社会福祉法人の退職金はいくらが目安?勤務年数別の支給例

社会福祉法人で働く場合、退職金がどれくらいもらえるのか気になる方は多いでしょう。

社会福祉法人の退職金は、勤務先の就業規則や退職金規程に基づく制度のほか、社会福祉施設職員等退職手当共済制度を利用しているかどうかで大きく変わります。

福祉医療機構(WAM)の退職手当共済制度では、普通退職の場合の見込例として、5年勤務で約50万円、10年勤務で約115万円、20年勤務で約572万円、30年勤務で約1,155万円、40年勤務で約1,676万円が示されています。

ただし、実際の退職金は、退職前6か月間の本俸月額、加入期間、退職理由、共済制度への加入状況、勤務先独自の退職金制度によって異なります。

この記事では、社会福祉法人に勤務している方向けに、退職金制度の仕組み、金額の目安、計算方法、受け取る際の税金や注意点、相談先の選び方を解説します。

目次

社会福祉法人の退職金制度の概要

社会福祉法人の退職金制度を確認するイメージ

社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づき所轄庁の認可を受けて設立される法人です。

社会福祉法人の退職金制度は、法人ごとの退職金規程で定める退職一時金のほか、福祉医療機構の退職手当共済制度、中小企業退職金共済制度、企業年金制度などを組み合わせているケースがあります。

まずは、自分の勤務先がどの制度を採用しているかを確認することが大切です。

基本的な退職金の仕組み

社会福祉法人で見られる主な退職金制度は以下の通りです。

スクロールできます
制度概要確認ポイント
退職一時金制度勤務先の退職金規程に基づき、退職時に一括で支払われる制度支給条件、計算方法、支払時期、減額・不支給条件
社会福祉施設職員等退職手当共済制度福祉医療機構が運営する、社会福祉施設等職員向けの退職手当金制度加入対象か、被共済職員期間、本俸月額、退職理由
中小企業退職金共済制度
(中退共)
中小企業向けの退職金共済制度。事業主が掛金を負担する中退共に加入しているか、掛金月額、加入期間
確定給付企業年金
(DB)
規約で定めた給付算定方法に基づいて給付額が決まる企業年金受取方法、給付見込み額、一時金・年金の選択
企業型確定拠出年金
(企業型DC)
事業主が掛金を拠出し、加入者が運用する制度。給付額は運用成果で変わる資産残高、運用商品、移換手続き、受取方法

退職金制度は法律で必ず設けなければならないものではありません。制度の有無や金額は、勤務先の就業規則・退職金規程で確認しましょう。

なお、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の加入対象職員について中退共の契約がある場合、同共済制度の契約を締結できない場合があります。複数の制度が併用されているように見える場合でも、対象職員や施設区分によって扱いが異なるため注意が必要です。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の特徴

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、社会福祉施設職員等退職手当共済法に基づく制度です。社会福祉施設等で働く職員の処遇向上や福祉人材の安定確保を目的としています。

この制度の大きな特徴は、職員本人の負担がない点です。退職手当金の支給財源は、共済契約者である社会福祉法人の掛金と、対象施設に応じた国・都道府県の補助金などでまかなわれます。

令和8年度の職員1人あたりの単位掛金額は49,500円です。社会福祉施設等職員は49,500円、特定介護保険施設等職員と申出施設等職員は49,500円×3が目安となります。

WAMが公表している普通退職の場合の退職手当金見込額は、以下の通りです。

勤務年数
被共済職員期間
退職前6か月間の
本俸月額の平均例
退職手当金の目安
5年20万円49万5,900円
約50万円
10年22万円114万8,400円
約115万円
15年26万円269万7,000円
約270万円
20年28万円572万4,600円
約572万円
30年33万円約1,155万円
40年41万円約1,676万円
※普通退職の場合の見込例です。実際の支給額は個別条件により異なります。

