教員として働いている方のなかには、「定年退職時に退職金はいくら受け取れるのか」「公立と私立で退職金はどう違うのか」と気になる方もいるでしょう。
令和6年地方公務員給与実態調査では、教育公務員が25年以上勤続後に定年退職等をした場合の平均退職手当額は、全地方公共団体で約2,294.7万円です。
ただし、教員の退職金は、公立か私立か、小学校・中学校・高校・大学などの校種、勤続年数、退職理由、勤務先の規程によって異なります。
本記事では、教員の退職金の仕組み、計算方法、税金、退職金を活用する方法、相談先の選び方を解説します。
もらえる退職金の目安や、退職後の生活設計に役立つ情報を知りたい教員関係者の方は、参考にしてください。
教員の退職金の仕組みと特徴

教員の退職金は、公立教員と私立教員で仕組みが異なります。
公立教員は地方公務員にあたるため、退職手当は各自治体の条例や退職手当制度に基づいて計算されます。私立教員は勤務先の学校法人や私学退職金財団などの制度によって決まるため、学校ごとの就業規則や退職金規程を確認する必要があります。
教員の退職金計算方法
公立教員の退職手当は、多くの自治体で「基本額」と「調整額」をもとに計算されます。
基本的な考え方は以下のとおりです。
基本額は、退職日時点の給料月額に、退職理由別・勤続期間別の支給率を掛けて計算されます。自治体によっては調整率などを用いる場合もあります。
調整額は、職務の級や職員区分に応じた調整月額をもとに計算される部分です。国家公務員の制度では、職員区分ごとの調整月額のうち高いものから60月分を合計する仕組みがあり、地方自治体でも同様の考え方を採用している場合があります。
公立教員の退職手当を確認する際は、次の情報を整理しておきましょう。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 勤務先の自治体条例 | 退職手当の支給条件、計算方法、支払時期 |
| 退職日給料月額 | 退職日時点の給料表上の月額。教職調整額や給料の調整額を含めるかは自治体の規程で確認する |
| 勤続年数 | 在職期間、休職期間、育休期間、再任用期間の扱い |
| 退職理由 | 定年、自己都合、勧奨、公務上傷病、死亡など |
| 調整額 | 職務の級、管理職経験、在職期間に応じた加算部分 |
なお、平均給与月額をそのまま退職手当の計算に使えるわけではありません。実際の計算では、退職日時点の給料月額や自治体の条例で定められた計算方法を確認する必要があります。
退職手当の見込額を正確に知りたい場合は、勤務先の教育委員会、人事担当部署、共済・福利担当などに試算を依頼しましょう。
公立教員の平均退職手当額
令和6年地方公務員給与実態調査によると、教育公務員が25年以上勤続後に定年退職等をした場合の平均退職手当額は、全地方公共団体で約2,294.7万円です。
職員区分別の目安は以下のとおりです。
| 職員区分 | 25年以上勤続後の定年退職等の平均退職手当額 |
|---|---|
| 一般職員 | 約2,212.6万円 |
| 教育公務員 | 約2,294.7万円 |
| 警察官 | 約2,311.4万円 |
上記は公立教員を含む教育公務員の平均であり、個人の退職手当額を示すものではありません。実際の金額は、自治体、校種、職務の級、管理職経験、退職理由、勤続年数によって変わります。
教員退職金の支給条件
公立教員の退職手当は、自治体の条例に基づいて支給されます。多くの自治体では、一定期間以上勤務した常勤職員が対象です。
一方で、次のようなケースでは、退職手当が支給されない、または一部支給されない場合があります。
- 懲戒免職を受けた場合
- 失職した場合
- 条例で定める最低勤務期間を満たさない場合
- 退職手当の支給制限に該当する場合
「勤続6か月未満は支給されない」などの要件を設けている自治体もありますが、細かい条件は自治体ごとに異なります。勤務先の退職手当条例や担当部署で確認しましょう。
私立教員の場合は、勤務先の学校法人により退職金の支給条件が異なります。雇用契約書、就業規則、退職金規程、私学退職金財団等への加入状況を確認してください。
私立大学退職金財団の資料では、私立大学等の退職金の算定方法として、退職前の最終の俸給月額や基本給等を基礎額とし、在職期間に基づく支給率を乗じる方式が多いとされています。ただし、これは私立大学等の維持会員を対象とした情報であり、すべての私立小中高・幼稚園にそのまま当てはまるわけではありません。
公立と私立の違いとは?
公立教員と私立教員では、退職金の根拠となる制度が異なります。
| 区分 | 退職金・退職手当の決まり方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 公立教員 | 自治体の退職手当条例や給料表に基づいて計算される | 教育委員会、人事担当部署、自治体の条例 |
| 私立教員 | 学校法人の就業規則・退職金規程・退職金財団等の制度に基づく | 勤務先の人事担当、学校法人の規程、加入している退職金財団 |
私立教員の退職金は、学校法人ごとの差が大きいため、「私立だから公立より多い」「公立だから必ず多い」とは言い切れません。
月給、勤続年数、退職理由、役職、学校法人の財務状況、退職金財団への加入状況などによって金額が変わります。転職や退職を検討する場合は、年収だけでなく退職金制度も確認しておくことが大切です。
退職金と税金の関係を理解しよう

