社会福祉法人の退職金はいくら?WAM共済の計算方法と注意点を解説

社会福祉法人で働いている方の中には、「自分の職場に退職金制度はあるのか」「共済制度に加入しているといくら受け取れるのか」と不安に感じている方もいるでしょう。

結論からいうと、社会福祉法人だから必ず退職金がある、または必ず同じ計算方法になるわけではありません。退職金の有無や金額は、勤務先の就業規則・退職金規程・共済制度への加入状況によって決まります。

社会福祉法人でよく確認したい制度のひとつが、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が運営する社会福祉施設職員等退職手当共済制度です。この制度に加入している場合、退職前6か月の本俸や被共済職員期間などをもとに退職手当金が計算されます。

この記事では、社会福祉法人の退職金制度の特徴、共済制度の計算方法、雇用形態が変わるときの注意点、退職金の相談先をわかりやすく解説します。

目次

社会福祉法人の退職金制度|まずは共済加入と退職金規程を確認する

社会福祉法人の退職金を確認するときは、まず「法人独自の退職金制度」と「外部の共済制度」を分けて考えることが大切です。

同じ社会福祉法人でも、WAMの退職手当共済制度に加入している法人、法人独自の退職金規程を持つ法人、中退共など別の退職金共済を使う法人、複数の制度を併用する法人があります。

社会福祉法人とは

社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づき所轄庁の認可を受けて設立される法人です。

特別養護老人ホーム、保育所、障害者支援施設、児童養護施設など、社会福祉に関わる事業を運営する法人が該当します。

ただし、社会福祉法人で働いているからといって、退職金制度がすべて同じとは限りません。勤務先の法人がどの制度を採用しているかを確認しましょう。

退職金制度は法律で一律に義務づけられていない

退職金制度は、すべての事業所に必ず設けなければならない制度ではありません。退職金制度がない法人であっても、それだけで違法とはいえません。

一方で、退職手当の定めをする場合は、就業規則に次の事項を記載する必要があります。

  • 退職金の対象となる労働者の範囲
  • 退職金の決定方法・計算方法
  • 退職金の支払方法
  • 退職金の支払時期

退職金があるか分からない場合は、まず就業規則、退職金規程、雇用契約書、労働条件通知書、共済制度の加入資料を確認しましょう。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度とは

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、民間社会福祉施設の職員向けに設けられている退職手当金制度です。独立行政法人福祉医療機構(WAM)が制度を運営しています。

この制度の主な特徴は次のとおりです。

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項目内容
制度の目的社会福祉事業に従事する人材の確保、福祉サービスの安定的な供給と質の向上を図ること
運営主体独立行政法人福祉医療機構(WAM)
主な財源共済契約者である施設経営者、国、都道府県の負担
職員負担はない
支払方法退職手当金は退職者本人の口座へ直接振り込まれる
注意点法人が共済契約を締結しているか、本人が加入対象かを確認する必要がある

なお、国や都道府県の公費助成は施設区分などにより取り扱いが異なります。すべての施設・職員について同じ負担割合になるわけではないため、法人側の制度説明も確認しましょう。

中退共とは別制度として考える

社会福祉法人の退職金制度では、WAMの退職手当共済制度と中小企業退職金共済制度(中退共)が混同されることがあります。

中退共は、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業を対象とした退職金共済制度です。社会福祉法人でも、法人の規模や制度設計によっては中退共など別制度を利用している場合があります。

ただし、WAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度と中退共では、運営主体、加入要件、計算方法、支払方法が異なります。自分がどの制度に加入しているかを必ず確認しましょう。

加入対象は正規職員だけとは限らない

WAMの退職手当共済制度では、正規職員だけでなく、パートや臨時職員も一定の要件を満たすと加入対象になります。

加入対象の主な要件は次のとおりです。

  • 雇用期間の定めのない職員
  • 1年以上の雇用期間を定めて使用される職員で、正規職員の所定労働時間の3分の2以上働く人
  • 1年未満の雇用期間で採用され、更新により引き続き1年を経過した職員で、正規職員の所定労働時間の3分の2以上働く人

