事務次官の退職金はいくら?約6,400万円の概算と計算方法を解説

事務次官は、各省の事務方トップに位置づけられる国家公務員です。そのため、「事務次官の退職金はいくらなのか」「一般の国家公務員と比べてどれくらい高いのか」と気になる方も多いでしょう。

結論からいうと、事務次官の退職金は、指定職8号俸・勤続35年以上・定年退職等の最高支給率を前提に単純計算すると、約6,400万円がひとつの概算目安になります。

ただし、実際の退職手当は、退職時の俸給月額、勤続期間、退職理由、在職中の職責、給与改定、定年引上げに伴う特例などによって変わります。そのため、個別の退職金額を一律に断定することはできません。

この記事では、事務次官の役割、退職金の計算方法、国家公務員の平均退職手当との比較、制度見直しの背景、退職金の活用や相談先までわかりやすく解説します。

目次

事務次官とは?各省の事務方トップとして大臣を補佐する職

まずは、事務次官がどのような役割を担う職なのかを確認しておきましょう。

国家行政組織法では、各省に事務次官を1人置くこととされており、事務次官は「その省の長である大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する」と定められています。

事務次官の役割と権限

事務次官は、各省の事務方トップとして、大臣の職務を支える立場にあります。

政策の最終的な政治判断は大臣などの政務三役が担いますが、事務次官は省内の政策立案、予算、法令、組織運営、人事、関係機関との調整などを統括し、行政実務が円滑に進むように調整します。

つまり、事務次官は「政策を政治的に決定する人」というより、省全体の行政実務を統括し、大臣を支える最上位の官僚と理解するとよいでしょう。

組織内での位置づけ

事務次官は、各省における事務方の最高幹部です。

省内には、官房長、局長、審議官、課長など多くの幹部職がありますが、事務次官はそれらの部局や機関の事務を監督する立場にあります。

その職責の重さから、事務次官には一般職国家公務員の中でも高位の給与体系である指定職俸給表が適用されます。令和8年3月31日付の人事院資料では、内閣府の事務次官は指定職8号俸に位置づけられています。

日々の職務内容

事務次官の日々の職務は、省によって異なりますが、主に次のような内容が考えられます。

  • 大臣への政策・行政運営上の補佐
  • 省内の各部局・機関の事務の総括
  • 重要政策や予算に関する省内調整
  • 国会対応や他省庁との調整
  • 幹部会議や重要会議への出席
  • 組織運営、人事、危機対応などの統括

このように、事務次官は省庁運営の中核を担う職であり、退職手当の計算でも高位の俸給月額や調整額が関係します。

事務次官の退職金はいくら?指定職8号俸なら概算約6,400万円

事務次官の退職金は、民間企業の退職金制度ではなく、国家公務員退職手当法に基づいて計算されます。

そのため、民間企業のように会社ごとの退職金規程で自由に決まるのではなく、俸給月額、退職理由、勤続期間、調整額など、法令や制度に基づく要素で算定されます。

事務次官の退職金の仕組み

国家公務員の退職手当は、基本的に次の構造で計算されます。

退職手当=基本額(退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別支給率)+調整額

基本額は、退職日の俸給月額に、退職理由と勤続期間に応じた支給率をかけて算定します。

調整額は、在職中の職責や職位に応じて加算される部分です。指定職6号俸以上の職員は、調整額の区分でも高い区分に該当します。

なお、退職手当は厚生年金基金から支払われるものではありません。事務次官を含む国家公務員の退職手当は、国家公務員退職手当法に基づく退職給付です。

指定職8号俸を前提にした退職金の概算

指定職俸給表では、8号俸の俸給月額は1,224,000円です。また、平成30年1月1日以降の国家公務員退職手当支給率早見表では、定年退職等で勤続35年以上の場合の支給率は47.709です。

さらに、内閣官房資料では、指定職6号俸以上の調整月額は95,400円です。調整額は、在職期間中の区分に応じた調整月額のうち多いものから60月分を合計して計算します。

これらを使って、指定職8号俸・勤続35年以上・定年退職等を前提に単純計算すると、以下のようになります。

計算例
退職日の俸給月額:1,224,000円
支給率:47.709
調整額:95,400円×60月=5,724,000円

基本額:1,224,000円×47.709=58,395,816円
退職手当概算:58,395,816円+5,724,000円=64,119,816円

概算:約6,412万円

この計算は、指定職8号俸、最高支給率、調整額60月分を単純に当てはめた概算です。

実際の退職手当は、退職理由、勤続期間、給与改定、定年引上げに伴うピーク時特例、退職前の任用状況などによって変わります。そのため、上記は「事務次官級の退職金を理解するための目安」として見てください。