退職金や退職手当は、額面の金額がそのまま手取りになるわけではありません。
一時金として受け取る場合は、原則として退職所得として扱われ、所得税、復興特別所得税、住民税の対象になります。
ただし、退職所得は長年の勤務に対する給付という性格があるため、退職所得控除や2分の1課税により、通常の給与所得とは異なる方法で税金が計算されます。
退職金にかかる税金の種類
教員が退職金を一時金として受け取る場合、主に以下の税金が関係します。
| 税金 | 概要 |
|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 退職所得の金額に応じて計算される。申告書を提出していれば、原則として勤務先が源泉徴収する |
| 住民税 | 退職所得に対して原則10%で計算され、支払時に差し引かれる |
退職金を年金形式で受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得として扱われる場合があります。公的年金や企業年金など、他の年金収入との関係で税負担が変わることがあるため、一時金・年金・併用のどれが有利かは個別に確認しましょう。
退職所得の計算方法
一般的な退職所得の計算式は、以下のとおりです。
退職所得=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算します。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続年数30年、退職金2,000万円を一時金で受け取る場合を考えます。
退職所得控除額は、次のとおりです。
800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
退職所得は、次のように計算します。
(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円
この場合、所得税および復興特別所得税は約15.6万円、住民税は25万円となり、税額の合計は約40.6万円です。手取り額はおおよそ1,959万円となります。
ただし、これは一般的な退職手当等として受け取る場合の概算です。特定役員退職手当等や短期退職手当等に該当する場合、同じ年に複数の退職金を受け取る場合などは、計算方法が異なることがあります。
税金節約のためのポイント
退職金の税金で重要なのは、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先へ提出することです。
この申告書を提出している場合、勤務先が退職所得控除などを反映して所得税等を源泉徴収するため、原則として退職金だけを理由に確定申告する必要はありません。
一方、申告書を提出していない場合は、退職金等の支払金額に20.42%を乗じた所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算する必要があります。
退職金額が大きい場合や、複数の退職金・企業年金・iDeCoを同じ時期に受け取る場合は、税務署や税理士に確認すると安心です。
教員の退職金を賢く活用する方法

退職金を受け取った後は、すぐに運用や大きな支出に使うのではなく、まず目的別に分けて考えることが大切です。
退職後は給与収入が減る一方で、税金、社会保険料、医療費、住宅修繕費、家族への支援など、まとまった支出が発生することもあります。
退職金は、次のように分けて管理すると判断しやすくなります。
| 分類 | 主な使い道 | 考え方 |
|---|---|---|
| 生活資金 | 退職後の生活費、税金、社会保険料 | すぐ使える預金で確保する |
| 予備資金 | 医療費、介護費、住宅修繕、家電買い替え | 急な支出に備えて流動性を重視する |
| 目的資金 | 住宅ローン返済、教育費、旅行、家族支援 | 使う時期が近いお金はリスクを抑える |
| 運用資金 | NISA、投資信託、債券など | 余裕資金で長期・分散運用を検討する |
退職金の運用術
退職金を運用する場合は、短期間で大きく増やすことよりも、老後資金の寿命を延ばすことを意識しましょう。
長期・分散投資は、リスク管理の考え方として有効です。預金、債券、投資信託など複数の資産を組み合わせることで、特定の商品や市場に偏りすぎることを避けやすくなります。
ただし、長期運用であっても元本割れのリスクはあります。生活費や数年以内に使う予定のあるお金まで投資に回すのは避けましょう。
退職金運用では、次の点を確認しておくことが重要です。
- 退職後の毎月の生活費
- 年金の受給見込額
- 住宅ローンや借入金の残高
- 医療費・介護費への備え
- 投資でどの程度の損失まで受け入れられるか
- 運用商品の手数料・換金性・リスク
退職後のキャリアプランニング
退職後の生活を考える際は、お金だけでなく、働き方や生きがいも含めたキャリアプランニングが大切です。
教員経験を活かして、再任用、非常勤講師、塾・予備校、教育関連企業、地域活動、NPO、大学講師などに関わる選択肢もあります。
退職後に働く予定がある場合は、収入見込み、年金の受給時期、税金、社会保険の扱いも確認しておきましょう。
退職金を取り崩すペースは、再就職や非常勤勤務の収入によっても変わります。退職前から、収入・支出・資産の見通しを整理しておくと安心です。
退職金活用の注意点と対策
退職金はまとまった資金であるため、詐欺的な投資話や高リスク商品への勧誘にも注意が必要です。
「元本保証で高利回り」「必ず増える」「今だけ」などの言葉で契約を急がせる勧誘には慎重に対応しましょう。
退職金を活用する際は、次の対策を意識してください。
- 一度に全額を投資しない
- 生活費と予備資金を先に確保する
- 商品のリスク・手数料・換金性を確認する
- 分からない商品には投資しない
- 複数の相談先の意見を聞く
- 金融庁に登録されている事業者か確認する
教員の退職金問題はどこに相談するべきか