ただし、加入日は雇用形態や契約内容によって変わります。正規職員以外の方は、採用日と加入日が一致しない場合があるため注意しましょう。

社会福祉法人の退職金計算|WAM制度は「計算基礎額×支給乗率」

社会福祉法人の退職金額は、採用している制度によって変わります。

法人独自の退職金制度であれば「基本給×勤続年数×支給率」のような計算式を使う場合もあります。一方、WAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度では、次の考え方で退職手当金が計算されます。

退職手当金=計算基礎額 × 支給乗率

計算基礎額は、退職前6か月の平均本俸月額などをもとに決まります。支給乗率は、被共済職員期間に応じて決まります。

退職前6か月の本俸と被共済職員期間が重要

WAM制度では、退職手当金の計算にあたり、退職前6か月の平均本俸月額に応じた計算基礎額と、被共済職員期間に応じた支給乗率を使います。

被共済職員期間は月単位で計算され、12か月未満の端数は切り捨てになります。また、1か月のうち勤務日数が10日を超える月が算定対象となります。

育児休業、介護休業、労災休業などの期間も、届出により退職手当共済法で定められた期間として扱われる場合があります。休業期間がある方は、法人の担当者に確認しておきましょう。

WAM制度の退職手当金の目安

厚生労働省資料では、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の支給額の例として、次のような見込額が示されています。

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被共済職員期間退職前6か月の本俸平均額計算基礎額支給乗率退職手当金見込額
5年20万円19万円2.6100約50万円
10年22万円22万円5.2200約115万円
20年28万円28万円20.4450約572万円
30年33万円32万円36.1050約1,155万円
40年41万円36万円46.5450約1,676万円

上記は制度を理解するための例であり、実際の金額を保証するものではありません。退職前6か月の本俸、加入期間、休業期間、制度改正などによって金額は変わります。

また、令和7年度の支給実績では、支給者数は82,574人、支給総額は1,452.2億円、支給平均は1,758,622円とされています。ただし、これは制度全体の平均であり、個人の退職金額は勤務条件によって異なります。

退職手当金の請求は被共済職員期間1年以上が対象

WAM制度で退職手当金を請求できるのは、原則として被共済職員期間が1年以上ある方です。

退職手当金の請求期限は、退職日の翌日から5年間です。退職後に手続きを忘れると請求期限を過ぎるおそれがあるため、退職時に法人から案内される書類や手続き方法を確認しておきましょう。

退職後3年以内に再加入する場合は合算制度も確認する

WAM制度には、退職手当金を受け取らず、被共済職員期間を通算できる合算制度があります。

被共済職員期間が1年以上あり、退職後3年以内に再びこの制度に登録している施設で勤務して加入した場合、期間を合算できる場合があります。

たとえば、家庭の事情で一度退職した後、別の社会福祉法人へ転職する予定がある場合は、すぐに退職手当金を受け取るか、期間を通算するかを検討しましょう。

なお、退職手当金を請求した後に合算制度を利用することはできません。退職時には、請求するか合算制度を利用するかを慎重に選ぶ必要があります。

中退共を利用している法人は別の計算になる

勤務先が中退共を利用している場合、退職金額は掛金月額と掛金納付月数をもとに計算されます。

中退共では、退職時に一括して受け取る一時払いのほか、一定の要件を満たせば5年間または10年間の分割払い、一時金払いと分割払いを組み合わせた一部分割払いも選択できます。

