消防士の退職金はいくら?計算方法・支給割合・調整額を解説

消防士(消防吏員)は、消防本部や消防署で勤務する常勤の地方公務員である。そのため、退職金は民間企業の退職金制度ではなく、勤務先の地方公共団体の条例や退職手当組合の規程に基づいて支給される。

ただし、消防士の退職金は全国一律ではない。自治体、給料表、階級・役職、勤続期間、退職理由、退職手当調整額、定年引き上げに伴う制度変更などによって金額が変わる。

なお、退職時に「退職報償金」が支給されるのは、原則として非常勤特別職の地方公務員である消防団員の制度である。常勤の消防士(消防吏員)の退職手当とは別の制度なので、混同しないよう注意しよう。

本記事では、消防士の退職金の計算方法、支給割合、調整額、税金、退職金を増やすために確認したいポイント、退職後の相談先を解説する。

退職後の生活設計を考えるうえで、まずは自分の所属自治体の退職手当制度を確認しておこう。

目次

消防士の退職金の基本的な計算方法

消防士の退職金は、一般的には「退職手当」と呼ばれる。計算方法は所属する地方公共団体の条例で決まるため、最終的には消防本部や自治体の人事担当に確認する必要がある。

国の退職手当制度を参考にすると、退職手当は大きく「基本額」と「調整額」で構成される。

退職手当額=基本額+調整額
基本額=退職日の給料月額×退職理由別・勤続期間別支給割合
調整額=在職中の職責などに応じた調整月額のうち、高いものから原則60月分を合計した額

ここでいう「給料月額」は、給与明細の総支給額とは異なる場合がある。地域手当、扶養手当、管理職手当、時間外勤務手当などが退職手当の算定基礎に含まれるかどうかは、所属自治体の条例で確認しよう。

勤続年数と給料月額に基づく計算

消防士の退職手当の基本額は、退職時の給料月額と勤続期間、退職理由に応じた支給割合をもとに計算する。

国家公務員退職手当支給率早見表を参考にすると、平成30年1月1日以降の退職について、支給割合の例は以下のとおりである。

勤続年数・退職理由別の支給割合例

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勤続年数自己都合退職定年・応募認定・公務外傷病等整理・死亡・公務上傷病等
20年19.669524.58687526.3655
25年28.039533.2707533.27075
30年34.735540.8037540.80375
35年39.757547.70947.709
45年47.70947.70947.709

地方公務員である消防士も、国の制度に準じた支給割合を採用している自治体が多い。ただし、実際の支給割合や計算方法は自治体ごとの条例で定められるため、上記はあくまで確認の目安として利用しよう。

自己都合退職よりも、定年退職や応募認定退職などの方が支給割合が高くなるケースがある。退職時期を考えている人は、退職理由によって退職手当がどの程度変わるかを事前に試算しておきたい。

退職手当の調整額とは

消防士の退職手当では、基本額に加えて「調整額」が加算される場合がある。

調整額は、在職期間中の職責や貢献度を反映するための加算額であり、在職中に属していた区分ごとの調整月額のうち、金額が高いものから原則60月分を合計して計算する。

人事院が示す国家公務員の調整額区分例は、以下のとおりだ。

退職手当調整額の区分例

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区分対応する職員の例調整月額
区分5行政職(一)8級相当59,550円
区分6行政職(一)7級相当54,150円
区分7行政職(一)6級相当43,350円
区分8行政職(一)5級相当32,500円
区分9行政職(一)4級相当27,100円
区分10行政職(一)3級相当21,700円

消防士の場合、消防司令、消防司令補、消防士長などの階級や、係長・課長級などの役職がどの区分に対応するかは自治体によって異なる。

そのため、退職金を正確に把握するには、所属自治体の退職手当条例、職務の級、階級、役職、調整額区分を確認することが重要だ。

消防士の退職金を試算する例

ここでは、消防士の退職金の計算イメージをつかむために、仮の条件で試算する。

試算例

条件
退職日の給料月額:40万円
勤続年数:35年
退職理由:定年退職等
支給割合:47.709
調整月額:43,350円
調整額対象月数:60月

基本額
40万円×47.709=1,908万3,600円

調整額
43,350円×60月=260万1,000円

退職手当の概算
1,908万3,600円+260万1,000円=2,168万4,600円

この例は、計算方法を理解するための概算である。実際には、自治体の条例、給料表、階級、調整額区分、休職期間、定年引き上げに伴うピーク時特例、早期退職募集の有無などによって金額が変わる。

自分の退職手当を把握したい場合は、消防本部や自治体の人事担当に試算を依頼しよう。

退職金の支給時期と手続き

消防士の退職手当の支給時期は、勤務先の地方公共団体の条例や退職手当組合の手続きによって異なる。

退職後すぐに振り込まれるとは限らず、退職手当の計算、支給決定、退職所得の税務処理、振込手続きなどに時間がかかる場合がある。

退職前に確認しておきたい項目は以下のとおりだ。

  • 退職手当の支給予定日
  • 振込先口座の登録方法
  • 退職所得の受給に関する申告書の提出期限
  • 退職手当の試算書を受け取れるか
  • 退職手当組合に加入している場合の手続き

