自衛官候補生や任期制自衛官として働く方の中には、「任期満了時にいくら受け取れるのか」「途中で退職した場合も退職金は出るのか」「受け取ったお金をどう使えばよいのか」と不安に感じている方もいるでしょう。
結論からいうと、任期制自衛官には、任期を満了した際に特例退職手当が支給されます。一般的には「任期満了金」と呼ばれることもあります。
防衛省の自衛官募集サイトでは、任期満了時の退職手当について、2年間の勤務で約89万円、3年間の勤務で約136万円、2任期目で約186〜190万円と案内されています。
ただし、金額は採用年度、俸給、任期、所属、制度改定などによって変わる可能性があります。この記事では、自衛官候補生・任期制自衛官の任期満了金の目安、計算方法、税金、退職後の活用方法をわかりやすく解説します。
自衛官候補生・任期制自衛官の退職金とは

自衛官候補生・任期制自衛官の退職金を考えるときは、まず「任期満了時に支給される特例退職手当」と「通常の退職手当」を分けて理解することが大切です。
任期制自衛官は、あらかじめ決められた任期で勤務する自衛官です。任期を満了した時点で、継続任用を希望するか、民間企業への就職や進学などへ進むかを選択できます。
自衛官候補生・任期制自衛官の仕組み
防衛省の募集サイトでは、任期制自衛官として「2等陸・海・空士」が案内されています。応募資格は18歳以上33歳未満で、陸上自衛官は2年、海上・航空自衛官は3年を1任期として勤務するのが基本です。
任期満了時には、各自衛隊で設定された任期に応じて、継続任用、民間企業への就職、大学などへの進学を選ぶことができます。希望者には、曹や幹部へ進む道もあります。
この記事では、主に任期制自衛官が任期を満了した際に受け取る特例退職手当(任期満了金)を中心に解説します。
任期満了金は「任期満了時の特例退職手当」
任期制自衛官には、任期満了ごとに特例退職手当が支給されます。一般的に「任期満了金」と呼ばれることがありますが、制度上は退職手当の一種です。
防衛省の自衛官募集サイトでは、任期満了時の退職手当について次のように案内されています。
| 区分 | 1任期目 | 2任期目 | 累計の目安 |
|---|---|---|---|
| 陸上自衛官 | 約89万円 (2年勤務) | 約186〜190万円 (2任期目) | 約275〜279万円 |
| 海上・航空自衛官 | 約136万円 (3年勤務) | 約186〜190万円 (2任期目) | 約322〜326万円 |
旧資料や過去記事では、陸上自衛官の1任期目が約73万円、海上・航空自衛官の1任期目が約118万円と紹介されていることがあります。しかし、金額は処遇改善や俸給改定によって変わるため、必ず最新の防衛省募集サイトや所属先で確認しましょう。
任期満了金の計算方法は俸給と支給日数で決まる
任期満了金は、退職時の俸給や支給日数などをもとに計算されます。考え方としては、次の式で理解すると分かりやすいでしょう。
支給日数は、任期、所属、制度上の区分などによって変わります。そのため、陸上自衛官と海上・航空自衛官では1任期目の期間が異なり、支給額にも差が出ます。
また、俸給月額は学歴、職歴、昇給、制度改定などで変わります。自分の正確な金額を知りたい場合は、所属先の給与・人事担当に確認するのが確実です。
任用一時金や指定場所生活調整金は任期満了金とは別
自衛官候補生・任期制自衛官の処遇では、任期満了金以外にも支給されるお金があります。ただし、これらは任期満了金とは別の制度です。
| 制度 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自衛官任用一時金 | 自衛官候補生から自衛官に任官する際に支給される一時金。 令和7年度改定額は34.4万円 | 任期満了時の退職手当ではない |
| 指定場所生活調整金 | 営舎や艦艇に居住する隊員などを対象に、採用日から6年経過まで総額120万円を支給する制度 | 1年の中途退職や営舎外居住などで支給されない場合がある |
| 特例退職手当 | 任期制自衛官が任期を満了したときに支給される退職手当 | 一般に任期満了金と呼ばれることがある |
入隊後に受け取るお金をすべて「退職金」と考えると、制度を誤解しやすくなります。任用一時金、指定場所生活調整金、任期満了金は、それぞれ支給目的と条件が異なります。
任期満了金を受け取る際の注意点