教員の退職金に関する相談先は、相談内容によって異なります。
退職金額、税金、退職後の生活設計、資産運用をすべて同じ相手に相談できるとは限りません。目的に合わせて相談先を使い分けましょう。
相談内容別の相談先
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 公立教員の退職手当見込額 | 教育委員会、人事担当部署、退職手当担当 |
| 私立教員の退職金制度 | 勤務先の学校法人、人事担当、加入している私学退職金財団 |
| 退職金にかかる税金 | 税務署、税理士 |
| 年金見込額 | ねんきんネット、年金事務所 |
| 生活設計・家計管理 | ファイナンシャルプランナー、J-FLECなど |
| 資産運用 | IFA、証券会社、銀行、FPなど |
退職金の支給額を確定できるのは、基本的に勤務先や退職手当を扱う担当部署です。資産運用の専門家に相談しても、勤務先の退職金額を確定できるわけではありません。
また、税金の個別判断は税務署や税理士に確認する必要があります。退職金を受け取る年に、他の退職金、企業年金、iDeCo、再就職収入がある場合は、早めに確認しましょう。
IFAが提供するサービスとメリット
退職金の運用や資産配分について相談したい場合、IFAに相談する選択肢があります。
IFAとは、一般に独立系ファイナンシャルアドバイザーを指す言葉です。金融商品仲介業者として活動するIFAは、証券会社などの金融商品取引業者や登録金融機関の委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行います。
IFAに相談できる内容としては、次のようなものがあります。
- 退職金のうち運用に回せる金額の整理
- 退職後の生活費を踏まえた資産配分
- NISAやiDeCoの活用方法
- 預金・債券・投資信託などの組み合わせ
- 運用開始後の定期的な見直し
ただし、IFAは完全にどの金融機関とも関係がない立場ではありません。提携している証券会社、取扱商品、相談料、販売手数料、運用後のフォロー体制を確認しましょう。
退職金問題に対するIFAのアプローチ
退職金運用では、金融市場や世界情勢だけでなく、相談者本人の生活費、年金見込額、家族構成、健康状態、住まい、相続、リスク許容度も考える必要があります。
IFAに相談する場合は、次の資料を準備しておくと話が進めやすくなります。
- 退職金の見込額または支給通知
- 年金見込額
- 毎月の生活費
- 住宅ローンや借入金の残高
- 預金・投資信託・保険などの保有資産
- 退職後に実現したい生活や支出予定
相談先が金融商品仲介業者として登録されているかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」などで確認できます。
提案された商品については、メリットだけでなく、元本割れリスク、手数料、換金性、税金、運用期間を必ず確認しましょう。
まとめ

本記事では、教員の退職金の仕組み、退職金にかかる税金、退職金を賢く活用する方法、相談先の選び方について解説しました。
公立教員の退職手当は、自治体の条例や給料表、勤続年数、退職理由、調整額によって決まります。令和6年地方公務員給与実態調査では、教育公務員が25年以上勤続後に定年退職等をした場合の平均退職手当額は約2,294.7万円です。
私立教員の退職金は、学校法人の就業規則や退職金規程、私学退職金財団等への加入状況によって異なります。公立・私立のどちらであっても、まずは勤務先の規程を確認することが重要です。
退職金を一時金で受け取る場合は、退職所得控除や2分の1課税によって税負担が軽くなる仕組みがあります。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、20.42%の源泉徴収が行われ、確定申告で精算する必要があります。
退職金を受け取った後は、生活資金、予備資金、目的資金、運用資金に分けて考えましょう。運用を検討する場合も、生活に必要な資金まで投資に回さず、無理のない範囲で分散することが大切です。
退職金額は勤務先、税金は税務署や税理士、生活設計はFPやJ-FLEC、資産運用はIFAや金融機関など、相談内容に応じて相談先を使い分けましょう。
退職金は、退職後の生活を支える大切なお金です。受け取る前から見込額、税金、使い道、相談先を確認し、自分の生活設計に合う活用方法を選んでください。
出典
e-Stat「令和6年地方公務員給与実態調査 第9表の2 団体区分別,職員区分別,退職事由別,年齢別退職者数及び退職手当額(定年退職―再掲)」(公開日:2025年9月18日)
人事院「国家公務員の退職手当制度の概要」
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表」
群馬県教育委員会「退職手当について」
一般財団法人岡山県教育職員互助組合「退職手当について(県費負担教職員の場合)」
公益財団法人私立大学退職金財団「実態調査報告書」
公益財団法人私立大学退職金財団「かんたんにわかる退職資金交付事業」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(更新日:2025年4月1日)
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「専門家に相談したい」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