特に「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金の税金計算に関わる重要な書類だ。提出していない場合、退職金の支給額に対して20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算する必要がある。

消防士の退職金を増やすために確認したいポイント

消防士の退職金は制度に基づいて計算されるため、個人が自由に増額できるものではない。

ただし、退職手当の計算に影響する要素を理解しておくことで、退職時期や昇任、老後資金づくりを考えやすくなる。

  • 昇任・昇給による給料月額の上昇
  • 勤続期間と退職理由
  • 調整額区分と役職在職期間
  • 定年引き上げや退職手当制度の変更
  • iDeCoなど退職金以外の老後資金づくり

昇任や昇給を意識する

消防士の退職手当は、退職日の給料月額が計算に影響する。基本額が「給料月額×支給割合」で計算される場合、昇任や昇給によって給料月額が上がると、退職手当も増える可能性がある。

また、階級や役職が上がると、調整額区分が高くなる場合もある。調整額は金額の高いものから60月分を合計するため、退職前の5年間にどの役職・階級にいたかも重要だ。

昇任試験の制度、受験資格、階級ごとの給料表、管理職手当の扱いは自治体ごとに異なる。退職金への影響を知りたい場合は、人事担当に確認しておこう。

勤続期間と退職理由を確認する

退職手当の支給割合は、勤続期間が長いほど高くなりやすい。また、自己都合退職と定年退職では支給割合が異なる場合がある。

退職時期を検討している場合は、以下を確認しよう。

  • 勤続期間が何年扱いになるか
  • 自己都合退職と定年退職で支給割合がどれだけ変わるか
  • 休職・停職・育児休業などの除算期間があるか
  • 早期退職募集制度の対象になるか
  • 60歳以降の給与水準やピーク時特例の扱い

令和5年4月1日以降、公務員の定年は段階的に引き上げられている。60歳以降の給与水準や役職定年による降任があっても、退職手当ではピーク時特例が適用される場合があるため、制度変更の内容も確認しておきたい。

消防団員の退職報償金と混同しない

消防士の退職金を調べる際に注意したいのが、「退職報償金」との違いだ。

退職報償金は、非常勤の消防団員が退団した場合に、階級や勤務年数に応じて支給される制度である。消防署や消防本部で勤務する常勤の消防士(消防吏員)に通常支給される退職手当とは別の制度だ。

消防士として受け取る退職金を確認したい場合は、消防団員向けの退職報償金表ではなく、自分の自治体の職員退職手当条例や退職手当組合の規程を確認しよう。

iDeCoで退職金以外の老後資金を準備する

消防士が退職後の資金を増やしたい場合、退職金だけでなく、現役時代からiDeCoなどで老後資金を準備する選択肢もある。

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用する私的年金制度だ。掛金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税で再投資される

公務員のiDeCo拠出限度額は、2024年12月以降、月額1.2万円から月額2万円に引き上げられている。

消防士がiDeCoを使うときの確認ポイント
  • 掛金は月額5,000円以上、1,000円単位で設定する
  • 2024年12月以降、公務員の拠出限度額は原則月額2万円まで
  • 運用商品は自分で選ぶ
  • 運用成果によって元本割れする可能性がある
  • 原則60歳まで資産を引き出せない
  • 受け取り方法は、一時金・年金・併用から選べる

iDeCoは節税効果がある一方で、途中で自由に引き出せない点や運用リスクがある。退職金とは別に、長期で準備する老後資金として考えよう。

消防士の退職金の税金対策と節税方法

消防士が退職金を受け取る際は、税引前の支給額だけでなく、所得税・住民税を差し引いた手取り額を確認することが重要だ。

退職金は「一時所得」ではなく、原則として「退職所得」として扱われる。給与所得とは別に計算され、退職所得控除や2分の1課税などの優遇が用意されている。

退職所得控除を確認する

退職金の税金を考えるうえで重要なのが、退職所得控除である。

退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算する。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円未満の場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続35年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×15年=1,850万円」となる。

また、勤続年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げる。例えば「34年2か月」であれば、退職所得控除の計算上は35年として扱う。

退職所得は2分の1課税が原則

一般的な退職手当の退職所得は、次の式で計算する。

退職所得の金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2

例えば、退職金が2,000万円、勤続35年の場合、退職所得控除額は1,850万円であるため、退職所得の金額は「(2,000万円-1,850万円)×1/2=75万円」となる。

ただし、役員等としての勤続年数が5年以下の場合や、短期退職手当等に該当する場合は、2分の1課税の扱いが異なることがある。複数の退職金やiDeCoの一時金を受け取る場合も、控除額の計算が変わる場合があるため注意しよう。

