- 中退共退職金の平均額が知りたい
- 退職金の計算方法を理解したい
- 退職金に関する対策を知りたい
中小企業退職金共済制度(中退共退職金制度)は、独力で退職金の準備が難しい中小企業のための制度である。
本記事では、中退共退職金制度の概要、加入条件、掛金に対して受給できる退職金額の目安について解説する。
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中退共退職金とは何か
中退共退職金制度は、中小企業の従業員のための国の退職金制度である。
中退共退職金の定義と特徴
中退共退職金制度とは、中小企業の事業主と独立行政法人である勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が契約を結び、従業員の退職金を積み立てる制度である。
毎月、事業主が掛金を拠出して銀行へ納付する。退職の際には、直接退職金が従業員へ支払われる仕組みだ。
掛金は全額が事業主負担であるが、掛金の一部に国からの補助があること、掛金の全額を損金算入できるなど税制面の優遇措置があることは事業主側のメリットといえる。
ただし、中退共の加入対象者は従業員のみで、経営者や役員は加入できない。
退職の際、事業主は「被共済者退職届」を中退共へ提出し「退職金共済手帳(請求書)」を退職者へ渡す。その後、退職者は直接中退共へ退職金請求を行い退職金を受け取ることになる。
中退共退職金が発生するシチュエーション
中退共退職金は加入期間に比例して金額が増える仕組みだが、加入期間が1年(12ヶ月)未満であると支給の対象外となる。退職金額は0円、まったく受け取れないので注意が必要だ。
加入期間が1年(12ヶ月)を超えれば退職金の支給対象となるが、加入期間が2年(24ヶ月)未満では、退職金の金額は積み立てた掛金を下回ることになる。
加入期間が2年以上、3年半(42ヶ月)の間で、ようやく退職金の金額は掛金と同等額になり、加入期間がそれ以上になれば掛金以上の退職金が受け取れる。
中退共退職金と通常の退職金との違い
中退共退職金は、中小企業が国の援助を受けつつ、退職金を社外で準備する共済型のシステムである。そのため、退職金は会社から支払われるのではなく、中退共から直接退職者へ支払われる。
対して、通常の退職金とは、企業独自で退職金制度を持っていて、退職時には会社から退職金が支払われるものをさす。会社が自助努力で退職金を準備できる体力を持ち合わせていれば、その資金を事前に積み立てておく義務はない。
中退共退職金の場合、事業主の掛金の額と加入期間に応じて退職金(基本退職金+付加退職金)が計算されるため、会社内の職位や貢献度などは考慮されない。
一方、通常の退職金では、企業独自のルールに則って支給されるため、同じ勤続年数でも職位や貢献度により退職金の額が異なるのが一般的である。
中退共退職金の平均額
中退共退職金はどれくらい支給されるのか?
加入年数、掛金、退職金支給額の平均を確認してみよう。
平均額を決める要因
事業主が支払う中退共の掛金は、月当たり5,000円から30,000円までの幅であらかじめ設定されている16通りから選ぶことができ、金額は従業員ごとに任意に選択できる。
また、掛金の変更は可能である。
前述したとおり、従業員が受け取る退職金の額は、月々の掛金の金額と加入期間に比例する。
中退共退職金制度の業界別加入条件
中退共退職金制度は中小企業を対象としたものであるが、従業員数と資本金により業種ごとの加入条件がある。下記、業種別に従業員数または資本金のどちらかの要件を満たしている企業に加入資格がある。
業種別の加入条件
一般業種(製造等) | 卸売業 | サービス業 | 小売業 | |
---|---|---|---|---|
常用従業員数資本金・出資金 | 300人以下又は3億円以下 | 100人以下又は1億円以下 | 100人以下又は5千万円以下 | 50人以下又は5千万円以下 |
年齢や勤続年数による違い
中退共退職金の金額は、基本退職金と付加退職金からなる。
基本退職金は固定額で、利回り1%を想定して定められている。
付加退職金は、運用成績が想定を上回れば基本退職金に上乗せされるが、運用成績が良くない場合はつかない。年度ごとに支給率は決定される。
詳しくは後述するので参考にしてほしい。
退職金の金額は、掛金の金額と従業員の加入期間により異なるが、令和3年度の中退共退職金の1件あたりの平均額は、約138.5万円(平均掛金納付月数は126月、平均掛金9,573円)であった。
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退職金計算のポイント
中退共退職金の支給額を掛金、加入年数ごとに確認してみよう。
基本的な退職金の計算方法
加入期間が一定期間未満の場合、退職金の支払いを受けられないことや、受け取る退職金の金額が掛金を下回る場合があることは前述の通りである。
いくら積み立てて、何年加入すれば、どれくらい退職金がもらえるのか、いくつかの掛金を抜粋して表記している。下表を参考にしてほしい。
なお、下表の金額は「基本退職金」であり、「付加退職金」は含まれていない。
