社会福祉法人の退職金が2つある理由とは?WAM共済と上乗せ共済の違いを解説

社会福祉法人で働いている方のなかには、「退職金はいくら受け取れるのか」「WAMの退職手当共済と法人独自の退職金は何が違うのか」と気になっている方もいるでしょう。

社会福祉法人の退職金は、勤務先がどの制度に加入しているかによって変わります。代表的なのは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が運営する「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」です。

ただし、すべての社会福祉法人で同じ退職金制度があるわけではありません。法人によっては、WAMの退職手当共済に加えて、都道府県社会福祉協議会などの上乗せ共済や法人独自の退職金制度を設けている場合もあります。

この記事では、社会福祉法人の退職金制度の概要、WAM退職手当共済の計算方法、「2つの退職金」が生じる理由、退職金の相談先について解説します。

退職金の見込額を確認したい方や、退職後の資金計画を考えたい方は参考にしてください。

目次

社会福祉法人における退職金制度の概要

まずは、社会福祉法人の概要と、社会福祉法人でよく使われる退職金制度について確認しましょう。

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づき、法人の所在地などに応じた所轄庁の認可を受けて設立される法人です。福祉施設、保育所、介護施設、障害福祉施設などを運営する法人が多くあります。

退職金制度そのものは、法律上すべての事業者に設置が義務付けられている制度ではありません。ただし、退職金制度を設ける場合は、就業規則や退職金規程に、支給対象者、計算方法、支払方法、支払時期などを定める必要があります。

社会福祉法人で働く方がまず確認したいのは、次の3点です。

  • 勤務先がWAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入しているか
  • 都道府県社会福祉協議会などの上乗せ共済に加入しているか
  • 法人独自の退職金規程や企業年金制度があるか

退職金の目的と役割

退職金は、一定期間勤務した職員に対し、退職後の生活を支える資金として支払われるお金です。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、社会福祉事業に従事する人材を確保し、福祉サービスの安定的な供給と質の向上を図ることを目的として設けられています。

職員側にとっては、退職後の生活費、転職期間中の生活費、老後資金、住宅ローン返済、医療費などに備える重要な資金になります。

一方、法人側にとっては、長く働いてもらうための福利厚生の一つです。退職金制度があるかどうかは、職場選びや転職時の判断材料にもなります。

社会福祉法人の退職金の特徴

社会福祉法人の退職金で代表的なのが、WAMが運営する「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」です。

WAMの退職手当共済事業では、令和7年度時点で共済契約者数は16,972件、加入職員数は882,826人です。共済契約者の98.3%が社会福祉法人であり、社会福祉法人で広く使われている制度といえます。

制度の主な特徴は以下のとおりです。

項目内容
運営主体独立行政法人福祉医療機構(WAM)
根拠法社会福祉施設職員等退職手当共済法
加入社会福祉法人が共済契約を締結するかどうかは任意
加入単位契約を締結した場合、対象施設や対象職員は包括的に加入する仕組み
職員負担WAM制度の掛金は共済契約者が負担し、職員個人の負担はない
支給方法退職者本人の口座へWAMから直接振り込まれる

ただし、すべての社会福祉法人がWAMの共済制度に加入しているわけではありません。勤務先の就業規則、退職金規程、共済制度の加入状況を確認することが重要です。

また、WAMの退職手当共済制度に加入できる対象職員は、職名や雇用形態の名前だけで決まるわけではありません。正規職員のほか、所定労働時間の3分の2以上勤務する職員など、雇用契約の内容によって個別に判断されます。