分割払いを選ぶには、退職日に60歳以上であること、退職金額が一定額以上であることなどの条件があります。

WAM制度と中退共は計算方法が異なるため、自分の勤務先がどちらを利用しているのかを確認することが大切です。

社会福祉法人の退職金に関する注意点

社会福祉法人の退職金では、加入制度、雇用形態、休業期間、退職時期、税金の扱いによって受け取れる金額や手続きが変わります。

ここでは、退職前に確認しておきたい注意点を整理します。

就業規則・退職金規程・共済加入状況を確認する

退職金の有無を確認するときは、まず次の資料を見ておきましょう。

  • 就業規則
  • 退職金規程
  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • WAM退職手当共済制度の加入資料
  • 中退共など別の退職金共済制度の加入資料
  • 法人独自の退職金説明資料

退職金制度が複数ある場合は、どの制度から、いつ、いくら程度受け取れるのかを分けて確認する必要があります。

雇用形態や本俸が変わると退職金に影響することがある

正職員から非常勤職員へ変わる場合、短時間勤務へ移る場合、再雇用になる場合は、退職金への影響を必ず確認しましょう。

WAM制度では、雇用契約が変更になる場合に、退職手当金を請求して改めて加入する方法と、退職手当金を請求せず被共済職員期間を継続する方法を選べるケースがあります。

特に、雇用契約変更後に本俸月額が大きく下がる場合、継続加入を選ぶと、退職・再加入した場合よりも受取額が下回ることがあります。

働き方を変える前に、次の点を確認しておきましょう。

  • 加入要件を引き続き満たすか
  • 本俸月額が下がるか
  • 退職手当金を一度請求するか
  • 被共済職員期間を継続できるか
  • 合算制度を利用できるか

制度の選択によって将来の受取額が変わる場合があるため、法人の担当者に試算や制度説明を依頼すると安心です。

退職手続きでは請求期限と必要書類に注意する

WAM制度では、退職時に「退職手当金を請求する」または「合算制度を利用する」のいずれかを選びます。

退職手当金を請求する場合、法人側が退職届を作成し、退職者は請求書を作成・提出する流れになります。手続きでは、通帳、マイナンバー確認書類、本人確認書類などが必要になる場合があります。

退職手当金の支給に合わせて、送金通知書や源泉徴収票が送付されます。税金の確認や確定申告で必要になる場合があるため、保管しておきましょう。

退職金には税金がかかる

退職金を一時金で受け取る場合、退職所得として税金が計算されます。

退職所得には退職所得控除があり、勤続年数に応じて控除額が決まります。

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勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職所得の金額は、原則として「退職金の収入金額-退職所得控除額」に2分の1をかけて計算します。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、支払者が所得税と復興特別所得税を計算し、原則として確定申告は不要です。提出していない場合は、退職金額に20.42%をかけた金額が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。

複数の退職金制度から受け取る場合や、過去に退職金を受け取ったことがある場合は、控除額の計算が複雑になることがあります。必要に応じて税務署や税理士に確認しましょう。

退職金トラブルは相談先を分けて考える

退職金に関する不安やトラブルは、内容によって相談先が異なります。

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相談内容主な相談先確認すること
退職金制度の有無法人の人事・労務担当就業規則
退職金規程
共済加入状況
WAM制度の手続き法人の担当者、福祉医療機構被共済職員期間
請求期限
合算制度
未払い・説明と違う場合労働局の総合労働相談コーナー、弁護士など規程
雇用契約書
法人とのやり取り
税金税務署、税理士退職所得控除
源泉徴収票、確定申告
退職金の活用・運用IFA、FP、金融機関など生活費
予備資金
運用方針
手数料

退職金の支給可否や制度上の扱いは、まず法人や制度運営機関で確認するのが基本です。資産運用の相談とは分けて考えましょう。

社会福祉法人の退職金に関する相談は誰にするべきか

退職金を受け取った後は、生活費、住宅ローン、医療費、老後資金、資産運用などを総合的に考える必要があります。

ただし、退職金の制度確認と資産運用の相談は別です。退職金の金額や支給条件は法人やWAMなどで確認し、受け取った後の活用方法はIFAやFPなどの専門家に相談する、という流れで考えると整理しやすくなります。