旧データの「7,594万円」は現行制度の金額ではない

過去の資料では、事務次官級のモデル退職手当として7,594万円などの金額が示されていた時期があります。

しかし、その金額は平成18年度ベースのモデルケースであり、現在の支給率や調整額とは異なります。特に、退職手当の支給水準は見直されており、平成30年1月1日以降の退職では最高支給率が47.709になっています。

そのため、現在の記事で「事務次官の退職金は7,594万円」と断定するのは誤解を招きます。現行の俸給表・支給率・調整額に基づいて概算することが重要です。

国家公務員の平均退職金との比較

内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、令和6年度に退職した国家公務員の平均退職手当は次のとおりです。

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退職理由常勤職員
平均支給額
行政職俸給表(一)適用者
平均支給額
1,094.3万円1,389.6万円
定年2,160.1万円2,148.8万円
応募認定2,470.3万円2,277.0万円
自己都合345.4万円331.5万円
その他263.0万円210.0万円

事務次官級の概算退職手当は約6,400万円前後であり、国家公務員全体の定年退職平均と比べるとかなり高い水準です。

ただし、これは事務次官が一般職国家公務員の中でも非常に高い職責を担い、指定職俸給表の上位号俸が適用されるためです。

また、令和6年度の退職手当支給状況では、常勤職員のうち6,000万円以上6,500万円未満の退職手当を受けた人は49人いました。ただし、この人数は事務次官だけを示すものではなく、常勤職員全体の支給額別人数です。

公務員の退職金制度に対する議論と見直しの背景

事務次官の退職金は高額になりやすいため、「公務員の退職金は高すぎるのではないか」といった議論の対象になることがあります。

ここでは、国家公務員の退職手当制度がどのように見直されているのか、なぜ金額が高くなるのかを整理します。

退職手当制度は国家公務員退職手当法に基づく

国家公務員の退職手当は、国家公務員退職手当法に基づいて支給されます。

退職手当には、長く勤務したことへの報償、在職中の賃金の後払い、退職後の生活保障といった性格があります。民間企業の退職金と同じく、退職後の生活設計に大きく関わる制度です。

一方で、国家公務員の退職手当は公的な制度であり、税金によってまかなわれる公務員人件費とも関係します。そのため、民間企業との均衡や財政面を踏まえて見直しが行われてきました。

退職手当の支給水準は官民均衡を踏まえて見直される

国家公務員の退職給付については、官民比較に基づき、おおむね5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことで、官民均衡を確保する方針が示されています。

過去には、民間企業の退職給付水準との比較を踏まえて、国家公務員退職手当法の改正や支給率・調整率の見直しが行われてきました。

つまり、事務次官の退職手当も、個別に自由に決められているわけではありません。国家公務員全体の退職手当制度の中で、俸給月額や職責に応じて算定されています。

事務次官の退職金が高くなる主な理由

事務次官の退職金が高くなる理由は、主に次の3つです。

  • 退職日の俸給月額が高い
  • 長期勤続により高い支給率が適用されやすい
  • 指定職として高い調整額が加算される

退職手当の基本額は、退職日の俸給月額に支給率をかけて計算されます。指定職8号俸の俸給月額は1,224,000円であり、一般的な行政職員より高い水準です。

また、事務次官に就く人は長期間にわたり国家公務員として勤務していることが多く、勤続35年以上で最高支給率が適用されるケースも考えられます。

さらに、指定職6号俸以上の調整月額は95,400円であり、60月分で5,724,000円が調整額として加算されます。これらの要素が重なるため、事務次官級の退職金は高額になりやすいのです。

退職金には税金がかかる

退職金を一時金として受け取る場合、退職所得として税金が計算されます。

退職所得には退職所得控除があり、原則として次の式で退職所得の金額を計算します。

退職所得の金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は、勤続年数によって次のように計算します。

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勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

事務次官級の退職金は金額が大きいため、税引前の退職手当額と実際の手取り額は異なります。正確な税額は勤続年数、退職金額、過去の退職金受給歴などによって変わるため、必要に応じて税務署や税理士に確認しましょう。

