合は、退職金の代わりとなる資産を自分で準備する必要がある。

iDeCo、NISA、預貯金、保険、企業年金の有無などを整理し、将来必要な資金をどのように準備するかを考えておこう。退職金がないこと自体は珍しいことではないが、早めに把握しておくほど対策を立てやすい。

まとめ

5年勤続で退職金を受け取れるかどうかは、勤務先の退職金制度と退職金規程によって決まる。

東京都の中小企業モデル退職金では、勤続5年の退職金は、大学卒で自己都合43.2万円、会社都合57.4万円が一つの目安として示されている。ただし、これは都内中小企業のモデル値であり、実際の金額は会社ごとに異なる。

退職前には、退職金制度の有無、最低勤続年数、対象者、退職理由ごとの支給率、税金の扱いを確認しておこう。退職金を受け取った後は、生活費と運用資金を分けて考えることも大切だ。

退職金の受け取り方や運用に迷う場合は、必要に応じて相談先を比較し、自分の状況に合った専門家を確認しておこう。

出典

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」(公開日:2023年10月31日)
東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)第8表 モデル退職金」
e-Gov法令検索「労働基準法」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)」
厚生労働省「中小企業退職金共済制度(中退共制度)」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
企業年金連合会「企業年金制度」
金融庁「NISAを知る」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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