市議会議員に退職金はある?現行制度と旧議員年金の扱いを解説

市議会議員に退職金はあるのか、一般の公務員と同じように退職手当を受け取れるのか、気になっている人もいるだろう。

結論からいうと、現行制度では、市議会議員に一般職公務員のような退職金はない。さらに、地方議会議員の年金制度も平成23年6月1日に廃止されているため、現在は議員各自が国民年金等に加入する形になっている。

ただし、平成23年5月以前に地方議会議員として在職していた人には、旧制度の経過措置として退職年金や退職一時金の対象になる場合がある。

本記事では、市議会議員の退職金の有無、旧制度の計算方法、一般職公務員との違い、退職金がない場合の資金準備や相談先について解説する。

目次

市議会議員の退職金について

市議会議員の退職金や報酬について考えるイメージ

まずは、市議会議員の役割と、退職金制度の基本を確認しておこう。

市議会議員は地方自治体の議会を構成する議員であり、会社員や一般職公務員とは収入や社会保障の仕組みが異なる。そのため、退職金についても一般職公務員と同じように考えることはできない。

市議会議員とは

市議会議員とは、市民の選挙によって選ばれ、市民の代表として市政に関わる議員のことだ。市議会は、市長や議員から提出された議案を審議し、市としての意思を決定する役割を担っている。

主な仕事には、条例の制定・改正・廃止、予算の決定、決算の認定、市政のチェック、請願・陳情の審査、意見書の提出などがある。

なお、市議会議員が制定・改廃するのは主に「条例」であり、国会議員のように「法律」を制定する立場ではない。国会議員、都道府県議会議員、市議会議員は、いずれも選挙で選ばれる議員だが、制度や役割は異なる。

現行制度では市議会議員に退職金はない

現行制度では、市議会議員に退職金はない。

市議会議員には、地方自治法に基づいて議員報酬が支給される。また、条例により期末手当や費用弁償が支給される場合もある。ただし、一般職公務員のような退職手当制度とは別であり、任期満了や落選、辞職によって退職金が支給される仕組みではない。

市議会議員の収入を確認するときは、「給与」や「基本給」ではなく、「議員報酬」「期末手当」「費用弁償」「政務活動費」などの違いを理解しておく必要がある。

特に政務活動費は、議員の調査研究その他の活動に資するために交付される経費であり、個人の生活費や退職金ではない。自治体ごとの条例や収支報告のルールに従って使う必要がある。

地方議会議員の年金制度は平成23年6月1日に廃止された

市議会議員については、退職金だけでなく「議員年金」も現在は新たに加入できない。

地方議会議員年金制度は、かつて地方公務員等共済組合法に基づいて運営されていた制度である。しかし、議員定数の削減や制度財政の悪化などを背景に、平成23年6月1日に廃止された。

制度廃止後に市議会議員になった人は、旧議員年金の新規対象にはならない。現在は、議員各自が国民年金等に加入し、必要に応じてiDeCoやNISAなども活用しながら老後資金を準備することになる。

一般職公務員との退職金の違い

一般職の地方公務員には、各自治体の条例や退職手当制度に基づき、勤続年数や退職理由に応じた退職手当が支給される。

一方、市議会議員は選挙で選ばれる特別職であり、議員報酬や期末手当などの仕組みは一般職員とは異なる。任期は通常4年であり、再選されるかどうかも選挙結果によって決まる。

そのため、市議会議員は「長く勤めれば退職金が増える」という一般職公務員のような制度ではない。市議会議員を目指す場合は、議員報酬だけでなく、年金、健康保険、退職後の生活資金まで含めて資金計画を考えることが重要だ。

市議会議員の退職金の算出方法|現行制度では計算式はない

市議会議員の退職金の有無を確認するイメージ

市議会議員の退職金を調べると、過去の議員年金や退職一時金の計算式が出てくることがある。

しかし、現行制度では市議会議員に退職金はないため、現在の市議会議員やこれから市議会議員になる人に使える「退職金の計算式」は存在しない。

現職・新規当選者に退職金の計算式はない

市議会議員の収入は、主に自治体の条例で定められた議員報酬や期末手当によって構成される。

議員報酬は自治体ごとに異なり、議長、副議長、常任委員長、一般議員などの役職によって金額が変わることもある。期末手当の有無や支給月数も自治体の条例で定められる。

ただし、議員報酬や期末手当があることと、退職金があることは別の問題だ。任期満了や落選、辞職によって一般職員のような退職金が支給されるわけではない。

旧制度の対象者には退職年金・退職一時金の経過措置がある

平成23年5月以前に市議会議員として在職していた人は、旧制度の経過措置として退職年金や退職一時金の対象になる場合がある。

たとえば、市議会議員共済会では、平成23年5月までの在職期間が12年以上ある人は、退職年金の給付を受けられる場合があり、退職一時金を選択できる場合もある。

また、平成23年6月1日現在で現職議員であり、平成23年5月31日以前の在職期間がある人については、議員在職中に係る掛金および特別掛金の総額の80%を基準とした退職一時金の給付を受けられる場合がある。