任期満了金はまとまった金額になりやすいため、受け取る前に支給条件、手続き、税金、退職後の生活費を確認しておきましょう。
特に、途中退職した場合や、退職後すぐに就職・進学する場合は、必要な書類や手続きが変わることがあります。
支給条件は「任期を満了して退職すること」が基本
任期満了金は、任期制自衛官が任期を満了した場合に支給される退職手当です。
そのため、任期途中で退職した場合や、懲戒処分などがある場合には、任期満了金の対象外となる、または支給条件が変わる可能性があります。
退職を考えている場合は、次の点を事前に確認しておきましょう。
- 自分の任期満了日
- 任期満了金の支給見込み額
- 継続任用する場合の扱い
- 途中退職した場合の支給可否
- 任用一時金や指定場所生活調整金の返還・不支給条件
- 退職後の就職・進学支援制度の利用可否
任期満了日が近づいたら、所属先の人事・給与担当や援護担当から案内される資料を必ず確認しましょう。
任期満了金の手続きは所属先の案内に従う
任期満了金そのものの手続きは、基本的に所属先の案内に従って進めます。
旧記事では「ハローワークで手続きする」と説明していましたが、ハローワークは任期満了金そのものを受け取る窓口ではありません。
ハローワークが関係するのは、退職後に求職の申込みを行う場合や、国家公務員の「失業者の退職手当」に関する手続きが必要な場合です。勤続期間が12か月以上で退職し、失業している人が対象になる場合があります。
退職後に必要になりやすい書類には、次のようなものがあります。
- 退職手当関係の書類
- 源泉徴収票
- 退職所得の受給に関する申告書
- 国家公務員退職票が必要になる場合の書類
- 再就職・進学支援に関する資料
退職後に民間企業へ就職する場合、進学する場合、すぐに求職活動をする場合で必要な手続きが変わります。不明点は、所属先や援護担当、ハローワークに確認しましょう。
任期満了金には税金がかかる場合がある
任期満了金は退職手当として扱われ、退職所得として税金が計算されます。
退職所得には退職所得控除があります。退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
一般的な退職手当では、原則として「退職金の収入金額-退職所得控除額」に2分の1をかけて退職所得を計算します。
ただし、勤続年数が5年以下の短期退職手当等や、国家公務員・地方公務員などの特定役員退職手当等に該当する場合は、2分の1課税の扱いが異なることがあります。
また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、支払者が所得税および復興特別所得税を計算し、源泉徴収するため、原則として確定申告は不要です。提出していない場合は20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。
任期満了金の税金は、勤続年数、金額、過去の退職金受給歴、申告書の提出状況によって変わります。税額が気になる場合は、所属先の案内に加えて、税務署や税理士に確認すると安心です。
任期満了金は使途を決めてから使う
任期満了金は一度にまとまった金額で支給されますが、特別なボーナスとしてすぐ使い切るのは避けたいところです。
退職後は、再就職までの生活費、引っ越し費用、資格取得費、進学費用、税金・社会保険料などが必要になることがあります。
受け取ったら、まず次のように目的別に分けて考えましょう。
- 退職後すぐに必要な生活費
- 引っ越し・転職活動・進学に使う資金
- 税金や社会保険料に備える資金
- 病気・けが・家族の事情に備える予備資金
- 長期運用に回してもよい余裕資金
特に退職後すぐに次の収入が決まっていない場合は、生活費を先に確保することが重要です。
任期満了金を有効活用する方法

任期満了金を有効活用するには、いきなり投資商品を選ぶのではなく、まず退職後の生活設計を整理することが大切です。
自衛官を継続するのか、民間企業へ就職するのか、進学するのかによって、必要な資金は変わります。
まず生活費と予備資金を確保する
退職後に転職活動をする場合、次の収入が入るまで数か月かかることがあります。
そのため、任期満了金のうち一定額は、すぐに使える生活費や予備資金として確保しておきましょう。
特に確認したいのは、次の費用です。
- 退職後3〜6か月分の生活費
- 住居費や引っ越し費用
- 資格取得や進学に必要な費用
- 国民年金・国民健康保険などの負担
- 税金の支払いに備える資金
- 病気・けが・家族支援などの予備資金
生活費や予備資金を確保したうえで、残った資金の一部を運用に回すかどうかを検討しましょう。
進学・資格取得・再就職準備に使う
任期満了後に民間企業へ転職する場合、資格取得やスキルアップの費用に使うのも有効です。
自衛隊で身につけた経験や規律、体力、チームワークは強みになりますが、業界によっては民間企業で求められる資格やスキルが必要になることもあります。
例えば、次のような使い方が考えられます。
- 大型免許や専門資格の取得費用
- 職業訓練やスクール費用
- 大学・専門学校への進学費用
- 転職活動中の交通費・スーツ代・書類準備費
- 新生活を始めるための引っ越し費用
短期的な消費に使うよりも、将来の収入を増やすための自己投資に使うことで、任期満了金の価値を高めやすくなります。
NISAやiDeCoは制度の違いを理解して使う
余裕資金がある場合は、NISAやiDeCoを活用した資産形成も選択肢になります。
2024年からのNISAは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能です。年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円です。
NISAは、投資で得た売却益や配当・分配金が非課税になる制度です。ただし、投資商品には元本割れのリスクがあります。生活費まで投資に回さないようにしましょう。
iDeCoは、拠出された掛金と運用益の合計額をもとに将来の給付額が決まる年金制度です。公務員を含む国民年金第2号被保険者も加入対象に含まれます。
一方で、iDeCoは原則として老後資金を作る制度であり、途中で自由に引き出せるものではありません。退職後すぐに使う資金と、老後に向けた資金を分けて考えることが重要です。
投資より先に借入金や固定費も確認する
任期満了金を運用に回す前に、カードローン、奨学金、分割払い、リボ払いなどの借入金がないか確認しましょう。
高い金利の借入がある場合、投資よりも返済を優先した方が家計の改善につながることがあります。
また、携帯料金、保険料、サブスクリプション、車の維持費などの固定費を見直すことで、任期満了金を長く残しやすくなります。
自衛官候補生・任期制自衛官の退職金相談は誰にするべきか

