役員退職金積立の全貌解説!正しい知識で賢く選ぶ方法とポイント

この記事で解決できるお悩み
  • 役員退職金積立の仕組みを知りたい
  • 積立金の運用や税制について知りたい
  • 役員退職金積立の選び方や注意点を知りたい

役員退職金の積立方法に悩んでいないだろうか?

経営者や役員の退職金は「役員退職金」とも呼ばれ、一般的に経営者や役員が勇退したあとに支給される慰労金のことだ。

役員の退職金は一般の社員と比較すると高額に設定されており、うまく活用すれば会社の節税にもつながる。

役員退職金を準備する方法は複数あるため、正しい知識をもって自社に適した制度を整えておくことが大切だ。

本記事では、役員退職金の仕組み、役員退職金積立、退職金の運用方法や税制について解説する。

目次

役員退職金積立の基本的な仕組み

役員退職金積み立てとは何か

役員退職金積み立てとは、企業が経営者や役員の退職金を「積み立て」で準備する方法のことだ。

具体的には法人保険や小規模企業共済制度、確定拠出年金制度などを利用した「積み立て」のことを指す。

定期保険などに代表される法人保険の場合は、積み立てでお金を貯めるのと同じく毎月の保険料を支払う。確定拠出年金も同じく、掛金を毎月拠出する制度だ。

一方、小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員向けの退職金を積み立てる共済制度である。こちらも掛金を拠出して納付する方法だ。

役員退職金積立の目的とメリット

役員退職金積み立てを活用する目的は主に税金対策である。

小規模企業共済制度では掛金が全額所得控除の対象になる。当座の運転資金にも利用でき、資金の借入も可能だ。

また、多くの経営者が節税対策として活用してきたのが法人保険だ。2019年の税制改正により、税メリットが以前よりも薄れてきたものの、保険の種類によっては保険料の全額あるいは一部を損金として計上できる。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の場合も事業主掛金は全額損金に算入できるのがメリットだ。

役員退職金積立の種類と特徴

役員退職金を準備する方法は、法人保険、小規模企業共済制度、中小企業倒産防止共済制度、確定拠出年金制度などが代表的だ。

それぞれの制度にはメリット・デメリットがあり、自社の経営状況や役員構成によって最適な選択が異なる。

以下の比較表を参考に、適切な制度選びを進めよう。

制度名掛金・拠出上限税制優遇リスク・注意点向いている企業・役員像
法人保険(逓増定期など)任意(例:年間100万〜数千万円)保険料の一定割合を損金算入可(※内容により制限あり)・税務否認リスクあり・保険種類により出口課税が重くなる場合あり利益圧縮したい中小企業/退職金を柔軟に準備したい役員
小規模企業共済月額1,000円~7万円(年84万円)掛金全額が所得控除対象(役員個人の控除)・中途解約時に元本割れの可能性あり・役員を退任しないと受取不可役員1名~数名の小規模法人/節税意識の高い役員個人
経営セーフティ共済(倒産防止共済)月額5,000円~20万円(年240万円)最大800万円まで積立可能掛金全額を法人の損金算入可能・目的外(退職金)に使うと税務否認される可能性あり・解約後の課税に注意資金に余裕のある法人/退職金を「共済借入」等で間接的に用いたい場合
確定拠出年金(企業型DC)年間66万円まで(事業主掛金のみ/条件あり)・掛金は法人で損金算入可・運用益非課税/退職時に退職所得控除あり・投資リスクあり・制度導入に手間やコストがかかる中堅~大企業/福利厚生を活かした制度設計を行いたい場合

役員退職金積立の税制とリスク

役員退職金積立の税メリット

役員退職金を積み立てで準備できる制度は以下のとおりだ。それぞれの税制優遇も確認しておこう。

  • 小規模共済制度・・・掛金の所得控除、退職控除
  • 中小企業倒産防止共済・・・掛金の損金算入
  • 法人保険・・・保険料の損金算入
  • 企業型DC(確定拠出年金)・・掛金の損金算入、口座管理費用の経費計上