所得税と住民税の考え方

退職所得にかかる所得税は、課税退職所得金額に応じた税率を使って計算する。復興特別所得税もあわせて源泉徴収される。

住民税は、退職所得の金額に対して市区町村民税6%、都道府県民税4%の合計10%で計算されるのが一般的だ。

退職金の手取り額を確認する際は、退職手当の試算額だけでなく、所得税・復興特別所得税・住民税を差し引いた後の金額を確認しよう。

税額が大きい場合、退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合、複数の退職金を受け取る場合は、税務署や税理士へ確認すると安心だ。

消防士の退職金計画の相談先はどこにするべきか

消防士の退職金について相談したい場合は、悩みの内容によって相談先を分けることが大切だ。

退職手当の計算は自治体の人事担当、税金は税務署や税理士、退職後の資産運用はFPやIFAなど、相談先が異なる。

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相談したい内容主な相談先確認できること
退職手当の金額・計算方法消防本部、自治体の人事・給与担当、退職手当組合給料月額、支給割合、調整額、試算額
退職手当の制度変更・支給条件人事担当、労働組合、弁護士条例、規程、不支給・減額理由
退職金にかかる税金税務署、税理士退職所得控除、源泉徴収、確定申告
退職後の生活設計FP、J-FLEC認定アドバイザーなど家計管理、年金、生活費、資金配分
退職金の運用IFA、金融機関、FP金融商品の選択肢、NISA・iDeCo、運用方針

退職手当の計算そのものは、まず所属自治体に確認するのが基本だ。退職金の試算書と実際の金額に差がある場合も、人事担当や退職手当組合に計算根拠を確認しよう。

退職金の運用を相談するならIFAも選択肢になる

退職金を受け取った後の運用や資金配分について相談したい場合、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)も相談先の一つになる。

IFAは、金融商品仲介業者として、顧客のライフプランやニーズに合わせて金融商品の選定・運用、各種制度の活用、売買取引の支援などを行う専門職である。

ただし、IFAは税務申告や法律判断を行う専門家ではない。税金は税理士、法律問題は弁護士、社会保険は社会保険労務士など、必要に応じて専門家を使い分けよう。

IFAに相談する前に確認したいこと

退職金は老後生活を支える大切な資金である。IFAや金融機関に相談する場合も、提案された商品をその場で契約するのではなく、以下の点を確認しよう。

  • 金融商品仲介業者として登録されているか
  • 所属金融機関や提携金融機関はどこか
  • 取り扱える金融商品の範囲はどこまでか
  • 相談料、販売手数料、信託報酬などの費用はいくらか
  • 元本割れリスクや途中解約時の条件を説明してくれるか
  • 退職後の生活費を確保したうえで提案してくれるか
  • 運用開始後のフォロー体制があるか

65歳時点の平均余命は、令和6年簡易生命表では男性19.47年、女性24.38年とされている。退職後の生活は長く続く可能性があるため、退職金を一度に使い切らない資金計画が重要だ。

退職金を運用する場合も、生活費や予備資金を確保したうえで、余裕資金の範囲で検討しよう。

まとめ

本記事では、消防士の退職金の基本的な計算方法、支給割合、調整額、退職金を増やすために確認したいポイント、税金、相談先を解説した。

消防士(消防吏員)は常勤の地方公務員であり、退職手当は所属する地方公共団体の条例や退職手当組合の規程に基づいて支給される。

消防士の退職手当は、主に退職日の給料月額、勤続期間、退職理由別の支給割合、退職手当調整額によって決まる。自己都合退職か定年退職か、昇任や役職在職期間があるか、休職期間が除算されるかなどによっても金額は変わる。

また、消防団員に支給される退職報償金は、常勤の消防士の退職手当とは別制度である。消防士としての退職金を確認する場合は、自分の自治体の退職手当条例や人事担当の試算を確認しよう。

退職金にかかる税金は、退職所得控除や2分の1課税により給与とは異なる計算方法になる。退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は、20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されるため、手続きにも注意が必要だ。

退職金は老後資金の土台になる。計算方法や税金は所属自治体や税務署に確認し、退職後の運用や生活設計に不安がある場合はFPやIFAなどの専門家に相談することも検討しよう。

退職金の運用や相談先を比較したい場合は、以下のボタンから確認できる。

出典

総務省消防庁「その他、消防行政全般について|よくあるご質問」
総務省消防庁「消防団に関する質問|よくあるご質問」
総務省消防庁「消防団員の処遇について」
総務省消防庁「平成26年版 消防白書 3.勤務条件」
政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年地方公務員給与実態調査 第9表 1 団体区分別,職員区分別,退職事由別,年齢別退職者数及び退職手当額」(公開日:2025年9月18日)
内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表」
厚生労働省「iDeCoの拠出限度額が1.2万円→2万円になります!」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(公開日:2025年4月1日)
国税庁「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

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退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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