退職金制度の種類とその違い

社会福祉法人で見られる退職金制度には、主に次のような種類があります。

スクロールできます
制度概要注意点
WAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度社会福祉施設等の職員を対象とした退職手当共済制度法人が共済契約を締結しているか確認が必要
都道府県社協等の退職手当共済地域独自の上乗せ制度として設けられる場合がある制度の有無、掛金、支給条件は都道府県等により異なる
法人独自の退職金制度勤務先の社会福祉法人が独自に設ける退職金制度就業規則・退職金規程で支給条件を確認する
中小企業退職金共済制度中小企業向けの退職金共済制度同じ従業員はWAM制度と中退共に同時加入できない
確定給付企業年金・企業型確定拠出年金退職後に一時金または年金として受け取る企業年金制度制度の有無、受け取り方、運用リスクを確認する

ここで重要なのは、「退職金制度が2つある」といっても、すべての職員が必ず2つの退職金を受け取れるわけではない点です。

例えば、WAMの退職手当共済に加入している職員が、同じ職員として中退共にも加入することはできません。一方で、WAM制度に加えて、都道府県社会福祉協議会などが運営する上乗せ共済に加入している場合は、2種類の退職金が関係することがあります。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の計算方法を知ろう

社会福祉法人の退職金を計算するイメージ

ここでは、WAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度における退職手当金の計算方法を確認します。

退職手当金額は、退職前6か月間の平均本俸月額に応じた「計算基礎額」と、被共済職員期間・退職理由に応じた「支給乗率」を掛けて計算されます。

計算基礎額×支給乗率=退職手当金

主な用語は以下のとおりです。

用語意味
計算基礎額退職前6か月間の本俸月額の平均に応じて政令で定める額。
最低62,000円、最高360,000円で20ランクある
支給乗率被共済職員期間と退職理由に応じて定められる乗率
被共済職員期間被共済職員になった月から、被共済職員でなくなった月までを月単位で計算する期間
算入されない月業務に従事した日数が10日以下の月などは、被共済職員期間に算入されない

被共済職員期間に1年未満の端数月がある場合は、その端数月は切り捨てられます。退職金を試算するときは、単純な入職日から退職日までの年数だけでなく、共済上の期間を確認しましょう。

WAM公式の退職手当金支給額の例

WAMでは、普通退職の場合の退職手当金支給額の例として、次の金額を示しています。

勤務期間・条件退職手当金支給額の例
5年間勤務して退職
退職時本俸月額20万円
49万5,900円
10年間勤務して退職
退職時本俸月額22万円
114万8,400円
15年間勤務して退職
退職時本俸月額26万円
269万7,000円
20年間勤務して退職
退職時本俸月額28万円
572万4,600円

上記はあくまでWAMが示している例です。実際の退職手当金は、退職前6か月間の本俸月額、被共済職員期間、退職理由、業務に従事した月数などによって変わります。

25年勤務した場合の計算例

計算の流れをイメージしやすくするため、次の例で考えてみましょう。

例:被共済職員期間25年、退職前6か月間の平均本俸月額が26万円、普通退職とします。

この場合、計算基礎額が25万円、支給乗率が29.1450であれば、退職手当金は次のように計算できます。

250,000円×29.1450=7,286,250円

ただし、支給乗率や計算基礎額は制度表に基づいて確認する必要があります。自分の退職金額を正確に知りたい場合は、勤務先の担当者やWAMの退職手当金計算シミュレーションで確認しましょう。

退職手当金が支給されない場合

WAMの退職手当共済制度では、条件を満たさない場合、退職手当金が支給されないことがあります

代表的なケースは以下のとおりです。

  • 被共済職員となった日から1年未満で退職した場合
  • 被共済職員期間となる月の合計が12か月未満の場合
  • 自己の犯罪行為その他これに準ずる重大な非行により支給制限に該当する退職の場合
  • 退職した日の翌日から5年が経過し、請求権が時効で消滅している場合
  • 共済契約者が掛金を納付していない場合
  • 合算制度の利用申出をした場合