退職手当金は、勤務年数が長くなるほど増えやすい設計です。ただし、退職前の本俸月額が下がる場合や、勤務状況に不算入月がある場合などは、見込額を下回ることがあります。

退職金受給の条件

退職金を受け取れる条件は、制度によって異なります。

勤務先独自の退職金制度では、勤続年数、雇用形態、退職理由、懲戒処分の有無などが支給条件になります。就業規則や退職金規程に、支給条件や計算方法、支払時期が記載されているか確認しましょう。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度では、以下のような場合に退職手当金が支給されないことがあります。

  • 共済契約者が掛金を納付していないとき
  • 共済契約が解除された日以降に退職したとき
  • 被共済職員となった日から起算して1年未満で退職したとき
  • 被共済職員期間となる月の合計が12か月未満のとき
  • 重大な非行などにより支給制限に該当するとき
  • 退職手当金の請求権が時効で消滅しているとき
  • 合算制度の利用申出をしたとき

退職後に同じ共済制度の対象施設へ再就職する可能性がある場合は、合算制度を利用できることがあります。退職手当金をすぐ請求するか、期間合算を選ぶかで将来の支給額が変わることがあるため、退職前に確認しておきましょう。

退職金の正確な計算方法

退職金の計算方法を確認するイメージ

退職金の計算方法は、勤務先の制度によって異なります。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している場合は、WAMの計算方法を確認します。一方、勤務先独自の退職金制度では、基本給連動型、定額方式、ポイント制などが使われることがあります。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の計算式

WAM退職手当共済制度の退職手当金は、以下の式で計算されます。

【WAM退職手当共済制度の計算式】

退職手当金 = 計算基礎額 × 支給乗率

計算基礎額:退職前6か月間の平均本俸月額に応じて定められる額

支給乗率:被共済職員期間と退職理由に応じて定められる乗率

被共済職員期間は、被共済職員になった月から被共済職員でなくなった月までを月単位で計算します。ただし、業務に従事した日数が10日以下の月などは算入されません。

また、通算して1年未満の端数月がある場合、その端数月は切り捨てとなります。退職手当金額を正確に知りたい場合は、WAMの退職手当金計算シミュレーションや勤務先の担当者に確認しましょう。

基本給と勤続年数をもとにした計算式

勤務先独自の退職金制度では、基本給と勤続年数、退職理由をもとに計算する「基本給連動型」が使われることがあります。

基本給連動型の一例は以下の通りです。

【基本給連動型の計算式】

退職金 = 退職時の基本給 × 勤続年数に応じた支給係数 × 退職理由別係数

例:基本給35万円、勤続10年、自己都合退職の係数0.8の場合

35万円 × 10 × 0.8 = 280万円

これはあくまで一例です。実際には、勤続年数ごとの支給率表、役職加算、定年退職と自己都合退職の違い、懲戒処分による減額・不支給など、法人ごとの規程に従って計算されます。

特別加算や減額要因を考慮する

退職金は、基本的な計算式だけで決まるとは限りません。勤務先の制度によっては、功績や役職に応じた加算がある一方、自己都合退職や懲戒処分により減額・不支給となる場合があります。

特に確認したいのは以下の項目です。

  • 退職理由によって支給率が変わるか
  • 勤続年数の端数月をどう扱うか
  • 休職・育休・短時間勤務の期間が算入されるか
  • 懲戒解雇時の減額・不支給規定があるか
  • WAM、県社協等の退職共済、中退共、企業年金がどのように併用されているか

退職予定日を少し変えるだけで、勤続年数の扱いや支給額が変わることもあります。退職時期を決める前に、勤務先の担当部署へ試算を依頼しておくと安心です。

確定拠出年金制度との兼ね合い

勤務先が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している場合、退職金とは別にDC資産を確認する必要があります。

企業型DCは、事業主が拠出した掛金と加入者自身の運用成果によって将来の受取額が決まる制度です。定期的に送付される「お取引状況のお知らせ」や、運営管理機関の専用サイトで資産残高を確認できます。