この経過措置は、制度廃止前の在職期間に関するものであり、制度廃止後に初めて市議会議員になった人には適用されない。

旧制度の退職年金の計算例は参考情報として見る

旧制度の退職年金は、平均標準報酬年額と在職期間に応じた給付率をもとに計算されていた。

旧制度の退職年金の基本的な考え方

退職年金の年額=平均標準報酬年額×{36/150+0.72/150×(在職年数−12年)}

※在職期間が30年を超える場合は、30年として計算される。

ただし、この計算式は旧制度の経過措置に関するものである。現行制度の市議会議員が将来受け取る退職金を計算するための式ではない。

旧制度の対象になる可能性がある場合は、市議会議員共済会や所属していた議会事務局に確認するのが確実だ。過去の在職期間、退職一時金の受給歴、退職年金の選択状況などによって扱いが変わる可能性がある。

市議会議員の退職金に対する議論と現状

市議会議員の退職金や年金制度の議論を表すイメージ

現在の市議会議員をめぐる議論は、「高額な退職金が支給されている」というよりも、「退職金や議員年金がない中で、議員の生活保障やなり手不足にどう対応するか」という問題に近い。

ここでは、旧制度が廃止された背景と、現在の議論を整理する。

旧議員年金は財政悪化などを背景に廃止された

地方議会議員年金制度は、かつて地方議会議員を対象にした年金制度として運営されていた。

しかし、市町村合併や議員定数の削減、議員報酬の削減などにより、制度を支える現職議員数や掛金収入が減少し、財政状況が悪化した。その結果、平成23年6月1日に制度は廃止された。

制度廃止後も、廃止前に受給権が発生していた人や、制度廃止時点で現職だった人には経過措置がある。そのため、旧制度に基づく退職年金や退職一時金がすべて消滅したわけではない。

一方で、制度廃止後に新たに市議会議員になった人は、旧議員年金の対象にはならない。現在の市議会議員が老後資金を準備するには、国民年金等の公的年金に加え、自助努力による資産形成が必要になる。

現在は厚生年金加入を求める議論がある

地方議会議員年金制度の廃止後、地方議会議員の生活保障やなり手不足を背景に、地方議会議員を厚生年金へ加入できるようにする議論が続いている。

全国市議会議長会などの資料では、厚生年金への地方議会議員加入に関する意見書等の可決状況として、令和7年10月時点で、都道府県議会76.6%、市区議会69.6%、町村議会78.3%が示されている。

この議論は、退職金を復活させるというよりも、地方議会議員の社会保障をどのように整えるかという論点である。制度が今後変わる可能性はあるが、現時点では、市議会議員という資格だけで一般職員のような退職金や旧議員年金が新たに発生するわけではない。

議員報酬だけでなく退職後の資金計画が重要

市議会議員は、選挙によって任期が決まる立場である。次回選挙で再選されるとは限らず、任期途中で辞職する可能性もある。

そのため、市議会議員を目指す人や現職議員は、議員報酬だけでなく、落選後・引退後の収入や年金、健康保険、生活費をあらかじめ考えておく必要がある。

特に、会社員から市議会議員になる場合は、厚生年金や勤務先の退職金制度から外れる可能性がある。自営業者や個人事業主と同じように、国民年金、国民健康保険、iDeCo、NISA、預貯金などを組み合わせた資金計画を検討しておきたい。

市議会議員に退職金がない場合の対策と相談先

退職金がない場合の老後資金を相談するイメージ

市議会議員には一般的な退職金がないため、退職金をどう運用するかよりも、まず「退職金がない前提でどう資産を準備するか」を考える必要がある。

ここでは、退職後の生活資金を考えるときの基本と、相談先の使い分けを整理する。

まずは公的年金・保険・退職後の収入を確認する

市議会議員の老後資金を考えるときは、まず以下の項目を確認しよう。

  • 現在の年金加入状況
  • 国民年金・厚生年金の加入期間
  • 会社員時代の退職金や企業年金の有無
  • 議員報酬以外の収入
  • 落選・引退後の収入見込み
  • 住宅ローン、教育費、医療費、介護費などの支出