任期満了金に関する相談先は、相談内容によって分けることが大切です。
金額や支給条件は所属先、税金は税務署や税理士、運用はIFAやFPなど、役割を整理して相談しましょう。
任期満了金の金額・手続きは所属先に確認する
任期満了金の正確な金額や支給時期は、所属先の人事・給与担当や援護担当に確認するのが基本です。
確認するときは、次の項目をまとめて聞くとスムーズです。
- 任期満了金の見込み額
- 支給予定日
- 必要書類
- 源泉徴収の有無
- 退職所得の受給に関する申告書の提出方法
- 国家公務員退職票が必要になるか
- 就職援護や進学支援制度の利用可否
インターネット上の金額は目安です。自分の俸給や任期に基づく正確な金額は、必ず所属先で確認しましょう。
税金は税務署・税理士に確認する
任期満了金の税金は、退職所得の扱い、勤続年数、申告書の提出状況、過去の退職金受給歴などで変わります。
特に、複数回の任期満了金を受け取る場合や、後にiDeCo・企業型DCの一時金を受け取る予定がある場合は、退職所得控除の計算が複雑になることがあります。
税額に不安がある場合は、税務署や税理士に確認しましょう。
退職金の運用はIFA・FPなどに相談する選択肢がある
任期満了金を受け取った後の資産運用については、IFAやFPなどに相談する選択肢があります。
IFAは「Independent Financial Advisor」の略として使われることが多く、日本では金融商品仲介業者を指す文脈で使われることがあります。金融商品仲介業者は、証券会社や登録金融機関の委託を受けて、有価証券の売買の媒介などを行う者です。
IFAに相談できるのは、主に資産運用や金融商品の選び方、リスク管理、退職後の資金計画などです。
一方で、任期満了金の支給可否、未払いトラブル、税額の確定はIFAの専門領域ではありません。相談内容に応じて、次のように相談先を分けましょう。
| 相談内容 | 主な相談先 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 任期満了金の金額・支給条件 | 所属先の人事・給与担当、援護担当 | 任期、俸給、支給日、必要書類 |
| 退職後の求職手続き | ハローワーク、所属先 | 国家公務員退職票、求職申込み、失業認定 |
| 税金 | 税務署、税理士 | 退職所得控除、源泉徴収、確定申告 |
| 資産運用・老後資金 | IFA、FP、金融機関 | 生活費、予備資金、NISA、iDeCo、リスク許容度 |
IFAに相談する前に確認すべきこと
IFAに相談する場合は、次の点を確認しておきましょう。
- 金融商品仲介業者として登録されているか
- 所属金融機関や取扱商品の範囲
- 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用
- 提案商品のリスクを十分に説明してくれるか
- 退職後の生活費や予備資金を踏まえた提案になっているか
- 運用後のフォロー体制があるか
任期満了金は、転職・進学・生活費に関わる大切なお金です。特定の商品を急いで決めるのではなく、生活資金を確保したうえで、余裕資金の範囲で運用を検討しましょう。
任期満了金は最新額と支給条件を所属先で確認しよう

自衛官候補生・任期制自衛官として勤務し、任期を満了した場合は、特例退職手当として任期満了金を受け取れます。
防衛省の募集サイトでは、任期満了時の退職手当として、2年間の勤務で約89万円、3年間の勤務で約136万円、2任期目で約186〜190万円と案内されています。
ただし、金額は制度改定、俸給、任期、所属などによって変わる可能性があります。任期満了が近づいたら、所属先で正確な見込み額と支給時期を確認しましょう。
退職前には、次の点を確認しておくことが大切です。
- 任期満了金の見込み額
- 支給予定日と必要書類
- 任用一時金や指定場所生活調整金との違い
- 退職所得の受給に関する申告書の提出方法
- 退職後の生活費・転職活動費・進学費用
- NISAやiDeCoなどを活用する場合のリスクと制約
任期満了金は、一時的なご褒美ではなく、次の生活やキャリアを支える資金です。生活費や予備資金を確保したうえで、必要に応じてIFAやFPなどの専門家に相談し、無理のない資金計画を立てましょう。
出典
防衛省 自衛官募集サイト「募集種目一覧」
防衛省 自衛官募集サイト「2等陸・海・空士(任期制自衛官)」
防衛省 自衛官募集サイト「待遇・福利厚生」
内閣官房「自衛官の処遇改善に関する参考資料」
内閣官房内閣人事局「勤続期間が12月以上で国家公務員を退職し失業している方へ」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(公開日:2025年4月1日)
金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