退職する際は、被共済職員退職届、退職手当金請求書、本人名義の振込口座など、必要書類に不備がないか確認しておきましょう。

なぜ社会福祉法人で2つの退職金が存在することがあるのか

社会福祉法人で「退職金が2つある」と言われることがあります。

これは、WAMの社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加えて、都道府県社会福祉協議会などが運営する退職手当共済や、法人独自の退職金制度がある場合を指すことが多いです。

ただし、すべての社会福祉法人で2つの退職金を受け取れるわけではありません。勤務先がどの制度に加入しているかを確認することが大切です。

  • WAMの退職手当共済制度
  • 都道府県社会福祉協議会などの退職手当共済制度
  • 法人独自の退職金制度や企業年金制度

WAMと都道府県社協等の上乗せ共済

WAMは、社会福祉施設職員等退職手当共済制度を運営する独立行政法人です。社会福祉法人が共済契約を締結し、職員が退職した場合、WAMから退職者本人の口座へ退職手当金が直接振り込まれます。

一方、都道府県社会福祉協議会などが独自に運営する退職手当共済制度もあります。これは、WAMの退職手当共済に上乗せする目的で作られているケースがあります。

例えば、群馬県社会福祉協議会の県単共済では、国の共済法による退職手当金の給付額が公務員に比べて下回っていた状況を背景に、昭和47年4月に群馬県独自の施策として退職手当共済事業が発足したと説明されています。

このように、地域独自の制度がある場合、WAMの退職手当金に加えて、上乗せの退職手当金が関係することがあります。

中退共との違いに注意する

中小企業退職金共済制度(中退共)は、中小企業向けの退職金制度です。

ただし、中退共の公式Q&Aでは、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の共済契約者である事業所も中退共制度の共済契約者になれる一方で、中退共制度に加入する従業員は、社会福祉施設職員等退職手当共済制度には加入できないとされています。

つまり、同じ職員について「WAMの退職手当共済」と「中退共」を重ねて使うことはできません。

退職金が2つあるかどうかを確認するときは、WAM、都道府県社協等の上乗せ共済、法人独自制度、中退共のどれに該当するのかを分けて確認しましょう。

対象者と支払い時期の違い

WAMの退職手当共済制度では、対象となる職員や手続きの流れが定められています。

加入対象となる主な職員は、次のとおりです。

  1. 雇用期間に定めのない職員
  2. 正規職員の所定労働時間の3分の2以上勤務し、1年以上の雇用期間を定めて使用される職員
  3. 正規職員の所定労働時間の3分の2以上勤務し、1年未満の雇用期間を更新して引き続き1年を経過した職員

職名が「非常勤」「嘱託」「パート」などであっても、雇用契約の内容によって加入対象になる場合があります。反対に、勤務時間や雇用期間の条件を満たさない場合は対象外となることがあります。

退職時の手続きでは、共済契約者が作成する「被共済職員退職届」と、退職者が作成する「退職手当金請求書」などをWAMへ提出します。手続き完了後、退職手当金は退職者本人の口座へ振り込まれます。

都道府県社協等の上乗せ共済は、対象者、支給条件、支払時期、必要書類が制度ごとに異なります。勤務先の担当者や加入している共済の窓口で確認しましょう。

社会福祉法人の退職金相談はどこにすれば良いか

社会福祉法人の退職金は、制度が複数関係する場合があります。相談内容によって、適切な相談先を使い分けることが大切です。

主な相談先は以下のとおりです。

スクロールできます
相談内容主な相談先
勤務先に退職金制度があるか勤務先の人事・総務担当、就業規則、退職金規程
WAM退職手当共済の加入状況・手続き勤務先の担当者、WAM退職共済課
都道府県社協等の上乗せ共済勤務先の担当者、都道府県社会福祉協議会など
中退共・企業年金・企業型DC勤務先の担当者、各制度の窓口
退職金にかかる税金税務署、税理士
退職金の活用・資産運用IFA、ファイナンシャルプランナー、金融機関など

退職金の支給額や制度上の条件は、まず勤務先や制度の窓口で確認するのが基本です。資産運用の専門家に相談しても、WAMや勤務先制度に基づく退職金額を確定できるわけではありません。