制度により税の優遇措置は異なる。それぞれの制度をうまく組み合わせて活用すると、節税効果も高くなりやすい。

役員退職金積立のリスク管理

それぞれの制度にはリスクも存在するため、加入後の資産管理をしっかりとおこなっておこう。特に掛金や保険料が高額な場合、キャッシュフローにも影響するので注意が必要だ。

それぞれの制度に関しても気をつけるべき点がある。たとえば、小規模企業共済制度は20年未満で中途解約すると元本割れをおこす。さらに、掛け金を減額した場合は、20年以上納付した場合でも元本割れをする可能性がある。

また、法人役員が「退職していない場合」は解約しても共済金ではなく解約手当金の扱いとなるため、退職時期との調整も必要だ。

定期保険などの法人保険は、2019年の税制改正により、解約返戻金のピーク時の返戻率によって損金算入の割合が細かく定められるようになり、以前のようなメリットが減っている。

また、積み立てた役員退職金も支払うときも注意が必要だ。無制限に損金算入が認められていないため、不相応に高額な部分は損金として認められず、法人税が増加する場合もあるので気をつけておきたい。

経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、積立金が法人名義で管理され、解約返戻金は全額益金算入となるため、解約タイミングを誤ると課税リスクが発生する。また、加入目的が「倒産防止」ではなく「退職金原資」と明示されていると、税務調査で目的外使用と見なされ否認リスクもある。

確定拠出年金(企業型DC)は、将来の資産形成に優れた制度ですが、元本保証がないことが大きなリスクだ。掛金は投資信託などで運用され、成績次第で資産額が変動する。また、制度導入時の初期コストや維持管理手数料が年間数万円程度かかる点にも注意が必要だ。

節税効果を最大限に活用する方法

退職金は節税効果が高い費用のため、法人税を大きく減らすことができるので、うまく活用したい。

役員退職金は一般的に功績倍率法がよく利用されている。

 役員退職金=最終月額役員報酬×在任年数×功績倍率

以下の場合、退職金の目安額は3,600万円となる。

【具体例】功績倍率による退職金額の計算

  • 最終役員報酬:月額 80万円
  • 役員在任期間:15年
  • 採用功績倍率:3.0(同業他社平均を参考)

👉 計算式:
80万円 × 15年 × 3.0倍 = 3,600万円

功績倍率によっては退職金額が多額になることが想定されるが、不相当に高額な部分は損金として認められない。

したがって、一般的に2~3倍に定められる場合が多く、あらかじめ役員退職金規定を作成しておき、功績倍率を決めておくことが必要となる。

会社内で規定を整備し、適切な退職金を支払う手続きを踏めば、不必要に退職金額を少額に設定して節税のチャンスを逃すこともなくなる。

また、個人で受け取る退職金についても税金が少なくなるように算定されている。退職金で受けられる税メリットは以下の3点だ。

  • 他の所得と合算されない「分離課税」
  • 退職所得控除の対象
  • 2分の1課税(退職金ー退職所得控除×2分の1)※5年以内の退職は適用されないケースあり

退職金は長年勤めた人への功労金、また老後の生活費という役割をもつ。そのため、さまざまなメリットが受けられることを理解しておこう。

役員退職金積立の選び方と注意点

適切な積立額を決める

役員退職金を積み立てで準備する場合、活用する制度によって掛金等に上限が設けられている場合がある。

役員退職金は金額が大きい場合もあるため、それぞれの上限額を理解しておこう。

  • 小規模企業共済
    • 1,000円~70,000円まで(月額、500円単位)
  • 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
    • 5,000円~200,000円まで(月額、5,000 円単位)※掛金総額は800万円が上限
  • 確定拠出年金
    • 55,000円、あるいは27,500円のいずれか ※他制度の加入条件により異なる

また、法人保険に関しては、支払いが可能な保険料ベースで保険金額を設定する場合が多い。死亡保障や将来の退職金支給を目的として加入するなら、受取保険金額ベースから保険料を算出してみるのも一案だ。