議員としての年金制度がないからといって、老後資金を準備できないわけではない。重要なのは、議員報酬の一部をどのように貯蓄・運用へ回すか、引退後にどの程度の生活費が必要かを早めに把握することだ。

NISAやiDeCoは加入条件とリスクを確認して活用する

退職金がない場合、自分で老後資金を準備する方法として、NISAやiDeCoを活用する選択肢がある。

2024年からのNISAは、非課税保有期間が無期限となり、年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円である。長期で資産形成を考える人にとって、活用しやすい制度といえる。

一方で、NISAを使っても投資元本が保証されるわけではない。市議会議員は任期や選挙結果によって収入が変わる可能性があるため、生活費や税金、緊急資金を確保したうえで投資に回す金額を決める必要がある。

iDeCoについては、国民年金の加入区分や他の年金制度への加入状況によって、加入資格や掛金上限が変わる。議員以外の仕事をしている場合や、会社員との兼業がある場合は、自分の年金区分を確認してから検討しよう。

旧制度の受給資格は共済会や議会事務局に確認する

平成23年5月以前に市議会議員として在職していた人は、旧制度の退職年金や退職一時金の対象になる可能性がある。

この場合は、IFAや金融機関に相談する前に、市議会議員共済会や在職していた自治体の議会事務局へ確認することが重要だ。

確認するときは、以下の情報を整理しておくとよい。

  • 市議会議員としての在職期間
  • 平成23年5月31日以前の在職歴
  • 退職一時金を過去に受け取ったか
  • 退職年金を選択しているか
  • 再就職や他の公的年金との重複期間の有無

旧制度は経過措置が複雑であり、個別事情によって受給資格や金額が変わる。自己判断で計算するのではなく、制度を所管する窓口に確認しよう。

資産運用の相談先としてIFAを検討する

退職金がない前提で老後資金を準備する場合、資産運用の相談先としてIFAを検討する方法がある。

IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、独立系ファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれる。日本では金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやニーズに合った長期の資産形成のために、金融商品の選定、制度活用、売買取引の支援などを行う。

IFAに相談すると、NISAやiDeCo、投資信託、債券、株式などを含めた資産形成の選択肢を整理しやすくなる。

ただし、IFAに相談すれば必ず利益が出るわけではない。投資には元本割れのリスクがあり、提案される金融商品には手数料や運用管理費用がかかる。相談前には、提携金融機関、手数料体系、取り扱い商品、利益相反の説明を確認しておこう。

相談内容によって専門家を使い分ける

市議会議員の退職金や老後資金に関する相談先は、悩みの内容によって異なる。

相談内容主な相談先
旧議員年金・退職一時金の受給資格市議会議員共済会、議会事務局
議員報酬・期末手当・政務活動費自治体の議会事務局
税金・確定申告・所得控除税務署、税理士
年金・健康保険の手続き年金事務所、市区町村窓口、社会保険労務士
資産運用・NISA・iDeCoIFA、金融機関、ファイナンシャルプランナー
未払い・制度上の争い弁護士

退職金がないことへの不安は、制度確認だけでは解消しにくい。公的年金、議員報酬、貯蓄、投資、退任後の働き方をまとめて考えることで、現実的な資金計画を立てやすくなる。

まとめ

市議会議員の退職金と老後資金についてまとめるイメージ

現行制度では、市議会議員に一般職公務員のような退職金はない。地方議会議員年金制度も平成23年6月1日に廃止されており、制度廃止後に新たに市議会議員になった人は旧議員年金の対象にならない。

一方で、平成23年5月以前に市議会議員として在職していた人には、旧制度の経過措置として退職年金や退職一時金の対象になる場合がある。対象になる可能性がある人は、市議会議員共済会や議会事務局へ確認しよう。

市議会議員を目指す人や現職議員は、退職金がない前提で、国民年金等の公的年金、議員報酬、貯蓄、NISAやiDeCoなどを組み合わせて資金計画を立てることが重要だ。

資産運用に迷う場合はIFAや金融機関、税金は税理士、旧制度の受給資格は共済会や議会事務局など、相談内容に応じて専門家を使い分けよう。

出典

宝塚市「市議会議員には、退職金や年金がありますか。」
市議会議員共済会「地方議会議員年金制度の沿革」
市議会議員共済会「退職年金」
市議会議員共済会「退職一時金」
青森市「市議会議員 年金制度について」
浦安市議会「市議会のしごと」
e-Gov法令検索「地方自治法」
全国市議会議長会「厚生年金への地方議会議員の加入について」
金融庁「NISAを知る」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」

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執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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