退職・転職する場合は、企業型DCの資産をiDeCoや転職先の企業型DCへ移換する手続きが必要になることがあります。手続きを放置すると、手数料や運用機会の面で不利になる場合があるため、退職前に確認しましょう。

退職金を受け取る際の注意点

退職金を受け取る際の注意点を確認するイメージ

退職金はまとまった金額になるため、受け取り前に手続き、税金、使い道を整理しておくことが大切です。

ここでは、退職金を受け取る前に確認したい注意点を解説します。

手続き上の留意事項

退職金の支給時期は、勤務先の就業規則・退職金規程、または共済制度の手続き状況によって異なります。

勤務先独自の退職金制度では、退職後いつまでに支給されるかを退職金規程で確認しましょう。一般的に退職後1〜2か月程度で支払われるケースもありますが、法人ごとに異なるため、断定はできません。

WAM退職手当共済制度では、共済契約者が作成する「被共済職員退職届」と、退職者が作成する「退職手当金請求書」または「合算制度利用申出書」を提出します。退職手当金は、支給要件に該当する場合、退職者本人の金融機関口座に直接振り込まれます。

書類の不備やマイナンバー確認、退職理由の確認などで手続きに時間がかかることもあります。退職直後に大きな支出を予定している場合は、支給予定時期を早めに確認しましょう。

税金や手数料の対処法

退職金を一時金で受け取る場合は、退職所得として所得税・復興特別所得税・住民税の対象になります。ただし、退職所得控除があるため、退職金の全額に税金がかかるわけではありません。

退職所得の計算式は以下の通りです。

退職所得控除の計算式

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

課税退職所得金額 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
※1,000円未満は切り捨て

たとえば、勤続25年で1,500万円の退職金を受け取った場合、税額は以下のように概算できます。

計算例

勤続年数25年、退職金1,500万円の場合

退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(25年 − 20年)= 1,150万円

課税退職所得金額:(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円

所得税・復興特別所得税:約8万9,000円

住民税:175万円 × 10% = 17万5,000円

税額の概算:約26万4,000円

勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、退職所得控除を反映した税額で源泉徴収されるため、原則として退職金だけを理由に確定申告する必要はありません。

一方、申告書を提出していない場合は、退職金等の支払金額に対して20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算する必要があります。

企業型DCやDBを年金形式で受け取る場合は、退職所得ではなく、公的年金等に係る雑所得として扱われるのが一般的です。一時金と年金のどちらが有利かは、退職金額、他の年金収入、住民税、社会保険料、生活費の管理しやすさを含めて判断しましょう。

退職金を最大限活用するための方法

退職金の受け取り時期が近づいたら、まず退職後の生活費や大きな支出予定を整理しましょう。

退職金は、すぐ投資するのではなく、以下の3つに分けて考えると判断しやすくなります。

  • 使うお金
    退職直後の生活費、引っ越し、住宅ローン返済、教育費、リフォーム費用など
  • 守るお金
    医療費、介護費、家族支援、収入減に備える緊急資金
  • 運用するお金
    当面使う予定がなく、長期で資産寿命を延ばすために活用できる資金

NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。2024年以降のNISAでは、非課税保有限度額が最大1,800万円となっています。ただし、NISAで投資信託や株式などを購入する場合は元本割れのリスクがあります。

退職金は老後生活の土台になるお金です。生活資金や緊急資金までリスク資産に回さないようにし、必要に応じて専門家に相談しながら運用方針を決めましょう。

退職金に関する疑問・不安を解消する方法

退職金に関する疑問や不安を相談するイメージ

退職金は、老後の生活を支える大切な資金です。制度や税金、運用方法に不安がある場合は、自分だけで判断せず、相談先を使い分けることも検討しましょう。

退職金に関する質問や相談をするには

退職金に関する相談先には、勤務先の担当部署、税理士、金融機関、IFAなどがあります。

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相談先相談しやすい内容注意点
勤務先の担当部署退職金規程、WAM加入状況、支給予定日、必要書類個人の資産運用や税務判断までは対応できない場合がある
税理士退職金の税金、確定申告、複数退職金や年金受取の税務資産運用商品の提案は専門外の場合がある
金融機関預金、投資信託、保険、NISAなどの商品相談提案商品が自社取扱商品に限られることがある
IFA退職金の運用、資産配分、NISA・iDeCoの活用、ライフプラン登録状況、手数料、提携金融機関を確認する必要がある