一方で、掛金や保険料が高すぎると企業のキャッシュフローを悪化させる原因にもなりかねない。積み立て額と将来の支給額から勘案して積み立て額を決めよう。

役員退職金積立プランの比較

役員の退職金プランは税制優遇が活かせる制度を活用したい。

下記の制度を組み合わせて、役員退職金積立プランを作るのもおすすめだ。

  1. 小規模企業共済制度
  2. 中小企業倒産防止共済制度
  3. 法人保険

定期保険などの法人保険は法改正の影響により、以前よりもメリットが少なくなっているが、解約返戻金のピーク時の返戻率によっては全額損金に算入できる保険が無くなったわけではない。

自社に合った法人保険がないか、専門家に相談してみるのもよいだろう。

解約時の注意点

役員退職金のために加入したものの、途中で解約する場合は支払った掛金の取り扱いは制度ごとに異なる。

小規模企業共済の場合、掛金納付月数が20年未満で解約すると解約手当金が支払われるが掛金の合計額を下回る。また、納付月数が12か月未満の場合も解約手当金が受け取れない。

セーフティ共済契約も同様に解約時には解約手当金を受け取れる。ただし、1年以内に解約すると掛金は掛け捨てになる。また12ヶ月以上40ヶ月未満で解約すると元本割れをする。

法人保険も途中解約すると元本割れをする可能性が高い金融商品だ。特に定期保険は解約返戻金がない期間があり、最終的には解約返戻金はゼロになるのが一般的だ。

企業型DCも中途脱退に関する改正はあったものの、依然として脱退一時金の受給要件が厳しいままだ。基本的には途中解約がしにくい制度と言えるだろう。

専門家への相談で役員退職金積立を最適化

専門家に相談するメリット

企業の財務に関しては、総合的な視点でアドバイスを受けるほうが効果的だ。たとえば経営者の退職金について相談するときに、後継者への株式の譲渡など、事業承継の相談もできたりする。

このような相談ごとには顧問税理士が適任ではあるが、法人専門のFPやIFAを頼ってもよい。

法人向け金融商品の販売経験があるFPやIFAなら、さまざまな事例やノウハウをもっている可能性が高い。他社の類似案件などの情報も共有してくれるだろう。

専門家に相談する際の注意点

退職金の相談をするときは、顧問税理士や法人専門のFP、IFAなどに相談するのがおすすめだ。

法人税や役員退職金に詳しい税理士や社労士を選ぶことが基本だが、保険会社など商品ありきの提案をする相手ではなく、複数の制度を中立的に比較できる立場かどうかも確認しよう。

また、自社と同じような業種・規模の支援実績があるか、報酬体系が明確かといった点もチェックしておくと安心だ。不安な場合は、複数の専門家に意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用するのもおすすめだ。

退職金は一度きりの大きな判断だからこそ、信頼できるパートナー選びが欠かせない。

適切な専門家の見つけ方

中小企業の経営者が自社の役員退職金について専門家に相談したい場合は、地元の商工会議所などの無料相談窓口を訪ねてみるのがおすすめだ。

商工会議所では経営者に役立つセミナーや勉強会などを開催している。

また、税理士やFP、IFAに直接相談したい場合はネット上で検索できるので、連絡して面談の予約を取るとよいだろう。

これらの専門家は独立開業していたり、企業に所属していたりする。FPやIFAを紹介する会社もあるので、ホームぺージなどから検索してみてはいかがだろうか。

役員退職金積立の相談はIFAへ!

本記事では、役員退職金積立の仕組みや運用方法、税制、注意点などについて解説した。

IFAに相談すれば、役員退職金積立の選び方や運用方法について適切なアドバイスが得られる。

IFAから得たアドバイスをもとに、積立額やプランを選択し、役員退職金を効果的に運用するのも一案だ。

そこで活用したいのが「退職金ナビ」である。

全国のIFAの中から適切な相談相手を探すことができるため、役員退職金積立プランの相談も可能だ。ぜひ活用していただきたい。

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執筆者

退職金の相談相手 検索サービス「退職金ナビ」を運営する。
「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンにIFA業界のプラットフォームとして、総合コンサルティング事業を展開している。

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