また、表中の記載はないが、掛金がいくらであっても加入期間が1年未満の場合、退職金0円である。
表から分かる通り、加入期間3年以上になったところで基本退職金の額が拠出金累計額を上回る。
なお、この基本退職金の金額は金利1%の想定で算出されたものであるため、今後の金利動向により支給額が変動することもあり得ることに留意しておきたい。
基本退職金額表(*抜粋)
加入期間 | 掛金 5,000円 | 掛金 10,000円 | 掛金 18,000円 | 掛金 30,000円 |
---|---|---|---|---|
1年(12月) | 18,000 | 36,000 | 64,800 | 108,000 |
2年(24月) | 120,000 | 240,000 | 432,000 | 720,000 |
3年(36月) | 180,000 | 360,000 | 648,000 | 1,080,000 |
5年(60月) | 304,100 | 608,200 | 1,094,760 | 1,824,600 |
10年(120月) | 632,800 | 1,265,600 | 2,278,080 | 3,796,800 |
30年(360月) | 2,106,550 | 4,213,100 | 7,583,580 | 12,639,300 |
40年(480月) | 2,958,950 | 5,917,900 | 10,652,220 | 17,753,700 |
*懲戒解雇の場合、退職金の減額制度あり( 単位:円)
専用サイト(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)を利用すれば、より具体的な退職金額をシミュレーションできる。
中退共退職金の特殊な計算方法
中退共退職金は基本退職金に、運用次第で付加退職金が上乗せされることになっている。
ただし、付加退職金がつくためには加入期間に条件がある。加入期間3年半(42ヶ月)未満で退職した場合には、付加退職金は加算はない。
付加分の対象となるのは、加入期間が3年半(43ヶ月)以上であり、以降の12ヶ月ごとに定められた支給率で加算されることになっている。なお、付加退職金は累計額を基本退職金に上乗せして支給されることになる。
下表は年ごとの付加退職金支給率である。
中退共退職金の税制優遇措置
中退共退職金制度は、事業主側、従業員側の双方に税制優遇措置がある。
事業主は掛金を全額損金へ算入できるため税金を抑えられる。
従業員は、一括で退職金を受け取れば、退職所得控除の適用を受けられる。ただし、控除額の計算に必要な勤続年数は、中退共退職金の加入期間である。
たとえば、勤続30年でも、中退共退職金の加入期間が15年であれば、退職控除退職控除の勤続年数は15年で計算することになる。
退職金にかかる税金の計算や、退職金の税制優遇措置などを詳しく知りたい場合は、専門家へ相談するのも一つの方法だ。
中退共退職金対策とIFAのサポート
IFAとは、特定の金融機関に所属しない独立系ファイナンシャルアドバイザーのことである。退職金の資産運用やリタイア後のライフプランなどの相談にのってくれる専門家だ。
退職金の受け取り方や運用方法について迷ったらIFAへ相談してみてはいかがだろうか。
個々の状況に合ったアドバイスが得られるだろう。
中退共退職金に対する対策
中退共退職金は、一括で受け取ることも、分割(年金方式)で受け取ることもできる。一括で受け取る場合は、退職所得控除が適用できるため、所得税の優遇措置を受けられる。
一方、年金方式での受取は雑所得扱いで、公的年金等にかかる所得税率を適用する。
中退共退職金の受取り方法は3つ。
- 一括受取り
- 全額分割払い
- 一部分割払い(併用払い)
退職者のニーズに合わせた受け取り方が可能であることはありがたい。
ただし、分割払いには、退職時の年齢や退職金の金額に要件があるため、全ての人が利用できるわけではないことは覚えておこう。
IFAの専門家が提供するサポート内容
IFAは特定の金融機関に属せず、独立した立場からお客様にアドバイスを行っている。
節税、資金運用、投資、キャリアプランなどサポートできる内容は多岐にわたる。
退職金の活用法を始め、ライフプランの相談、資産運用など顧客の悩みを丁寧にヒアリングして適切なアドバイスをしてくれる頼もしい存在だ。中退共退職金についても相談が可能である。
不安や悩みがあるときは、気軽にIFAへ相談してみよう。
専門家のアドバイスにより、最良の選択ができるだろう。
まとめ
中退共退職金は中小企業のための退職金制度である。
本記事では、中退共退職金の概要や加入期間と掛金の額により退職金額が変動することを解説した。
中退共退職金は、退職者が直接、中退共へ退職金の請求をする仕組みであるので、手続きや税金面などの悩みや不安がある場合、自己解決することは難しいかもしれない。
独立系ファイナンシャルアドバイザーであるIFAは、中退共退職金についても精通しているため、専門的見地から適切なアドバイスが受けられる。
「退職金ナビ」を利用してIFAに相談をしてみてはいかがだろうか。
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