事務次官級の退職金や活用方法は誰に相談するべきか

退職金に関する相談先は、相談内容によって分けて考えることが大切です。

事務次官を含む国家公務員の退職手当は制度が複雑であり、資産運用の相談だけで解決できるものではありません。制度、税金、運用の相談先を整理しましょう。

退職手当の正確な金額は公式資料や担当部署で確認する

退職手当の正確な金額は、退職時の俸給月額、退職理由、勤続期間、調整額、定年引上げに伴う特例などによって決まります。

そのため、個別の退職手当を正確に把握したい場合は、公式資料や勤務先の人事・給与担当部署で確認するのが基本です。

確認したい資料は、主に次のとおりです。

  • 国家公務員退職手当法
  • 指定職俸給表
  • 国家公務員退職手当支給率早見表
  • 退職手当の支給状況
  • 退職予定時期別の試算資料

インターネット上の古いモデルケースだけをもとに判断すると、現在の制度とずれる可能性があります。最新の俸給表や支給率を確認することが重要です。

税金は税務署・税理士に確認する

退職金の税金は、退職所得控除、源泉徴収、住民税、過去の退職金受給歴などによって変わります。

特に、退職金額が大きい場合や、複数の退職手当・企業年金・iDeCoの一時金などが関係する場合は、税額の計算が複雑になることがあります。

正確な税額や確定申告の要否については、税務署や税理士に確認しましょう。

受け取った退職金の運用はIFA・FPなどに相談する選択肢がある

退職金を受け取った後の資産運用や生活設計については、IFAやFPなどに相談する選択肢があります。

IFAは「Independent Financial Advisor」の略として使われることが多く、日本では金融商品仲介業者を指す文脈で使われることがあります。金融商品仲介業者は、証券会社や登録金融機関の委託を受けて、有価証券の売買の媒介などを行う者です。

IFAに相談できる主な内容は、退職金を受け取った後の資産配分、運用方針、リスク管理、取り崩し計画などです。

一方で、退職手当の制度解釈や税額の確定はIFAの専門領域ではありません。相談内容に応じて、次のように相談先を分けましょう。

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相談内容主な相談先確認ポイント
退職手当の制度・試算人事・給与担当、公式資料俸給月額
勤続期間
退職理由
調整額
退職金の税金税務署、税理士退職所得控除
源泉徴収
確定申告
資産運用・老後資金IFA、FP、金融機関生活費
リスク許容度
手数料
運用方針
相続・贈与税理士、弁護士、司法書士など相続税
遺言
家族への資産承継

退職金はまとまった資金になりやすいため、短期間で大きなリターンを狙うよりも、生活資金・予備資金・運用資金を分けて考えることが大切です。

IFAに相談する前に確認すべき注意点

IFAに相談する場合は、次の点を確認しておきましょう。

  • 金融商品仲介業者として登録されているか
  • 所属金融機関や取扱商品の範囲
  • 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用
  • 提案商品のリスクを十分に説明してくれるか
  • 退職後の生活費や税金を踏まえた提案になっているか
  • 運用後のフォロー体制があるか

「中立的」「独立系」といった言葉だけで判断せず、登録状況、手数料、商品提案の理由を確認することが重要です。

事務次官の退職金は現行制度で概算約6,400万円が目安

事務次官は、各省の事務方トップとして大臣を補佐し、省務を整理し、各部局や機関の事務を監督する重要な職です。

その退職金は、民間企業の退職金制度ではなく、国家公務員退職手当法に基づいて計算されます。

指定職8号俸、勤続35年以上、定年退職等の支給率47.709、指定職6号俸以上の調整月額95,400円を前提に単純計算すると、事務次官級の退職手当は約6,412万円がひとつの概算目安です。

ただし、実際の金額は、退職時期、退職理由、勤続期間、俸給月額、給与改定、定年引上げに伴う特例などによって変わります。過去資料にある7,000万円台のモデルケースを、そのまま現在の金額として扱わないよう注意しましょう。

退職金を確認するときは、次の点を押さえておくことが大切です。

  • 事務次官の退職手当は国家公務員退職手当法に基づく
  • 指定職8号俸の俸給月額は1,224,000円
  • 勤続35年以上の定年退職等では支給率47.709が目安
  • 指定職6号俸以上の調整月額は95,400円
  • 税引前の退職手当額と手取り額は異なる
  • 退職金の運用は生活資金を確保したうえで検討する

退職手当の正確な金額は公式資料や担当部署で、税金は税務署や税理士で、運用方針はIFAやFPなどで確認するのが基本です。

事務次官の退職金は金額が大きいからこそ、制度・税金・運用を分けて理解し、将来の生活設計に合わせて慎重に活用しましょう。

出典

e-Gov法令検索「国家行政組織法」
e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
人事院「指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の定め並びに職務の級の定数の設定及び改定に関する意見の申出」(公開日:2026年3月31日)
人事院「給与表」
内閣官房内閣人事局「給与・退職手当」
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表」
内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
人事院「官民の退職給付」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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