看護師の退職金はいくら?勤続年数別の相場の目安と少ない理由、計算方法を解説

看護師の退職金は、勤務先がどの退職金制度を使っているかと勤続年数で大きく変わります。看護師だけを対象にした退職金の平均額は公的統計で確認しにくいため、勤務先の制度ごとに目安を確認するのが確実です。

たとえば、社会福祉法人の施設で福祉医療機構(WAM)の退職手当共済に加入している場合、勤続10年で約115万円、勤続20年で約572万円が目安です(本俸月額22万円・28万円の場合)。

この記事では、勤務先別・勤続年数別の退職金の目安、看護師の退職金が少ないといわれる理由、計算方法、多く受け取るために確認したいポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 公立病院・社会福祉法人・中退共それぞれの勤続30年の退職金の目安(約1,224万円・約1,155万円・約421万円)
  • 病院の設置主体別の平均基本給与額(公立288,641円、医療法人238,558円)
  • 正規雇用看護職員の離職率(2024年度11.0%)
  • 勤続20年・30年の退職所得控除額(800万円・1,500万円)

目次

看護師の退職金はいくら?勤続年数別の目安

看護師の主な勤務先ごとに、勤続10年・20年・30年の退職金の目安をまとめると次のとおりです。

勤務先(制度)勤続10年勤続20年勤続30年
公立病院(地方公務員・定年退職などの場合)約251万円約738万円約1,224万円
公立病院(地方公務員・自己都合退職の場合)約151万円約590万円約1,042万円
社会福祉法人(WAMの退職手当共済)約115万円約572万円約1,155万円
民間病院・クリニック(中退共・掛金月額1万円)約127万円約267万円約421万円

※公立病院は給料月額を30万円と仮定し、国家公務員の支給率で計算した基本額(調整額は含まない)。WAMは福祉医療機構の支給例(本俸月額22万円・28万円・33万円)。中退共は厚生労働省「基本退職金額表」の基本退職金

公立病院や社会福祉法人の制度では、勤続20年を超えると支給額が大きく伸びます。一方、中退共は掛金月額と納付期間で金額が決まり、掛金月額1万円の場合は勤続30年で約421万円です。

なお、福祉医療機構の2024年度の支給実績は約8万2千人・約1,406億円で、1人あたりに直すと約171万円です。これは社会福祉施設の職員全体の実績で、看護師以外の職員や勤続年数の短い退職者も含みます。公立病院・国立病院機構の計算方法は「公務員看護師の退職金計算方法」、WAMの早見表は「社会福祉法人の退職金」で詳しく解説しています。

設置主体によって基本給にも差がある

日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査 報告書」によると、2025年度の勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の平均基本給与額は、病院の設置主体によって次のように異なります。

設置主体平均基本給与額平均税込給与総額
全体254,286円340,278円
国立272,456円362,027円
公立288,641円368,081円
医療法人238,558円325,439円
社会福祉法人257,186円347,433円

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(勤続10年・31〜32歳・非管理職)

退職金が基本給をもとに計算される制度では、基本給の差がそのまま退職金の差になります。

看護師の退職金が少ないといわれる理由

転職が多く、勤続年数が短くなりやすい

多くの退職金制度は勤続年数が長いほど支給率が上がる仕組みです。日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%、既卒採用者では16.1%でした(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」)。転職を重ねると、それぞれの職場での勤続年数が短くなり、退職金が積み上がりにくくなります。

退職金の計算に夜勤手当などが含まれないことがある

看護師の給与には夜勤手当などの手当が含まれ、前述の調査では平均基本給与額が税込給与総額の約75%でした。退職金の計算のもとになるのが基本給だけの制度では、手当を含めた月収の印象より退職金が少なく感じられることがあります。

自己都合退職では支給率が下がる

多くの制度で、自己都合退職の支給率は定年退職などより低く設定されています。国家公務員の支給率では、勤続10年の自己都合退職は定年退職などの約6割です。詳しくは「自己都合退職でも退職金はもらえる?」をご覧ください。

退職金制度がない職場もある

クリニックや小規模な医療機関では、退職金制度そのものがない場合もあります。求人票の「退職金あり」の記載だけで判断せず、就業規則や退職金規程で支給条件まで確認しましょう。

看護師の退職金の計算方法

退職金の計算方法は勤務先の制度によって異なります。看護師の主な勤務先で使われる計算式は次のとおりです。

勤務先(制度)計算式確認したいポイント
公立病院(地方公務員)退職日の給料月額×支給率+調整額自治体の退職手当条例、退職理由別の支給率
国立病院機構など法人の職員退職手当規程に基づいて計算法人の規程、勤続期間の通算の扱い
民間病院(独自の退職金規程)退職時の基本給×勤続年数に応じた支給率など基本給に含まれる手当、自己都合の係数、最低勤続年数
社会福祉法人(WAMの退職手当共済)計算基礎額×支給乗率自分が被共済職員か、退職前6か月の本俸月額
クリニックなど(中退共)掛金月額と納付月数で決まる加入の有無、掛金月額

ポイント制や定額制を採用している病院もあります。どの方式でも、まずは勤務先に退職金規程と試算額を確認するのが確実です。中退共の仕組みは「中退共の退職金」で解説しています。

看護師が退職金をできるだけ多く受け取るためのポイント

ポイント内容
勤続年数の区切りを確認するあと数か月で勤続年数が1年増え、支給率が上がる場合もある
自己都合退職の減額幅を確認する退職理由ごとの支給率表で差を確認する
転職先の退職金制度を比べる給与だけでなく、退職金制度や企業年金の有無も比較する
基本給に何が含まれるかを確認する退職金の計算に使う「算定基礎額」がどの手当を含むかは規程で異なる
受け取り時期と必要書類を確認する支払時期や「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れない

退職金の支払時期は「退職金はいつ振り込まれる?」も参考にしてください。

看護師の退職金にかかる税金

退職金は「退職所得」として給与とは別に課税され、勤続年数に応じた退職所得控除があります。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

たとえば勤続20年の退職所得控除額は800万円、勤続30年は1,500万円です。前述の目安の多くはこの範囲内に収まるため、税金がかからないケースも少なくありません。受け取る前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと20.42%が源泉徴収されるので注意しましょう。退職した年の手続きは「退職金と年末調整」で解説しています。

看護師の退職金の相談先

相談したい内容主な相談先
退職金の支給条件・計算方法・試算額勤務先の人事・総務担当
退職金の未払い・トラブル労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士
退職金の税金税務署、税理士
退職金の使い方・資産運用FP、IFAなどの金融アドバイザー

退職金を受け取ったら、生活費や予備資金を確保したうえで、残りをどう活用するかを考えましょう。退職金の運用をIFAなどに相談する場合は、手数料や取り扱う商品の範囲を事前に確認しておくと安心です。

まとめ:看護師の退職金は勤務先の制度と勤続年数で決まる

項目要点
公立病院・社会福祉法人公立病院(給料月額30万円)は勤続20年の定年退職などで約738万円、社会福祉法人(WAM)は勤続20年で約572万円が目安
中退共クリニックなどで掛金月額1万円なら、勤続20年で約267万円が目安
少ないといわれる理由転職が多い、退職金の計算に手当が含まれない、自己都合退職の減額など
退職前の確認勤続年数の区切り・自己都合の支給率・転職先の制度
税金退職所得控除の範囲内なら税金はかからない

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執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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