退職金制度そのものは、まず勤務先に確認するのが基本です。そのうえで、税金は税理士、運用や資産配分はIFAなど、相談内容に応じて専門家を使い分けましょう。

専門家によるサポートの重要性

退職金の運用は、単にリターンを狙えばよいわけではありません。生活費、医療費、介護費、住宅修繕費、家族への支援など、将来の支出を見据えたうえで、リスクを取りすぎない設計が必要です。

特に、退職金を受け取った直後は、まとまった資金があることで大きな投資や繰上返済を急ぎたくなることがあります。しかし、手元資金が不足すると、急な支出に対応しにくくなります。

専門家に相談する場合も、提案内容をそのまま受け入れるのではなく、手数料、リスク、解約時の条件、長期的な家計への影響を確認することが大切です。

IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を活用するメリット

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、日本語では独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれます。

IFAは金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやリスク許容度に応じた金融商品の提案や売買取引の支援を行います。退職金の運用方針、NISAやiDeCoの活用、資産配分の見直しなどを相談できる場合があります。

IFAを利用する場合は、以下の点を確認しましょう。

  1. 金融商品仲介業者として登録されているか
    金融庁の登録業者一覧などで確認できます。
  2. 提携している金融機関はどこか
    提携先によって、提案できる商品や手数料体系が変わります。
  3. 手数料や報酬の仕組み
    相談料、販売手数料、信託報酬、継続的な管理費用を確認しましょう。
  4. リスク説明が十分か
    メリットだけでなく、元本割れや価格変動リスクを丁寧に説明してくれるか確認しましょう。

退職金は、長く働いて得た大切な資金です。安心して退職後の生活を送るためにも、制度確認、税金の把握、資金管理の順番で整理していきましょう。

まとめ

社会福祉法人の退職金制度と活用方法のまとめ

社会福祉法人の退職金は、勤務先独自の退職金制度、社会福祉施設職員等退職手当共済制度、中退共、DB、企業型DCなど、どの制度に加入しているかで変わります。

WAM退職手当共済制度では、普通退職の場合、5年勤務で約50万円、10年勤務で約115万円、20年勤務で約572万円、30年勤務で約1,155万円、40年勤務で約1,676万円が見込例として示されています。ただし、実際の支給額は本俸月額、加入期間、退職理由、勤務状況によって異なります。

退職金を受け取る際は、勤務先の就業規則や退職金規程、WAMや中退共などの加入状況、企業型DCの資産残高、退職所得の受給に関する申告書の提出有無を確認しましょう。

退職金は、税金を差し引いた後の手取り額を把握したうえで、使うお金・守るお金・運用するお金に分けて管理することが大切です。

自分だけで判断するのが難しい場合は、勤務先の担当部署、税理士、IFAなどに相談するのも選択肢です。IFAに相談する場合は、登録状況、手数料、提携金融機関、リスク説明を確認したうえで利用しましょう。

退職金や資産運用について悩みや不安がある方は、必要に応じて以下ボタンから相談先を確認してみてください。

出典

厚生労働省「社会福祉法人制度」
独立行政法人 福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度について」
独立行政法人 福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度のご案内 2026年度」
厚生労働省「モデル就業規則について」
中小企業退職金共済事業本部「中小企業退職金共済制度」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
厚生労働省「確定給付企業年金制度」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2260 所得税の税率」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(公開日:2025年4月1日)
横浜市「退職所得の課税の特例」(公開日:2026年5月1日)
金融庁「NISAを知る」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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