退職金の活用は生活費・予備資金・運用資金に分ける

退職金を受け取ったら、まず次のように資金を分けて考えましょう。

  • 退職後すぐに必要な生活費
  • 医療費・介護費・引っ越し費用などの予備資金
  • 住宅ローンや借入金の返済資金
  • 転職・再就職までのつなぎ資金
  • NISAやiDeCoなどを含めた長期運用に回せる余裕資金

退職金はまとまったお金になりやすいため、すぐに全額を投資へ回すのではなく、まず生活に必要な資金を確保することが大切です。

IFAに相談できるのは主に退職金の運用方針

退職金の運用や資産配分について相談する相手として、IFAやFPなどが候補になります。

IFAは「Independent Financial Advisor」の略として使われることが多く、日本では金融商品仲介業者を指す文脈で使われることがあります。金融商品仲介業者は、証券会社や登録金融機関の委託を受けて、有価証券の売買の媒介などを行う者です。

IFAに相談する場合は、次の点を確認しておきましょう。

  • 金融商品仲介業者として登録されているか
  • 所属金融機関や取扱商品の範囲
  • 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用
  • 提案商品のリスクを十分に説明してくれるか
  • 生活費や予備資金を踏まえた提案になっているか
  • 運用後のフォロー体制があるか

IFAは退職金制度そのものの支給可否を判断する専門家ではありません。退職金の未払い、税金、労務トラブルについては、内容に応じて法人、WAM、税務署、税理士、労働相談窓口などへ確認しましょう。

相談前に用意しておきたい資料

退職金や資産運用について相談する前に、次の資料を用意しておくと話がスムーズです。

  • 退職金の試算表
  • 就業規則・退職金規程の該当ページ
  • WAMや中退共などの加入資料
  • 源泉徴収票・送金通知書
  • ねんきん定期便
  • 預貯金、保険、投資信託などの資産一覧
  • 退職後の毎月の生活費

退職金の金額だけでなく、退職後にどのくらいの支出が続くかを把握することで、無理のない資金計画を立てやすくなります。

社会福祉法人の退職金は制度加入と本俸・期間で確認しよう

社会福祉法人の退職金は、法人の退職金規程や共済制度への加入状況によって決まります。

代表的な制度のひとつである社会福祉施設職員等退職手当共済制度では、退職前6か月の平均本俸月額に応じた計算基礎額と、被共済職員期間に応じた支給乗率をもとに退職手当金が計算されます。

退職前には、次の点を確認しておきましょう。

  • 勤務先に退職金制度があるか
  • WAM、中退共、法人独自制度のどれに加入しているか
  • 自分が加入対象になっているか
  • 被共済職員期間が1年以上あるか
  • 退職前6か月の本俸がどう扱われるか
  • 退職手当金を請求するか、合算制度を利用するか
  • 退職金の税金や源泉徴収票の扱い

雇用形態が変わる場合や、退職後に別の社会福祉法人へ転職する予定がある場合は、退職・再加入や合算制度の選択によって受取額が変わることがあります。

退職金制度の確認は法人やWAMへ、税金は税務署や税理士へ、退職金の運用はIFAやFPなどへ相談するのが基本です。

まずは自分の勤務先がどの退職金制度を採用しているかを確認し、退職後の生活資金と運用資金を分けて考えていきましょう。

出典

厚生労働省「社会福祉法人制度」
独立行政法人福祉医療機構「退職手当共済事業」
独立行政法人福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度パンフレット」
独立行政法人福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度チラシ」
独立行政法人福祉医療機構「退職される皆さまへ」
厚生労働省 確かめよう労働条件「就業規則で、記載が必須な事項はありますか?」
厚生労働省 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
厚生労働省「中小企業退職金共済制度(中退共制度)」
中小企業退職金共済事業本部「退職金の支払方法」
金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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