退職金を一時金で受け取る場合は、原則として退職所得として扱われ、退職所得控除を差し引いたうえで税金が計算されます。退職所得の受給に関する申告書の提出有無や、複数の退職金を受け取る場合の扱いについて不安がある場合は、税務署や税理士に相談しましょう。

IFAが提供するサービス

退職金を受け取った後の資産運用や生活設計については、IFAに相談する選択肢があります。

IFAとは、一般に独立系ファイナンシャルアドバイザーを指す言葉です。金融商品仲介業者として活動するIFAは、金融商品取引業者や登録金融機関の委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行います。

社会福祉法人の職員がIFAに相談する場合、次のような内容が考えられます。

  • 退職金のうち運用に回せる金額の整理
  • 退職後の生活費や年金見込額を踏まえた資産配分
  • NISAやiDeCoの活用方法
  • 預金・債券・投資信託などの組み合わせ
  • 運用開始後の定期的な見直し

ただし、IFAは完全にどの金融機関とも関係がない立場ではありません。相談前には、提携金融機関、取扱商品、相談料、販売手数料、登録状況を確認しましょう。

IFAに相談する前に確認したいこと

退職金は、退職後の生活を支える大切なお金です。運用を検討する場合でも、すぐに全額を投資に回すのではなく、生活資金、予備資金、目的資金、運用資金に分けて考えましょう

IFAに相談する前には、以下の点を確認しておくと安心です。

  • 金融商品仲介業者として登録されているか
  • どの証券会社・金融機関と提携しているか
  • 相談料・販売手数料・信託報酬などの費用
  • 提案される商品のリスクとコスト
  • 特定の商品を強く勧める理由を説明してくれるか
  • 運用後の定期フォローがあるか

登録状況は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」などで確認できます。

退職金の活用では、メリットだけでなく、元本割れリスク、手数料、換金性、税金、運用期間を確認したうえで判断しましょう。

まとめ

本記事では、社会福祉法人の退職金制度の概要、WAM退職手当共済の計算方法、2つの退職金が生じる理由、相談先について解説しました。

社会福祉法人の退職金で代表的なのは、WAMが運営する社会福祉施設職員等退職手当共済制度です。令和7年度時点で加入職員数は約88万人にのぼり、社会福祉法人で広く利用されています。

WAMの退職手当金は、「計算基礎額×支給乗率」で計算されます。計算基礎額は退職前6か月間の本俸月額の平均に応じて決まり、支給乗率は被共済職員期間と退職理由によって決まります。

「2つの退職金」があると言われる場合は、WAM制度に加えて、都道府県社会福祉協議会などの上乗せ共済や法人独自の退職金制度があるケースを指すことが多いです。ただし、すべての社会福祉法人で2つ受け取れるわけではありません。

また、同じ職員がWAMの退職手当共済制度と中退共に同時加入することはできません。制度名だけで判断せず、自分がどの退職金制度の対象なのかを勤務先に確認しましょう。

退職金を受け取った後は、生活資金、予備資金、目的資金、運用資金に分けて考えることが大切です。支給額は勤務先や制度窓口、税金は税務署や税理士、資産運用はIFAやファイナンシャルプランナーなど、相談内容に応じて相談先を使い分けましょう。

出典

厚生労働省「社会福祉法人制度」
独立行政法人福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度について」
独立行政法人福祉医療機構「退職手当共済事業の実施状況」
独立行政法人福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度のごあんない」
独立行政法人福祉医療機構「令和8年度の単位掛金額および納付期限について」
中小企業退職金共済事業本部「退職手当共済制度に加入している事業所です。中退共制度に加入できますか?」
群馬県社会福祉協議会「県単共済(群馬県社会福祉協議会民間社会福祉施設等職員共済)」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

  • URLをコピーしました!

執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

目次